BMW M3セダン(FR/7AT)/M4クーペ(FR/7AT)
本籍はサーキット 2014.06.04 試乗記 新型「BMW M3セダン/M4クーペ」に向けられる最大の興味は、何といっても新型ストレート6ユニットの出来栄えだろう。それに加えて大幅な軽量化とさまざまな新機軸の採用で磨かれたツインズは、ワインディングロードで、そしてサーキットで、どんなフットワークを見せるのだろうか。ポルトガルで試乗した。帰ってきたストレート6
ポルシェやフェラーリといったドリームカーはさておき、「一度は乗ってみたい」と多くの人がリアルに思うブランドの筆頭格は、BMWだろう。なぜか。漠然とではあっても、BMWには運転する歓びがあると、みんなが知っているからだ。
BMWとスポーツ性は切っても切れない関係だ。昔からそれを「駆けぬける歓び」というフレーズでうたってきた。そんなBMWのスポーツ性=ドライビングファンを、さらに磨きぬいた存在が「M」であり、初代「M1」から連なる歴代Mモデルは全て、セダンもワゴンも、当代一流のスポーツカーとして、その名をはせてきたものだ。
なかでもM3は、「3シリーズ」がBMWというブランドの魅力を凝縮した支柱であるのと同様に、Mモデルの大黒柱というべき存在である。
第5世代となった新型では、ベースモデルのネーミング変更――クーペを新たに「4シリーズ」と呼ぶことになった――にあわせて、旧型「M3クーペ」の後継をM4クーペとし、M3セダンはそのままM3セダンと呼ぶことになった。最初にことわっておくと、メカ的なナカミは全て同じである。ボディー形状の違いによって生じる重量差があるのみだ。
Mモデルといえば、最大の見どころは今も昔も“エンジン”だ。新型M3/M4では、なんと、憧れのM製ストレート6が復活した。ダウンサイジング時代の僥倖(ぎょうこう)である。
高性能化と高効率化を両立した新開発の高回転型ユニットである。高精度の直噴システム、バルブトロニックおよびダブルVANOS、シングルスクロール式ターボチャージャーのツイン掛け、といったおなじみの高性能システム構築に加えて、ライナーレスのシリンダーブロック、クローズドデッキ式専用クランクケース、鍛造クランクシャフト、軽量マグネシウム製オイルパン、といった具合にレーステクノロジーをどん欲に採りいれた。
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約80kgの軽量化を達成
M社謹製ストレート6のスペックは、とにかくすさまじい。4リッターから3リッターへと排気量を大幅に減らしたにもかかわらず、先代V8を11ps上回るピークパワー、431psを獲得した。さらに、直噴ツインターボのおかげでトルク特性にいたっては、1850rpmという低回転域から旧型比約40%アップの56.1kgm(550Nm)を生み出している。CO2排出量は194g/km(7段M DCTドライブロジック搭載車)となり、当然ながら、先代V8に比べて4分の3以下という数値だ。
組み合わせるのは、デュアルクラッチ式2ペダルの7段M DCTドライブロジックをメインに、3ペダルの6段マニュアルギアボックス(日本ではM4クーペのみ)だ。アフォーダブルなスポーツカーという重要な役目を担うこのクラスでは、北米市場を中心に、3ペダルタイプの需要が旺盛であるから、ということらしい。
Mの魅力を語るにあたっては、どうしても最初にパワートレインを取り上げがちだけれども、新型M3/M4において、それと並んで優先順位の高かった開発テーマはというと、軽量化であった。
なかでも炭素繊維強化樹脂(CFRP)の応用は、歴史的にみてもMが最も得意とするところであり、しかも、いまやBMW自体が当代きってのCFRP遣いとして有名だ(iブランドにおける軽量車体構造の要がCFRPである)。
旧型ではクーペだけだったCFRPルーフを、新型ではセダン(M3)にも採用。M4ではさらに、トランクリッドの骨格素材にもカーボンファイバーを混ぜている。ちなみに両車とも、ストラットタワーバー(これが格好良いの何のって!)やプロペラシャフトもCFRPだ。
もちろん、軽量化というものは、なにもCFRPによってのみ目標達成されるものじゃない。エンジンフードやフロントフェンダーは従来のスチール製からアルミニウム製に変更されるなど、さまざまな軽量化策が施された。その結果、新型M4は、先代M3クーペ比でおよそ80kg軽くなっている。
軽量化によって、高性能化と高効率化はいっそう高みに上る。現代における自動車開発の要諦といわれるゆえんだ。
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精緻で凝縮感に満ちたエンジンフィール
新型M3セダン/M4クーペにおける重要な開発ターゲットは、サーキット走行における安定した性能の確保だったという。これは昨今、MやAMGといったドイツプレミアムブランドのスポーツグレードが軒並みスーパーカーのようなパフォーマンススペックを得るようになった結果、サーキットドライブを楽しむユーザーが増えてきたためである。
M3/M4では、例えば、エンジンやターボチャージャー、トランスミッションの冷却システムを、サーキット走行を前提に設計していたりする。もちろん、その鍛えの現場はニュルブルクリンク・ノルドシュライフェだった。
以上のような予備知識を得て、筆者が向かった先は、ポルトガルのリゾート地であった。
ホテルのエントランスで、鮮やかなオースティンイエローのM4を受け取る。DCT仕様だ。バケットタイプのスポーツシートに背中から包まれて、エンジンスタートボタンを押した。
目覚めは、とてもおとなしい。一瞬、ノーマルとは違う爆発音が聞こえるが、拍子抜けするほど静かな幕開けだ。
