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第49回:破壊王テスラの挑戦と野望(前編) ―このクルマのデザイン、本当はAIがやったんじゃないの?―

2024.12.11 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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テスラが2019年に発表したフルサイズピックアップトラック「サイバートラック」。2023年12月に納車が開始された。
テスラが2019年に発表したフルサイズピックアップトラック「サイバートラック」。2023年12月に納車が開始された。拡大

自動車界にすい星のごとく現れ、たちまちのうちに電気自動車(EV)界の雄となったテスラ。イーロン・マスクの強権のもと、デザイナーはどのようにしてクルマを描いているのか? 超問題作の「サイバートラック」を、私たちはどう解釈すべきか!? 識者とともに考えた。

2024年10月に発表され、かいわいに隕石(いんせき)級の衝撃をもたらしたテスラの「ロボタクシー」。このクルマのデザインは、後編にて詳しく語らせていただきます。乞うご期待。
2024年10月に発表され、かいわいに隕石(いんせき)級の衝撃をもたらしたテスラの「ロボタクシー」。このクルマのデザインは、後編にて詳しく語らせていただきます。乞うご期待。拡大
今日のテスラの販売を支える量販車種の2台。写真左がセダンの「モデル3」、同右がSUVの「モデルY」。
今日のテスラの販売を支える量販車種の2台。写真左がセダンの「モデル3」、同右がSUVの「モデルY」。拡大
全長が同じ「テスラ・モデル3」(上)と「BMW 3シリーズ」(下)のサイドビュー。寸法はモデル3が全長×全幅×全高=4720×1850×1441mm、3シリーズが同=4720×1825×1445mm。とほぼ一緒だが、グリーンハウスの前後長はモデル3のほうが長く、またフロントのカウルが低く抑えられている。
全長が同じ「テスラ・モデル3」(上)と「BMW 3シリーズ」(下)のサイドビュー。寸法はモデル3が全長×全幅×全高=4720×1850×1441mm、3シリーズが同=4720×1825×1445mm。とほぼ一緒だが、グリーンハウスの前後長はモデル3のほうが長く、またフロントのカウルが低く抑えられている。拡大
正面から見るとご覧のとおり。カウルが低くタンブルが立っているので、キャビンがやたらとデカく見えるのだ。
正面から見るとご覧のとおり。カウルが低くタンブルが立っているので、キャビンがやたらとデカく見えるのだ。拡大
2012年にテスラ初の自社開発・自社生産モデルとして登場した「モデルS」(写真は2016年モデル)。連綿と改良を受けながら、今日でも販売が続けられている。(写真:田村 弥)
2012年にテスラ初の自社開発・自社生産モデルとして登場した「モデルS」(写真は2016年モデル)。連綿と改良を受けながら、今日でも販売が続けられている。(写真:田村 弥)拡大

欧州車とは明らかに異なるフォルム

webCGほった(以下、ほった):今回は清水さんからの発案で、テスラのデザインについて議論しようと思います。実際、「ロボタクシー(サイバーキャブ)」にはかなりビビりましたしねぇ。コンセプト的にも、デザイン的にも。

清水草一(以下、清水):ロボタクシーにもビビったけど、今回はテスラの創成期からデザインの話をしたいんだよね。

ほった:あら、そうなんですか?

清水:まぁ、最初のモデルの「ロードスター」は、ロータスがベースなんで除外してもいいと思うけど。渕野さんはテスラのデザインをどう見てますか?

渕野健太郎(以下、渕野):テスラ車って、割と独特のプロポーションをしてると思うんですよ。欧州車はできるだけキャビンを小さくして、ロアボディーを大きく見せる。それによってスポーティーさを強調するのが常なんですけど、テスラだと、例えば「モデル3」なんかは結構カウルが低くて、なおかつ正面から見るとサイドガラス面の角度……これは専門用語で「タンブル」っていうんですけど、それがかなり立ってる。なので、キャビンがルーミーなんですよね。SUVの「モデルY」も。

清水:ですね。

ほった:案外マジメにつくられてる。

渕野:ボディーパネルの構成とか質感は欧州的なんですが、プロポーションに関しては、かなり違いを感じます。街なかで正面から来るのを見ると、キャビンがすごくデカくて、背も高く感じますよね。スポーティーなフォルムよりも、ルーミーな空間を指向しているんだと思います。デザイン的にも。

清水:ただ、自社開発1号車の「モデルS」は、そうでもなかったでしょう?

