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ボルボV60ラグジュアリーエディション(FF/6AT)

深まるボルボらしさ 2014.06.17 試乗記 森口 将之 「ボルボS60/V60」に、豪華装備の特別仕様車が登場。北欧のプレミアムブランドが持つ、ドイツ御三家とは一味違う魅力に触れた。
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ライバルに対し先手を打つ

特別仕様車が用意される理由は、いろいろある。よく知られているのは、モデル末期の販売の落ち込みを防ぐべく、装備を充実させつつお買い得な価格を設定したパターンだろう。でも今回乗った「ボルボS60/V60ラグジュアリーエディション」はそうではないだろう。なにせ2014年モデルでマイナーチェンジを実施したばかりなのだから。

ではなぜ特別仕様車を設定したのか。増税直後だから? ボーナス時期だから? それらもあるだろうが、個人的にはあるクルマが関係しているような気がした。
そのクルマとは、今年中に新型の発売が確実な「メルセデス・ベンツCクラス」。「BMW 3シリーズ」と並ぶプレミアムDセグメントの雄がモデルチェンジするとなれば、このクラスの購入を考えている多くのユーザーが興味を持つはず。ならば上陸前に先手を打っておこう、というメッセージに思えたのだ。

ベースは1.6リッター直列4気筒直噴ターボエンジンに6段デュアルクラッチ・トランスミッションを組み合わせた前輪駆動の「T4 SE」。ここに「レザー・パッケージ」と「セーフティ・パッケージ」「パーソナル・カー・コミュニケーター(PCC)」「キーレスドライブ」を組み込んだ。価格に換算すれば約50万円分になるという。
なのにラグジュアリーエディションの価格は、T4 SEよりも20万円以上安い。現行の「C180ステーションワゴン エディションC」「320iツーリング」にアウディの「A4アバント 2.0 TFSI」を加えたジャーマンプレミアムDセグメント御三家と比較すると、安全装備で圧倒的なアドバンテージを持ちながら、約50万円も安い。

いずれにしても今回の特別仕様車、比較検討型の顧客をターゲットとしたモデルであるようだ。しかし最初からS60/V60を決め撃ちしようと考えていた人にとっても、願ってもないチャンス到来といえるだろう。

ボルボのDセグメントワゴンである「V60」。日本に導入されたのは2011年のことで、2013年8月には内外装デザインを変更するマイナーチェンジが行われた。
ボルボのDセグメントワゴンである「V60」。日本に導入されたのは2011年のことで、2013年8月には内外装デザインを変更するマイナーチェンジが行われた。
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「ラグジュアリーエディション」は、通常はオプション扱いの「セーフティ・パッケージ」や「レザー・パッケージ」、リモコンキー上の表示によって、ドアロックの状態やアラームの作動状況を確認できる「パーソナル・カー・コミュニケーター(PCC)」などの装備を、標準で採用している。
「ラグジュアリーエディション」は、通常はオプション扱いの「セーフティ・パッケージ」や「レザー・パッケージ」、リモコンキー上の表示によって、ドアロックの状態やアラームの作動状況を確認できる「パーソナル・カー・コミュニケーター(PCC)」などの装備を、標準で採用している。
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安全運転支援システムのセンサーに用いられる、フロントグリル内のミリ波レーダー。ボルボの緊急自動ブレーキ機能「ヒューマン・セーフティ」は、車両だけでなく、歩行者や自転車も検知することができる。
安全運転支援システムのセンサーに用いられる、フロントグリル内のミリ波レーダー。ボルボの緊急自動ブレーキ機能「ヒューマン・セーフティ」は、車両だけでなく、歩行者や自転車も検知することができる。
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端々に見るボルボならではの良さ

試乗車はワゴンのV60。「パワーブルーメタリック」と呼ばれる水色のボディーがスカンジナビア生まれっぽい。シートの色はボディーカラーに応じて「オフブラック」と「ソフトベージュ」を使い分けていて、ブルーのV60では黒い内装という設定だった。

ソフトベージュのほうが温かさを感じられて北欧っぽいのに……と思いつつ腰を下ろしたら、ふっかりした掛け心地にとろけそうになってしまった。上質なレザーを用いていることはもちろん、ドイツ車では得られにくい優しさが伝わってきたからだ。

