スバルWRX STI Type S(4WD/6MT)
そろそろ大人に 2014.10.30 試乗記 スバル自慢のスポーツモデル「WRX STI」。街中や高速道路、ワインディングロードなど、さまざまなシチュエーションでの試乗を通して感じたこととは?サーキットではないのだから
最初の数kmを走っただけで筆者は、そのハンドリングに「うぐっ……」となってしまった。ステアリングを切り始めた“一舵(いちだ)”目。その安易にクイック過ぎるフロントサスペンションの反応に、ちょっと戸惑ってしまったのである。
ステアリングのギア比は13:1。特に違和感のなかった先代の限定モデル「WRX STI tS TYPE RA NBR CHALLENGE PACKAGE」(舌をかみそうだ!)に比べ、この新世代「WRX STI Type S」が、さらにクイックなレシオを持っているわけではない。
ジオメトリー的な問題もあるのだろうが、端的に言えばこれは、Type Sに装着されるダンパーとスプリングの特性に、まずひとつ目の原因があると思う。簡単に言うと伸び/縮みのバランスが悪い。縮み側の減衰力が足りないのか、ステアリングを切った途端に“へコッ”とノーズが入るのだ。
もっともスバルがこうしたい理由はわかる気がする。308psもの出力に対してドライバーが安心できるだけのスタビリティーを与えなくてはならない一方で、時代は乗り心地の硬さを許さないからだ。だから縮み側の減衰力を弱めることで、突き上げを減らしたのだろう。その分スタビリティーは、伸び側の減衰力で確保しているようである。
またこれは、“真っ平らな”サーキットではよく用いられるセッティングでもある。バンプ(縮み)側でダンパーが突っ張らないようにすれば、ブレーキングでフロントタイヤに荷重を穏やかに掛けることができる。ターンインしてからはイン側のサスペンションをゆっくり伸ばすことで、内輪の接地性を確保できる。
しかしこうしたセッティングは、ストリートでは合わないと思う。
うねりが多い路面をこの仕様で走ると、「へコッと入り、引き戻されて、へコッと入り……」を繰り返し、車体が安定しない。また、スプリングレートがそれなりに高いこともあって、ドライバーの目線も定まらず、不快感が増す。