渕野:そうなんですよねぇ。

清水:当時は対向車線にモデルSが見えると、「マセラティ?」って思えたもんですよ。全幅が広くてキャビンが小さいスポーティーなフォルムで、グリルやエンブレムがマセラティに似てたんで。いわゆる普通にカッコいい系のクルマですよね、ロングホイールベースの。それがいきなり、モデル3とモデルYで実用的な形になった気がするんですよ。実際、かなり実用的だし。

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ホントはAIがつくったんじゃないの?

清水:それと、モデル3もモデルYもデビューからかなり時間がたつけど、陳腐化してないと思うんです。飽きないんですよね。刺激はないんだけど、とても自然な形に見える。落ち葉とかツチノコとか(笑)、自然物に近いような。

ほった:ツチノコは自然物ですか?

清水:実在すればね! この辺のテスラ車に関しては、特にデザインが素晴らしいとは感じないけど、時間がたっても色あせてこない。

渕野:実際、デザイナーの狙いもそういうところなんでしょう。確かにトレンドに流されず、かといってそこまで本質を追究してるわけでもない。そんな感じがします。狙ってやった“ちょいダサ”みたいな。

清水:だから飽きないっていうのもあるかも。

渕野:ただテスラって、どうやってクルマをデザインしてるのかとか、内側の情報が極端に少ないじゃないですか。彼らがどういうプロセスで仕事をしているのか、なにを意図してクルマをデザインしているのか、全然わかんないんですよね。

一般的なカーデザインのプロセスとしては、まずスケッチを描いて、立体にして、もしそれがよければフルスケールのクレイモデルをつくって……みたいな流れなんですけど……。テスラは、ひょっとしたら全然違うプロセスでやってるんじゃないかな? 例えばですけど、AIを最大活用していて、私たちがいうところのデザイナーなんて実はいないのかもしれない。

清水:でも、以前マツダにも在籍していたデザイナーがチーフをやってるんですよね?

ほった:フランツ・フォン・ホルツハウゼンって人ですね(参照)。ロボタクの発表会でも、あいさつしてましたよ。

渕野:「テスラ+デザイン」で検索すると、最近中国にデザインセンターができたみたいな話は出てくるんですけどね……。クルマ自体も、全体にドライすぎる感じがします。生身のデザイナーがやってるとすると。

清水:AIっぽいと。

渕野:そこまでは言わないですけど……。デザインをディレクションしてる方の好みなのかもしれないし、“上”からそういう風に要望されてるのかもしれないけど……なんだろうな。血が通ってないっていうと語弊がありますけど、デザイナーのエゴがまったく感じられない。

清水:なるほど。

最近デビューしたモデルに思われるが、「モデルY」(写真左)の発表は実は2019年のこと。「モデル3」(同右)に至っては2016年と、もう8年も前のことなのだ。
最近デビューしたモデルに思われるが、「モデルY」(写真左)の発表は実は2019年のこと。「モデル3」(同右)に至っては2016年と、もう8年も前のことなのだ。拡大
「モデルY」のリアクオータービュー。 
清水「今から思うと、経年劣化しないデザインだったんだなぁと思うよ」 
ほった「でも、初期型の『モデルS』なんかは、今から見るとちょっと古く感じますよね。同じテスラでも、時間に対する耐性は車種によると思います」
「モデルY」のリアクオータービュー。 
	清水「今から思うと、経年劣化しないデザインだったんだなぁと思うよ」 
	ほった「でも、初期型の『モデルS』なんかは、今から見るとちょっと古く感じますよね。同じテスラでも、時間に対する耐性は車種によると思います」拡大
清水「なにこれ?」 
ほった「テスラが開発した人型ロボットの『オプティマス』君です。テスラの開発センターでは、人間じゃなくて彼らがペンやヘラを振るって、クルマをデザインしているのかもしれませんね」
清水「なにこれ?」 
	ほった「テスラが開発した人型ロボットの『オプティマス』君です。テスラの開発センターでは、人間じゃなくて彼らがペンやヘラを振るって、クルマをデザインしているのかもしれませんね」拡大
ほった「テスラのメディアサイトをあさっていたら、こんなものを見つけました。“現行顔”の『モデルS』のスケッチです。しかもデザイナーのサイン入り」 
清水「いや! これだって僕らメディアをだますためのワナかもしれない。テスラはきっと、本当にAIがクルマをデザインしているんだよ!」
ほった「テスラのメディアサイトをあさっていたら、こんなものを見つけました。“現行顔”の『モデルS』のスケッチです。しかもデザイナーのサイン入り」 
	清水「いや! これだって僕らメディアをだますためのワナかもしれない。テスラはきっと、本当にAIがクルマをデザインしているんだよ!」拡大

