ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4(4WD/7AT)
調教された猛牛 2014.07.10 試乗記 700psを誇るランボルギーニのフラッグシップ「アヴェンタドール」。その全開性能はいかに? ツインリンクもてぎのロードコースで解き放った。試乗記と併せてオンボード動画をおとどけする。700psをコントロールしきれるか!?
なぜ今ごろになって「アヴェンタドール」の試乗会を、しかもツインリンクもてぎで開催するのか? 筆者にはまったくもってその理由がわからなかったけれど、そんなことはまぁ、どうでもいい。だって「アヴェンタドールに乗りますか? しかもサーキットで」と聞かれたら、断るはずがないじゃないか。
あえてその理由を探せば、「2014年モデルの進化を、より安全で管理がしやすいクローズドエリアで味わってください。あくまで安全にね!」ということなのだろう。またwebCGの担当編集T氏によれば、アヴェンタドールのトランスミッション「ISR」(インディペンデント・シフティング・ロッド)は、登場時よりもクラッチ制御が洗練されているという。
そして編集部からは「コルサモードで700psを解き放ったときの操縦性、特にアクセラレーションの自由度を教えてほしい」というマニアックな要望までもらった。ようするに「ユー、サーキットで全開にしちゃったとき、アヴェンタドールLP700-4がきちんと操れるクルマなのかどうか、教えてよ!」というわけである。
ダイジョブかなぁ……。だって700psでしょ!?
V12ユニットは“トルク直情型”
しかしいくらISRのクラッチ制御がよくなったとはいっても、それをこういう場所で試すのは、むしろ逆効果ではないか、とも筆者は思う。公道に対して全開率が高いサーキットでは、シングルクラッチ特有の「空走感」がむしろ目立つのである。制限速度の関係からエンジンを回しきれず、緩いシフト操作を行う公道の方が、こういうあり余るトルクを持つスーパーカーであれば特に、シングルクラッチのアラは目立たない。極めて低い回転数で次のギアへとシフトアップしたとしても、何事もなかったかのように走ってしまうからだ。
実際、その読みは当たった。エンジンが5500rpm回っていれば生み出されてしまう、70.4kgmという強大なトルク。これが加速中に一瞬でも抜ければ、やっぱり大きなピッチングが起こる。そしてなるべく速くクラッチをつなげようとするから、前傾した姿勢は「バツン!」と後方に引き戻される。そのピッチングと荒々しさは、シームレスなデュアルクラッチの洗練具合には、正直遠く及ばない。
とはいえこれが嫌なのかというと、そうでもないからクルマというのは不思議なのである。怒涛(どとう)のトルクとパワーをちゅうちょなく解放し、レブリミットに近くなったら件(くだん)のシフトをちょこんとアップ。室内に響き渡るV12サウンドと、無造作につながるクラッチの荒々しさは、まるで禁断の世界へと踏み込んでしまったかのような気持ちにさせてくれる。これが楽しくないわけがない!
エンジンの特性はフェラーリのように軽やかさを前面に押し出すタイプではなく、溢(あふ)れんばかりのトルクを、高回転までそのまま持っていくような力強い性格だった。フィーリングとしては「日産GT-R」と似ているが、自然吸気エンジンである分だけアヴェンタドールの方が人間の感性に近く、快感指数が高い。
しなやかな足どり
注目していたシャシーは黒子に徹していた。この巨体がステアリング操作に対して素直に動くのは、229kgしかないカーボンモノコックがもたらす軽さと剛性のたまものだと思うのだが、例えば同じくカーボンシャシーを持つ「KTMクロスボウ」(こちらはダラーラが設計)のように、得もいわれぬ堅牢(けんろう)さを前面に押し出しているかといえば、いたって“普通”な感触なのである。
その理由のひとつに、乾燥重量で1575kgという車重があるはずだ。この手のスーパーカーとしては十分に軽いウェイトではあるが、カーボンシャシーを使うレーシングカーとして見たとき、それは決して軽い部類のものではない。
もうひとつはサスペンションの剛性だ。簡単に言えばこのアヴェンタドール、スペックの割にダンパーとスプリングが柔らかいのである。それは「ストラーダ」モードから、スイッチを「スポーツ」そして「コルサ」へと変更しても変わらなかった。もしかしたらダンピングスピードが変更されているのかもしれないが、乗り手がそれを大きく意識することはない。
