第70回「スバルWRX STI」
2014.10.10 水野和敏的視点このセッティングに異議あり!
年間を通してさまざまなクルマをテストしていると、いろいろな思いが湧き起こってきます。素晴らしいクルマに出会えばもちろんわくわくしますし、さらには、それを造り込んでいる開発者の仕事をしている姿までが浮かんできます。
逆に、自動車メーカーが社会的使命として訴求しなければいけない、安全性確保のための最後の砦(とりで)であるスタビリティーを外してまで、売らんがための「瞬間の味付け」に過度に走ったクルマに乗ると、本当にがっかりします。正直な気持ちを言えば、がっかりを通り越して、お客さまのことを思うと怒りが込み上げてきてしまうケースもあります。
社内の「発売移行の会議」に通ったからよい、というのではありません。目の前にはいないお客さまのために、「安全と楽しさ」というややもすると矛盾する性能を常により高いレベルに向上させ続けることは、自動車エンジニアとしての永遠のテーマであり、使命だと思うからです。
熱心なスバルファンの方々には申し訳ないのですが、私は新しい「WRX STI」に初めて試乗したとき、信じられず、そして戸惑ってしまいました。なぜなら、従来の「インプレッサWRX」「レヴォーグ」「BRZ」、そして「WRX S4」と、最近のスバル車のハンドリングバランスのよさとスタビリティー限界性能の向上は、目を見張る進化を続けてきましたが、WRX STIはそれらとは違っていたからです。
以前この連載で、同じくSTIが手がけたスポーツモデル「スバルBRZ tS GTパッケージ」を取り上げました。ステアリングホイールを握って走りだしたとたん、開発者の姿が浮かんできて、「これはニュルブルクリンクしか見ていないな」と、思わずいい意味で笑ってしまうような、作り手の熱意がひしひしと伝わってきたことを思い出します。個性的だけど、しっかり筋が通ったクルマでした。
ところが新しいWRX STIはどうでしょうか? 同じスバルバッジを付けたクルマとは思えないくらいハンドリングが異なっています。失礼を顧みず申し上げるなら、前と後ろのサスペンションの動きに一体感がないのです。このWRX STIのセットアップに対して、「なぜ? 何でこうしたの?」と、私の頭の中は疑問符だらけになってしまいました。
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