シンプルがゆえのタイムレスなデザイン

清水:デザインの意思決定の話ですが、イーロン・マスクの伝記によると、最初のテスラ・ロードスターのときは「とにかくかっこよくなきゃダメなんだ、目立て! EVのイメージをひっくり返すスポーツカーをつくれ!」って指示して、破産寸前でギリギリ仕上げたそうです。で、次のモデルSのときは例のホルツハウゼンさんが加わっていて、「これでどう?」「よし、これだ!」みたいな感じでいったそうです。テスラってものスゴい独裁体制だけど、それでいて当のマスクさんは、デザインに細かいこだわりはないようで。

渕野:実際、そうなんじゃないですか。

清水:ひたすら直感で「よし、これでいけ!」って判断してる気がします。その割に……って言っちゃなんですが、特に3とYに関しては、デザインの時間的耐久性が高かったな~て思うんですよね。

渕野:さっき血が通ってないっていう話をしましたけど、タイムレスなデザインを指向してるのかな? とは思うんですよ。人の意思はくみ取れないけど、漫然とデザインしている感じでもなくて、実際、エクステリアのつくり込みはちゃんとしています。造形的な話になりますが、全体的なボリュームのつけ方をはじめ、細部でもキャラクターラインの通し方、消し方などには、手だれのデザイナーやモデラーの仕事を感じます。

ただ、ひょっとしたら……例えば「平均値をとる」とかはしているのかなと。例えばヨーロッパ車と日本車の平均値をとって、AIにデザインさせたんじゃないかとか(笑)。いや、わかんないですよ? でも、そこまでやりそうな感じがあるじゃないですか、テスラには。

ほった:確かに。実車のデザインにも、なんかそんな気配はありますよね。つかみどころがないというか。

清水:フロントグリルはないし、ある意味で個性を極力排除しているのに、フォルムには微妙に個性がある。すごくシンプルなんですよね。

渕野:今の時代にしてはすごいシンプルです。

清水:少なくともディテールではなにもやろうとしてない。

渕野:先ほど言ったように、ロアボディーは全体的につくり込んでいるんだけど、キャビンだけでかいんですよ。それがテスラのアイデンティティーになっている。その狙いがどういうところにあるのかなっていうのを、一度聞いてみたいですね。

テスラにとって最初の市販モデルとなった初代「ロードスター」。2006年に発表され、2008年に上市された。「ロータス・エリーゼ」の車台にテスラの電動パワートレインを搭載した2座のオープンカーで、まだホルツハウゼン氏はデザインに関わっていない。
テスラにとって最初の市販モデルとなった初代「ロードスター」。2006年に発表され、2008年に上市された。「ロータス・エリーゼ」の車台にテスラの電動パワートレインを搭載した2座のオープンカーで、まだホルツハウゼン氏はデザインに関わっていない。拡大
同じ全長5m超級のSUV「テスラ・モデルS」(上)と「メルセデス・ベンツEQS SUV」(下)。同じEVの大型SUVでも、テスラとメルセデスでは造作の凝り具合がいささか違う。
同じ全長5m超級のSUV「テスラ・モデルS」(上)と「メルセデス・ベンツEQS SUV」(下)。同じEVの大型SUVでも、テスラとメルセデスでは造作の凝り具合がいささか違う。拡大
「テスラ・モデルX」のリアクオータービュー。 
渕野「シンプルなボディーにでっかいキャビンというのがテスラの特徴なんですよ」 
ほった「車格感が全然ないんで、正直、私はピンときませんがね。だって、コレがランクル級の大型SUVだって言われても、ねぇ?」 
清水「ほった君はメルセデス・ベンツのデザインの回でも、同じようなことを言っていたよね。ブレないねぇ」
「テスラ・モデルX」のリアクオータービュー。 
	渕野「シンプルなボディーにでっかいキャビンというのがテスラの特徴なんですよ」 
	ほった「車格感が全然ないんで、正直、私はピンときませんがね。だって、コレがランクル級の大型SUVだって言われても、ねぇ?」 
	清水「ほった君はメルセデス・ベンツのデザインの回でも、同じようなことを言っていたよね。ブレないねぇ」拡大

突如現れた「サイバートラック」という爆弾

清水:シンプルっていう意味では、普通はコテコテにするSUVもシンプルの極みですよね。モデルYって一応はSUVってなってますけど、全然SUVっぽくない。背の高いセダン的で。

