レクサスNX200t“Fスポーツ”(4WD/6AT)
追い上げなるか 2014.10.13 試乗記 レクサス初のコンパクトSUV「NX」。“遅れてやってきた主役”の実力は? 注目の2リッター直4ダウンサイジング・ターボユニットを搭載する「200t」グレードの、“Fスポーツ”仕様に試乗した。遅ればせながら
レクサスのコンパクトSUV「NX」が幸先の良いスタートを切ったらしい。7月29日の発売から約1カ月間でおよそ9500台を受注、月販目標台数は700台ということだったから何と14倍にも相当する数字だ。もっとも、中には「スカイライン」のように月販目標200台と、これでディーラーの商売が成り立つのか心配になるほどの基準値を設定しているものもあるから“何倍”という表現には注意が必要だが、立ち上がりで約1万台はプレミアムSUVとしては上々の数字である。
国内ではいまひとつヒット作に恵まれず、ブランド別国内販売台数ではメルセデス・ベンツやBMWにも後れを取っているレクサスにとって、NXは待望のニューモデルである。その立ち上がりで年間セールスの5分の1近くに当たる数を受注したことは、まさにひと安心といったところだろう。そもそもプレミアムSUVというジャンルではレクサスは先駆者だったにもかかわらず、その後、世界のプレミアムブランドがより小さなサイズのSUVも取りそろえて攻勢をかける中、なぜかレクサスは手をこまねいていた。最も重要な米国市場ではコンパクトなSUVは主力にならないという判断があったのかもしれないが、とにかく遅ればせながらというか、満を持してと言うべきか、ライバルを追撃するために新たに加わったプレミアムコンパクトSUVがNXである。
NXは「カムリ ハイブリッド」と基本的に同じパワートレイン(2.5リッター4気筒+モーター)を持つハイブリッドの「300h」と、新型ターボエンジン搭載の「200t」の2種類に大別されるが、やはり注目はこちらもようやくという感じで登場した直噴2リッターターボエンジンを積む「200t」である。それぞれにFFと4WDが設定され、さらに他のレクサス車と同様にラグジュアリーな“バージョンL”やスポーティーな“Fスポーツ”など幅広いラインナップがそろっている。
予想以上にスポーティー
ハイブリッド以外には興味がないのかと訝(いぶか)しくなるほど、いわゆるダウンサイジング・ターボエンジンにもディーゼルにも消極的な姿勢を見せてきたトヨタがようやく発表した新型ガソリンターボエンジンは2リッター直4の8AR-FTS型。シリンダー内直接噴射と吸気ポート噴射を併用し、ツインスクロールターボを備えた新ユニットのピークパワーとトルクは238ps(175kW)/4800-5600rpm、35.7kgm(350Nm)/1650-4000rpmというかなりのハイスペックである。ちなみにレクサスのガソリンエンジン車では初めて(ようやく)スタート&ストップシステムも採用されている。
近ごろ流行のダウンサイジング・ターボエンジンは、分厚いフラットトルクを低回転から満遍なくフラットに生み出し、実用域で非常に扱いやすい代わりに、回しただけパワーが盛り上がるというドラマチックさには欠けるものもある。しかしこの新型エンジンは単なる使いやすいターボユニットではなく、回転の上昇に伴ってリニアに盛り上がる強力なパワーを持ち合わせている。もちろん低回転から湧き出る太いトルクとスムーズな6ATの組み合わせによって実に滑らかにスタートするし、中間加速でのレスポンスもきわめて力強い上に、トップエンドまで回せば勇ましいサウンドとともに鋭く吹け上がるメリハリのあるユニットだ。トップエンドでもうひと伸びすれば言うことなしだが(レッドゾーンは5900rpmから)、そこまでは想像以上に回しても楽しいスポーティーなエンジンである。
ただし、ドイツ勢が軒並み8ATを採用している今、ブランニューの新しい2リッターターボに6段ATを組み合わせるにとどまっている点はいささか気になる。6ATでも特に不都合はないのだが、燃費でも「X3」などと比べて平均的であり(JC08モード燃費は12.4km/リッター、FFモデルは12.8km/リッター)、最新モデルとしてはもうちょっと欲張ってほしかった気がする。
しゃっきり、すっきり
“Fスポーツ”は、他のレクサスシリーズと同じく専用の内外装が与えられるほか、ボディーの微振動を速やかに吸収するという前後の「パフォーマンスダンパー」と電子制御ダンパーを標準装備する。その効果なのか、“Fスポーツ”は同時に試乗した300h“バージョンL”(FF)に比べて、軽やかでシャキッとした足取りで走る。おそらく車重の差も大きいのだろうとスペックを確認したところ、このクルマは4WDの上に多数のオプションを装備していることもあって1820kgと、むしろ300h“バージョンL”(1810kg)より重いぐらいだったのだが、ハンドリングの軽快感や切れの良さでは明らかに“Fスポーツ”のほうが上手、さらに乗り心地についても、いかにも重量級の落ち着きの代わりに段差を越えた場合など時にダン、ブルルッと揺れ残りが感じられた300hとは異なり、常にフラットですっきり締まった姿勢を保っていた。