それでも試しに軽くレーシングしてみれば、その本性がたちまち現れた。右足の裏に心地よいひっかかりを感じさせながら、ストレート6はあくまでも軽く、そしてシャープに反応する。以前のV8とは、まるで違うフィールでもある。
電動パワーステアリングのアシストとシャシーのダンピングをコンフォートに、エンジンマネジメントをエフィシェンシーにそれぞれセットしてホテルを出た。
するとその直後、“おとなしい”という最初の感想が吹き飛んだ。
ソリッドかつフラットな乗り心地。そのうえステアリングの反応も常にがっちりとしているから、コンフォートモードであっても、そのライドフィールは硬いイメージに終始する。
それでも、徐々に速度を上げていけば、アシがとても忙しく上下動し、路面からのショックをきれいに吸収してくれる。硬いが、決して悪い乗り心地ではない。
高速道路に入ってから、フルスロットルを試みた。新開発ストレート6は、ターボエンジンであることを感じさせないほどに、よどむことなく7500rpmプラスアルファまで回る。Mのエンジンらしく、すさまじく精緻で頑丈、凝縮された回転フィールである。
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コーナーではいかようにも
高速道路を降りて、ポルトガルの山岳地帯へ。すかさず、ハンドリングとシャシーのモードをスポーツにセット。
驚いたことに、はじめは硬く思えたアシまわりが、さらにモードをハードにセットしたにも関わらず、走りこめばこむほど蕩(とろ)けるような感覚で体に馴染(なじ)んでいく。リズミカルなコーナリング操作がいたってたやすく、コーナー途中の凸凹でも接地感が失われないから、意のままに攻め込んでいける。マグネシウム骨格のステアリングホイールは剛性感も抜群で、動きが軽いのに手応えがいい。
試乗コースの目的地は、ポルトガルの南端、アルガルヴェにあるテクニカルサーキットだった。サーキット走行専用車に乗り換えることなく、そのまま、コースイン。サーキット走行と行き帰りのドライブを同じクルマで、というのは、前述した開発コンセプトが実現していることへの自信の表れだろう。
とにかく、速くてコントローラブルなマシンだった。ミシュランタイヤのサポートも素晴らしく、自信をもって速度を上げていけた。パワーフィールはもちろんのこと、全く垂れないブレーキ(オプションのカーボンセラミックだったが)にもいたく感動。クルマ好きに育って本当に良かったと、その歓びをかみしめる。
セダンのM3にもサーキットと一般道で試乗したが、性能は全く同じだと思っていい。重量差があるとはいえ、さほどのものではないからだ。ただ、Aピラーの角度とダッシュボードの位置がM4とは異なるために、前方視界のイメージが少し違っている。個人的には、M3の方が街や高速道路はもちろん、サーキットにおいても、ドライブしやすいと思った。
では、新開発の軽量3ペダルMTはどうだったか、って? 全てのパフォーマンス指標においてDCTに劣っているにもかかわらず、操る楽しみだけは依然としてある。残念ながら回す歓びは旧型V8に劣っているけれども、乗り手の動きがクルマと一体となる感覚は、やはり捨て難いものだ。シフトフィールも軽く剛性感のあるタッチで、文句はない。
マニュアルミッションは、高尚なドライビング趣味のツールとして、これからも生き残っていくんじゃないか。そう思わせるに十分な仕上がりであった。
(文=西川 淳/写真=BMW)
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テスト車のデータ
BMW M3セダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4671×1877×1424mm
ホイールベース:2812mm
車重:1520kg(DIN)
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:431ps(317kW)/5500-7300rpm
最大トルク:56.1kgm(550Nm)/1850-5500rpm
タイヤ:(前)255/40ZR18 95Y/(後)275/40ZR18 99Y
燃費:8.3リッター/100km(約12.0km/リッター)(欧州複合モード)
価格:1104万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様、価格は日本市場のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
BMW M4クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4671×1870×1383mm
ホイールベース:2812mm
車重:1497kg(DIN)
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:431ps(317kW)/5500-7300rpm
最大トルク:56.1kgm(550Nm)/1850-5500rpm
タイヤ:(前)255/40ZR18 95Y/(後)275/40ZR18 99Y
燃費:8.3リッター/100km(約12.0km/リッター)(欧州複合モード)
価格:1126万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様、価格は日本市場のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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