渕野:僕は悪い印象はまったくなくて、むしろルーミーなインテリアに伝統的なエクステリアの組み合わせがいいと思います。ただ、さっきから言ってるとおり、中の人がそう考えてやっているのかは、わかんないですけど(笑)。

ほった:モデル3の頭をガッとつかんで、ミューっと上に引っ張っただけみたいな形してますもんね。洗練されてて、ラギッドな感じは皆無。

清水:(うなずきつつ)ところがですよ……。テスラのデザインは、そこからいきなり「サイバートラック」に飛ぶわけですよ。(全員笑)

ほった:これにはおったまげました!

渕野:うーん。自分がいたところみたいな普通の自動車メーカーだと、ある程度はデザインにフィロソフィーがあって、それに対してどう回答するか、という仕事の仕方をするんですけど……テスラにはそういうのはあんまりなさそうですね(笑)。全然違うものが出てきてる。不思議というかなんというか。これまでのメーカーには、これはできないですよ。

清水:サイバートラックに関しては、3やYとは逆に、あえて極限まで違和感を刺激しようとしてると思います。従来的なピックアップのイメージ、いや自動車の価値観すらぶっ壊してやるっていう。

渕野:ただ、この方向性はよしとしても、もうちょっと洗練させればいいのにって個人的には思いますけど……。

清水:洗練度はゼロですよね、あえてでしょうが。

渕野:自分らの価値観とは別のものっていうのはわかるんですけどね。具体的にどこを洗練させてほしいかっていうと、例えば三角ルーフの頂点の部分です。ラインがあまりにも直線なので、ルーフの頂点をつまんでるみたいに見えるんですよ。

ほった:確かに。なんだかピークの部分が反(そ)って見えますね。

渕野:普通のカーデザインでは、そういう風に見えないよう、頂点へのアプローチで少しずつラインを補正しながら、いい線を見つけるんですよ。ところが、サイバートラックにはそういう作業の形跡がまったくない。これもなかなか……普通のメーカーではありえないです。

清水:フェンダーも前後で高さがズレてるみたいに、わざと下手に描いたように見えるんですよね。子供の絵みたいな。これもわざとなんでしょうが。

ほった「『モデルY』(写真下)って、『モデル3』(写真上)の頭をギューっと引っ張って、タテに伸ばしたような形をしてますよね」 
清水「てか、テスラって細かいところのモチーフもほとんど一緒だよね。ヘッドランプが車種によって違ったりするけど」
ほった「『モデルY』(写真下)って、『モデル3』(写真上)の頭をギューっと引っ張って、タテに伸ばしたような形をしてますよね」 
	清水「てか、テスラって細かいところのモチーフもほとんど一緒だよね。ヘッドランプが車種によって違ったりするけど」拡大
その強烈なデザインにより、多方面で物議を醸している「サイバートラック」。
その強烈なデザインにより、多方面で物議を醸している「サイバートラック」。拡大
カクカクした外観同様、インストゥルメントパネルまわりもシンプルかつ直線基調のデザインである。
カクカクした外観同様、インストゥルメントパネルまわりもシンプルかつ直線基調のデザインである。拡大
まったくの直線2本で構成されるルーフラインは、見ようによっては頂点が上からつままれているようにも見える。他のメーカーであれば、そうは見えないよう微妙にラインを調整しながらデザインするのだが……。
まったくの直線2本で構成されるルーフラインは、見ようによっては頂点が上からつままれているようにも見える。他のメーカーであれば、そうは見えないよう微妙にラインを調整しながらデザインするのだが……。拡大
角度によっては、前後でフェンダーの高さが違うように見えることも。これはショルダーラインが斜めに走っており(後ろにいくほど上へあがる)、前と後ろでフェンダーとラインとの距離が違うためだ。
角度によっては、前後でフェンダーの高さが違うように見えることも。これはショルダーラインが斜めに走っており(後ろにいくほど上へあがる)、前と後ろでフェンダーとラインとの距離が違うためだ。拡大

本当に同じ人がデザインしたの?