ハンドリングの切れ味を強調するためか、“Fスポーツ”ではメーター中央のディスプレイに油温・油圧に加え、ブースト計と前後左右のGを表示することもできる。SUVでサーキットを走る人もいないだろうから正直どういう場面で有効なのかなと感じたが、いっぽうで「プリクラッシュセーフティシステム」はNXすべての車種でオプション扱いとなる。追加料金は全車速追従クルーズコントロールとセットで6万4800円だが、車両本体価格518万円もするレクサスの最新モデルに、今やプレミアムクラスでは常識ともいえるミリ波レーダー式の衝突回避装備がスタンダードになっていないとは、ちょっと驚きである。「ブラインドスポットモニター」も「パーキングセンサー」や「パノラミックビューモニター」といった別種の装備とセットで約15万円のオプション。どんな理由があるのか知らないが、ドイツ勢と正面から戦う気があるのなら、何だか一昔前のセットオプションに見える手法は早急に改めたほうがいい。
ほんの少しだけ物足りない
猛獣が口を開けたようなグリルと抑揚を強調したボディーサイドはなるほどダイナミックではあるが、ここまで来ると私には自己主張が強すぎてちょっと痛々しくも感じられる。これまでの反省からとにかくアグレッシブであることを目指しているのだろうが、アクの強いものは意外に早く色あせはしないかと心配だ。
インテリアもエクステリア同様、手際よく、そつなく、レクサスらしく緻密な仕上がりだ。ただ基本コンポーネンツは「CT」や「IS」など他のモデルと同じなので、より立体的なデザインではあってもあまり斬新さを感じないというのが正直な感想。さらに言えばスイッチ類の数が多く、簡潔に整理されているとはいいがたい。またジョイスティック式からタッチパッド式となったリモートタッチのコントローラーも私には使いやすいものではなかった。運転しながら、利き腕ではない左指では確実な操作が難しい。もちろん使う人の器用さや習熟度にもよるが、この種のインターフェイスはできるだけドライバーの注意をそらさないものであるべきだ。いまや多数派のダイヤル式コントローラーを採用しないことについて合理的な説明が欲しいところだ。
「RX」よりも日本市場に適したボディーサイズと新しいターボエンジン、それにレクサスの高いビルドクオリティー、と並べると特に弱点はないように思えるNXだが、それでも何となく物足りなさを感じるのは、細かな点で出し惜しみするような姿勢が見えるからだろうか。クルマとしての完成度は十分に高いが、レクサスの反転攻勢のために今必要なのは全力のフルスイングではないだろうか。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
レクサスNX200t“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4630×1845×1645mm
ホイールベース:2660mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:238ps(175kW)/4800-5600rpm
エンジン最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1650-4000rpm
タイヤ:(前)235/55R18 100V/(後)235/55R18 100V(ブリヂストン・デューラーH/L 33)
燃費:12.6km/リッター(JC08モード)
価格:518万円/テスト車=607万7480円
オプション装備:プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール(6万4800円)/クリアランスソナー&バックソナー+パノラミックビューモニター+ブラインドスポットモニター(15万1200円)/レーンディパーチャーアラート+オートマチックハイビーム+カラードヘッドアップディスプレイ(16万3080円)/オーナメントパネル 縞杢(しまもく)(9万3960円)/後席6:4分割可倒式シート(5万4000円)/アクセサリーコンセント(8640円)/パワーバックドア(5万4000円)/おくだけ充電(2万3760円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(25万4880円)/寒冷地仕様(2万9160円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1545km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:267.1km
使用燃料:29.8リッター
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/8.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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