大きなGTウイングを持たないから、フルブレーキングしたときにリアタイヤが浮き気味になるのは仕方ないとして、このときボディーがねじれるような動きをしないのは見事だった(なんでもそのねじり剛性は3万5000Nmだという)。しかしブレーキを終えてからステアリングを切り始めたとき、フロントサスペンションが踏ん張らないから、いつまでも荷重が乗り続けてしまう。
一見して低められた車高、短そうなストロークの割に、驚くほどしなやかに車体がロールするのは、適正なレバー比を持つプッシュロッドサスペンションのおかげだろう。ただしこれだけの「器」(カーボンモノコックボディーとプッシュロッド式のサスペンション)を持っているのなら、それ相応の使い方ができるようにしてほしいと感じたのも事実だ。
足まわりがそのスピードに対して柔らかいため、カーボンセラミック製のディスクローターを持つブレーキの評価もやや曖昧にならざるを得ない。踏力(とうりょく)に対する反応速度に遅れが生じるため、そのコントロール性はよくわからなかったというのが正直なところだ。ただ絶対的に速度を殺すという意味では、だらだらと長くペダルを踏み続けなければならない過酷な状況下でも、きっちりとその役目を果たしてくれた。ペダルタッチは柔らかめだが嫌みはなく、最後までストロークを一定に保ってくれた。
乗りこなしがいのあるスーパースポーツ
ちなみに今回は、ランボルギーニの試乗会の例に漏れず全開走行はかなわなかった。インストラクターによる同乗走行を終えた後、「ガヤルド」のウイング付きモデルに先導されて、3台ないし2台のアヴェンタドールがツインリンクもてぎのロードコースを周回する。アヴェンタドールの加速力をもってすれば、ガヤルドには簡単に追いついてしまうのである。
それでもコース幅が広い1コーナーなどでは、その実力を少しだけ垣間見ることができた。前後の駆動配分が20:80となる「スポーツ」モードでは、少ないフロント荷重でも、ブレーキングからターンインにかけて慣性でリアがじわじわと滑り出す。その流れ具合は非常に穏やかで、滑りながらもクルマが前へと進もうとしてくれる。4000万円級のスーパーカーをタイヤのグリップ限界付近でコントロールできるカタルシスは、やっぱり最高である。
ただこのとき右足には、少しだけ気を遣う。スイッチのようなアクセル操作をした場合、エンジンがリニアに反応してくれないからだ。700psのパワーがさく裂して、途端にドリフトアウトしてしまうよりはマシなのかもしれないが、常にアクセルペダルを踏み続けていない限り、フレキシブルな加速が得られない。
そしてこの制御は、コルサモードでも変わらなかった。当日は禁じ手となっていたトラクションコントロールスイッチをオフにしたとき、初めてアヴェンタドールはその本性をさらけ出すのではないだろうか。
まとめると、その見た目にさえ圧倒されなければ、アヴェンタドールLP700-4は実によく調教された猛牛だった。腕に少しばかりの覚えさえあれば、700psの圧倒的な加速感に酔いしれながら、拍子抜けするほど安全に走ることができる。
編集部からのリクエストに100%応えることができなかったのは残念だけれど、ここまでアヴェンタドールを理解できたのは、大いなる一歩だったと思う。ただただすごそうというだけで、その実、えたいの知れなかったアヴェンタドールが、実に乗りこなしがいのあるスーパースポーツだというところまでわかったのだから。ランボルギーニが、ここまでわれわれに歩み寄ってくれたことには、大いに感謝したいと思う。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥)
(動画撮影協力=スペックプランニング www.gps-nero.com)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×2030×1136mm
ホイールベース:2700mm
車重:1575kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:6.5リッターV12 DOHC 48バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:700ps(515kW)/8250rpm
最大トルク:70.4kgm(690Nm)/5500rpm
タイヤ:(前)255/30ZR20 92Y/(後)355/25ZR21 107Y(ピレリPゼロ)
燃費:16.0リッター/100km(約6.3km/リッター)(1999/100/EC 複合モード)
価格:4317万3000円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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