渕野:とにかく、全体のスタイリングでも仕上げや調整の部分でも、サイバートラックのデザインはモデル3とかモデルYの洗練された感じとは全然違いますよね。不思議です。

清水:このクルマについては、イーロン・マスクが「徹底的にブッ飛んだものをつくれ!」って指示したみたいですけど。

渕野:それでも、モデル3とかと同じデザイナーでは、普通こうはなんないですよ。いくら「変なものつくれ!」と言われても。

ほった:んでも実際、テスラのデザインの親玉はずっとフランツさんですよね。サイバートラックの発表会のとき、窓に鉄球を投げて割っちゃったのも彼で。

渕野:そうなんだ……。

ほった:2008年に入社してからずっと、彼がチーフデザイナーみたいですよ。元マツダで、フォルクスワーゲンやGMも渡り歩いてたみたいですけど。

渕野:でもこれ、やっぱり「本当に同じ人がディレクションしてるのかな?」って思いますよ。すごい不思議。

ほった:やっぱ上に独裁者がいて、いつも渕野さんが言う「外部からの雑音」ってのが間にまったくないから、こういう風に振り切れるんじゃないかな。

清水:客は見てない! この世にワタシとイーロンだけ!! って感じ?

ほった:客を見ていないというか、ほかの重役を見ていないというか。そもそも重役なんていないでしょうし、なんならテスラには、日本企業的なデザイン会議なんてもんもないでしょうしね。

渕野:それはそうだと思います。

ほった:イーロンさんさえOK出せばいいわけですから、「みんなの信頼もあるし、今までと同じようなものを……」っていう気配りは必要ないんだと思います。それこそフランツさんが、居酒屋でへべれけになって描いたデザインでも、イーロンさんがいいと言ったらそれが通る。そういう感じじゃないかな。

渕野:普通のメーカーで働いてきた身としては、本当に理解不能です。僕はまだサイバートラックの実物を見たことはないんですけど、ひょっとしたらこれ、カッコいいんじゃないかって思うんですよ。これがそのままアメリカの街なかを走っていたら。

清水:超異物ですよね。アメリカのど田舎でこれが走ってたら、絶対宇宙から落ちてきた! って思いますよ。日本の田舎道でもそうだけど。(全員笑)

渕野:それにしても、もうちょっと、もうちょっとなんとかならなかったのか(笑)。いや本当に、どうやってデザインしたんだろう??

後編へ続く)

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=テスラ、BMW、メルセデス・ベンツ、newspress、田村 弥/編集=堀田剛資)

テキサスのギガファクトリーオープン記念イベント(2022年4月)より。「サイバートラック」の市販モデルがお披露目される様子。
テキサスのギガファクトリーオープン記念イベント(2022年4月)より。「サイバートラック」の市販モデルがお披露目される様子。拡大
テスラの現行ラインナップ。こうして見ると、本当に「サイバートラック」だけデザインの方向性がまったく違う。
テスラの現行ラインナップ。こうして見ると、本当に「サイバートラック」だけデザインの方向性がまったく違う。拡大
2019年の発表会で「サイバートラック」に鉄球を投げつけ、ガラスを割ってしまったホルツハウゼン氏(車両の強じんさをアピールするデモンストレーションで、本当は割れない予定だった)。2023年12月の納車イベントではそれを意識してか、日和(ひよ)って野球ボールを投げつけるパフォーマンスを披露。会場の笑いを誘った。
2019年の発表会で「サイバートラック」に鉄球を投げつけ、ガラスを割ってしまったホルツハウゼン氏(車両の強じんさをアピールするデモンストレーションで、本当は割れない予定だった)。2023年12月の納車イベントではそれを意識してか、日和(ひよ)って野球ボールを投げつけるパフォーマンスを披露。会場の笑いを誘った。拡大

X(旧ツイッター)のオーナーであり、テスラやスペースXなどのCEOを務めるイーロン・マスク氏。2025年1月からの第2次トランプ政権では、政府効率化省の議長も務める予定だ。


	X(旧ツイッター)のオーナーであり、テスラやスペースXなどのCEOを務めるイーロン・マスク氏。2025年1月からの第2次トランプ政権では、政府効率化省の議長も務める予定だ。
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ほった「テスラのメディアサイトをあさってたら(本日2度目)、こんな写真が出てきましたよ。既存のピックアップトラックよろしく、『お仕事でも使えます』ってことなんでしょうが……」 
清水「いや、違和感ありすぎるわ!!」
ほった「テスラのメディアサイトをあさってたら(本日2度目)、こんな写真が出てきましたよ。既存のピックアップトラックよろしく、『お仕事でも使えます』ってことなんでしょうが……」 
	清水「いや、違和感ありすぎるわ!!」拡大
渕野「いやコレ、本当にどうやってデザインしたんだろう?」
渕野「いやコレ、本当にどうやってデザインしたんだろう?」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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