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第232回:フルサイズEVで雪上を行く
「テスラ・モデルS」氷上湖試乗会に参加して

2014.04.02 エディターから一言 塩見 智
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氷上試乗コースを行く「テスラ・モデルS」。
氷上試乗コースを行く「テスラ・モデルS」。 拡大

日本での納車開始を間近に控えた「テスラ・モデルS」。先日、長野県で開催された氷上試乗会では、安定したフットワークを披露。フルサイズの電気自動車(EV)が雪道でもスマートに走れることを証明した。併せて、東京―京都間450km無充電走行の模様もリポートする。

全長は4978mmと大柄。車重は2108kgに達する。
全長は4978mmと大柄。車重は2108kgに達する。
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インストゥルメントパネルの中央には17インチのタッチスクリーンが備わる。ナビゲーション用地図の表示のほか、オーディオやエアコンの調整、あるいはライト、ドアロック、パノラミックルーフ、車高調整など車両各部の操作を行うことができる。
インストゥルメントパネルの中央には17インチのタッチスクリーンが備わる。ナビゲーション用地図の表示のほか、オーディオやエアコンの調整、あるいはライト、ドアロック、パノラミックルーフ、車高調整など車両各部の操作を行うことができる。 拡大
「モデルS」には、「60kWh仕様」「85kWh仕様」「85kWhパフォーマンス仕様」と3種類のバリエーションが用意され、バッテリー容量だけでなく、動力性能にも差が付けられている。今回の試乗車は、最も高性能な「85kWhパフォーマンス仕様」。
「モデルS」には、「60kWh仕様」「85kWh仕様」「85kWhパフォーマンス仕様」と3種類のバリエーションが用意され、バッテリー容量だけでなく、動力性能にも差が付けられている。今回の試乗車は、最も高性能な「85kWhパフォーマンス仕様」。 拡大

日本仕様の詳細が決まる

テスラ・モデルSで氷上を走った。モデルSとは、EV専門メーカーのテスラモーターズが開発した第2弾。フルサイズの5ドアハッチバックだ。富裕層を中心にアメリカでは大人気で、2013年には2万2477台を販売した。そして、今年2014年の目標は3万5000台と鼻息が荒い。

日本でもずいぶん前から予約が始まっていて、すでに多数の受注が入っているというが、価格をはじめ詳細が発表されたのはつい先日のことだ。

大きく分けて3モデルある。「60kWh仕様」は、最高出力302ps(225kW)/5000-8000rpm、最大トルク43.8kgm(430Nm)/0-5000rpmで、0-100km/h加速は6.2秒。航続距離は375km。最高速190km/h。823万円。「85kWh仕様」は、362ps(270kW)/6000-9500rpm、44.9kgm(440Nm)/0-5800rpm、0-100km/h加速:5.6秒。航続距離:502km。最高速:200km/h。933万円。「85kWhパフォーマンス仕様」は、416ps(310kW)/5000-8600rpm、61.2kgm(600Nm)/0-5100rpm、0-100km/h加速:4.4秒。航続距離:502km。最高速:210km/h。1081万8000円。(価格はすべて消費税8%を含む)

日本仕様にはCHAdeMO(チャデモ)規格用のアダプターが標準装備されるため、高速道路の充電ステーションなどでも急速充電することができる。また、自宅などで充電する場合、オプションのデュアルチャージャーを搭載すれば、100km走行分の充電を1時間で済ませることができる。デリバリー開始は2014年6月の予定。それにしても、公式サイトで仕様を選んで注文できるのがシリコンバレーの自動車メーカーっぽい。

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氷上での振る舞い

今回は長野県・八千穂レイクの湖面につくられた特設コースを85kWhパフォーマンス仕様で走行した。最大トルク61.2kgm(600Nm)を発進と同時に発生するモデルSのトルキーっぷりは、氷上走行の邪魔になるんじゃないかと心配したが、当然のことながらアンチスピンデバイスが備わるので、それをオンにしている限り、ドライバーがいかにアクセルペダルを乱暴に踏もうと、クルマが勝手にトルクを絞ってくれる。その制御はスマート。

もちろん、アンチスピンデバイスをオフにするとクルマは暴れる。派手にホイールスピンしながらも発進はできるが、コーナーを抜けて立ち上がろうとすると、慎重にアクセル操作をしたつもりでもクルマが横を向いてしまう。オフにしても最後には介入してくるので、派手にくるくる回ってしまうことはないが、制御するのは難しい。クローズドコースならオンとオフで走り比べることもできるが、失敗できない一般道では絶対にオンで走ることをおすすめする。