追加された装備はいずれも、過去に乗った広報車で体験済みなので、特別感動することはなかったけれど、ひさしぶりにV60に接したこともあって、それ以外の部分でいくつか感心することがあった。
ひとつはスイッチの分かりやすさ。例えばステアリング上のオーディオ音量調節は、音の大小を+/-ではなくスピーカーのアイコンの大きさで表現。直感的な表示なので瞬時に判別しやすい。一方でパドルシフトの+/-は打ち抜きにしている。プリントと違って手触りでも分かる。北欧デザインの力量を感じる瞬間だ。

もうひとつは荷室の作りだ。V60はスポーツワゴンと名乗っているぐらいなので、従来のボルボワゴンと比べれば、絶対的な容量は限りがある。でも後席がきちんとフラットに折り畳め、フロアボードがカチッとした手応えとともに収まるのを体感すると、豊富な経験に裏打ちされた作りの良さが受け継がれていることを実感するのだ。

特別仕様車「ラグジュアリーパッケージ」に装備される本革シート。運転席だけでなく助手席にも電動調整機構が備わる。
特別仕様車「ラグジュアリーパッケージ」に装備される本革シート。運転席だけでなく助手席にも電動調整機構が備わる。
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3分割可倒式のリアシート。中央席のヘッドレストは、後方視界を妨げないよう、人が乗っていないときには格納することができる。
3分割可倒式のリアシート。中央席のヘッドレストは、後方視界を妨げないよう、人が乗っていないときには格納することができる。
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ラゲッジルームについてはベース車と共通。分割可倒式の後席に加え、必要とあらば助手席も前倒しすことができる。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
ラゲッジルームについてはベース車と共通。分割可倒式の後席に加え、必要とあらば助手席も前倒しすことができる。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
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熟成の域に達している

パワートレインもまたスタンダードのT4 SEと共通。1.6リッターという排気量は前出のドイツ車3台より小さい。たしかに最近のダウンサイジングターボとしては、やや唐突にトルクが立ち上がるのを感じる。でもパワーシフトと呼ばれるデュアルクラッチ・トランスミッションは、同種のメカニズムでは群を抜いて穏やかにクラッチをつなぐので、トータルでの加速はスムーズだ。
音は4000rpm以上回すと4気筒ならではのうなりが耳に届きはじめるけれど、そのボリュームはライバルと比べても静かであり、プレミアムブランドであることを実感する。1560kgに対して180ps/24.5kgmだから加速性能そのものも不足はない。

そしてシャシーも従来どおり、と書きたいところだが、こちらは数値に表れない違いがあった。しっとり感がアップして、ボルボらしくなったのだ。接地感も増したので、大雨の中をリラックスしてドライブできた。でもステアリングは相変わらずスッと切れ、リニアに向きを変えていく。俊敏性と快適性が高次元で両立している。熟成のたまものだろう。

デビュー直後のS60/V60は、サスペンションをあまりストロークさせず、サイズを忘れさせる軽快なフットワークを実現していて、業界内では好評だったが、個人的には必要以上にスポーティーさを強調した姿勢に戸惑いを感じていた。

しかし今回の特別仕様車は、そもそも名前がラグジュアリーエディションである。内容も安全性と快適性を引き上げるアイテムを追加していて、走りもそれに見合った、安全快適な移動を重視するスタンスに進化しているように映った。
ドイツ御三家と互角の戦いを演じるためには、ボルボらしさを深めていくことこそ大切だと思っていただけに、ラグジュアリーパッケージの仕立てに好感を抱いた。

(文=森口将之/写真=郡大二郎)

ボディーカラーには、テスト車の「パワーブルーメタリック」を含む、全6色が用意される。
ボディーカラーには、テスト車の「パワーブルーメタリック」を含む、全6色が用意される。 拡大
エンジンやトランスミッションについては、ベース車の「T4 SE」から特に変更はなし。1.6リッター直4直噴ターボエンジンは、24.5kgmの最大トルクを1600-5000rpmという回転域で発生する。
エンジンやトランスミッションについては、ベース車の「T4 SE」から特に変更はなし。1.6リッター直4直噴ターボエンジンは、24.5kgmの最大トルクを1600-5000rpmという回転域で発生する。
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足元の仕様も「T4 SE」と同じ。215/50R17サイズのタイヤと、7.0J×17インチのアルミホイールを組み合わせている。
足元の仕様も「T4 SE」と同じ。215/50R17サイズのタイヤと、7.0J×17インチのアルミホイールを組み合わせている。
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テスト車のデータ

ボルボV60ラグジュアリーエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)215/50R17 95W/(後)215/50R17 95W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:419万円/テスト車=419万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ボルボV60ラグジュアリーエディション
ボルボV60ラグジュアリーエディション
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森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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