内燃機関車だろうとEVだろうと、氷上の走りにあまり違いは感じられない。乾電池同様、EVのバッテリーも寒いと性能が落ちるはずだが、モデルSの場合、60kWh仕様でも一度の充電で375km走ることができるので、少々減っても実用上困ることはない。アメリカの次にたくさん売れているのがノルウェーというのも納得できる。

ちなみに、クルマにはピレリ・ソットゼロ3というウインタータイヤが装着されていた。日本で広く流通しているスタッドレスタイヤよりも、ドライ路面での性能を重視したタイヤとして知られるので、氷上では十分にグリップしないんじゃないかと思ったが、走ってみると想像以上にグリップするので驚いた。

凍結湖上に作られたテストコースを行く「モデルS」。
凍結湖上に作られたテストコースを行く「モデルS」。 拡大
前後軸の重量配分は48:52と発表されている。
前後軸の重量配分は48:52と発表されている。 拡大
重量のあるバッテリーパックをフロア下に敷き詰めた構造ゆえ、「モデルS」の重心は低い。ハンドリングは応答性に優れている。
重量のあるバッテリーパックをフロア下に敷き詰めた構造ゆえ、「モデルS」の重心は低い。ハンドリングは応答性に優れている。 拡大

東京~京都、無充電の旅へ

ところで、昨秋、モデルSで東京から京都まで、途中充電なしでの走行を試みた。東京のテスラモーターズからウェスティン都ホテル京都まで、グーグルマップによると453km。航続距離が502km(NEDC=新欧州ドライビングサイクル)を誇るモデルSなら楽勝……のはずだった。

朝、目いっぱい充電したモデルSで南青山をスタート。カタログを信じるならば、今回のルートを走り終えてもバッテリーは約50km分残るはず。その余裕が心の隙を生んだか、道を間違えた。東名高速から伊勢湾岸道への分岐を忘れていた。間違えたルートでも京都へ行くことはできる。が、遠くなる。とはいえ戻ってまで元のルートを選ぶかどうか悩んだ末、初志貫徹、次のICで降りて一般道を経由して伊勢湾岸道へ合流した。何km失っただろうか。テスラ広報の土肥亜都子さんが僕を励まそうと、彼女が大好きだというジュリーの歌をガンガンにかけてくれるのだが、ほとんど耳に入らない。

東京・南青山のテスラモーターズを後にする「モデルS」。
東京・南青山のテスラモーターズを後にする「モデルS」。 拡大
ステアリングを握る筆者。
ステアリングを握る筆者。 拡大
東京を出発してから398.9kmを後にした時点で、推定走行可能距離(Rated Range)は54kmとの表示。京都まで無事にたどり着けるだろうか?
東京を出発してから398.9kmを後にした時点で、推定走行可能距離(Rated Range)は54kmとの表示。京都まで無事にたどり着けるだろうか? 拡大

450kmを無事完走

やがて東名阪自動車道から新名神高速へ入る。が、目的地までの残り距離と航続可能距離を見比べると、5kmほどショート! 内燃機関車なら路上で止まっても燃料を小型タンクで運んで給油すれば動く。だが、EVの場合、電池切れで路上で止まったら問答無用でレッカー手配となる。

というわけで、大型トラックに抜かれまくろうと80km/h巡航。ヒーターオフ。一応ジュリーもオフで真剣に走行した。下りで回生して希望を見いだすが、その後の上りできっちり絶望。この繰り返しで草津JCTまで到達。なんとか名神高速に入って目的地まで20km弱となった。一応、クルマが示す航続可能距離は25kmくらい。ただし、この先上りか下りかわからない。土肥さんは念のためにレッカー業者の電話番号を調べている。

名神の京都東ICを降りて一般道へ。残りは5~6km。しかしホテルまでの一般道は上りに続く上り。これまでか……と思った瞬間、ホテルの看板が見えてきた。テスラよ! あれがウェスティンの灯だ。結局、走行距離は458.3km。ルートを間違えて5kmほど無駄にしたことになる。到着時点でクルマが示した航続可能距離は6km。土肥さんによると、別の機会に同じルートを走行した時にはもっと余裕があったとか。それでも、今売られている他のどのEVでも不可能な450kmを走行可能ということを実証できた。

(文=塩見 智/写真=テスラモーターズ、塩見 智)

無事に京都入りした「モデルS」。知恩院の前で。
無事に京都入りした「モデルS」。知恩院の前で。 拡大
途中無充電で約450kmを走り終え、ウェスティン都ホテル京都に到着した「モデルS」。
途中無充電で約450kmを走り終え、ウェスティン都ホテル京都に到着した「モデルS」。 拡大
ホテルに到着した時点で、残りの走行可能距離はわずか6kmだった。
ホテルに到着した時点で、残りの走行可能距離はわずか6kmだった。 拡大
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