MINIクーパー 5ドア(FF/6AT)
強い個性はそのままに 2014.11.06 試乗記 便利になってもやっぱり「MINI」? ハッチバックモデルに新たに加わった「MINI 5ドア」の走りの実力と、気になる後席の実用性を試す。「便利なMINI」と言われても……
試乗会会場で初めて見たMINIの5ドアの第一印象は、ぬかみそ臭くなったなぁ、というものだった。生活感が出た。3ドアのMINIが炊事とか掃除をしている姿は想像できないけれど、5ドアのMINIは毎日、ぬか床をひっくり返していそうだ。
そもそも車は家事なんてしない、という突っ込みはごもっともです。でも、普段の生活からすぱっと切り離されて、デザインやゴーカートフィーリングとかの非日常を味わえるところがMINIの良さだと思っていた。だから、5ドアだから後席へのアクセスがよくなりましたとか、荷物が載るようになりましたとか、そんな当たり前の便利さが加わってもなぁ、と鼻白む思いがあるのも事実だ。
MINIはちょっと不便だからこそかっこいいのではないか、という感情論はひとまずおいといて、この春にフルモデルチェンジを受けたMINIに加わった5ドアモデルは、1.5リッターの3気筒ターボを積む「クーパー」と、2リッターの4気筒ターボを積む「クーパーS」の2グレード展開となる。どちらもトランスミッションは6段ATで、3ドアには用意される6段MTの設定はない。
今回試乗したのは、298万円の「MINIクーパー 5ドア」。ただし衝突回避・被害軽減ブレーキ機能やアクティブ・クルーズコントロールなどの安全装備を含むドライビングアシスト(11万4000円)や、電動パノラマ・ガラスサンルーフ(14万円)など、総額167万5000円(!)のオプションてんこ盛りの試乗車の価格は465万5000円。実際に買う時にここまでオプションを装着することはないにしても、いいお値段だ。
と、ああだ、こうだ言いつつ走りだすと、MINIそのものだった。3ドアと変わらない。大体において、運転席に座って前を向いて運転している限り、増えた2枚のドアは見えない。
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重さのネガは感じない
1.5リッターの3気筒ターボは、はじけるようなレスポンスが持ち味だ。踏めばパンっと反応して加速する。駐車場の中をはいずりまわるような場面では「ホロロロッ」という音と振動で3気筒を意識させるけれど、それ以外、つまり少しでも車速とエンジン回転が上がれば、3気筒という言葉から想像する安っぽさはない。
高速域でのパワーも十分で、登り勾配であろうと力強く加速する。車重は1260kgと、3ドア版のMINIクーパーより90kg重くなっているけれど、重量増のハンディを感じさせない。
試乗車にはオプションの「MINIドライビング・モード」が装着されていて、シフトセレクター根元のダイヤルで「スポーツ」「ミッド(ノーマル)」「グリーン(エコ)」の3つのモードを選べる。ここで「スポーツ」を選ぶと、変速パターンやアクセル操作に対するレスポンスがぐぐっとスポーティー方向に振れて、ホットハッチと呼びたくなる熱を帯びる。
限られた試乗時間では、正直「ミッド」と「グリーン」の違いが曖昧だったこともあり、愉快な「スポーツ」で通した。
乗り心地に関しては、このサイズに見合わないがちっとした剛性感が印象的だった。単純に硬いというのとはまた違って、最新の「ポルシェ911」のように快適なのにしっかりしている。
ただしこれには少し説明が必要で、試乗した個体はダイナミック・ダンパーコントロールという可変ダンパーに17インチ(タイヤサイズは205/45R17)のホイールというオプションを装着していた。ノーマルのサスペンションに標準の15インチタイヤという組み合わせは試していないので、あくまでこの仕様に限っての印象である。
庶民的でかわいらしい?
驚いたのは、俊敏な身のこなし、いわゆるゴーカートフィーリングが一切損なわれていなかったことだ。5ドア化にあたって、ホイールベースで70mm、全長で165mm長くなっているけれど、動きの質がヌルくなることはなかった。
ステアリングホイールを切った瞬間に、車がひとつの塊になってくるっと向きを変える。ダイレクトなステアリングホイールからの手応えも、3ドアと変わらない。
スペックから、5ドアは少し乗り心地がよくなって、動きも穏やかになると予想していたけれど、そうではなかった。ただドアが増えただけで、性格は変わっていない。
ひと通り試乗をしたところで、前席のシートポジションを身長180cmのドライバーに合わせた状態で後席に座ってみる。後席へのアクセスが3ドアと比較にならないほど容易なのは当然として、乗車定員が3ドアの4名から5名になっていることもこれまでMINIの購入をためらっていた人の背中を押すだろう。
前席バックシートの背後の部分がえぐられていて、後席住人の膝まわりのスペースに余裕を持たせている。結果、後席には脚がどこかに触れることなく座れるスペースが確保されている。つま先は、前席シートの下に潜り込ませる形になる。
ただし後席シートのバックレストが立っているので、くつろぐというわけにはいかない。長距離ドライブはちょっと厳しいかもしれない。
興味深いのは、ホイールベースを延ばして5ドアとするにあたって、スタイリングが間延びしないようにテールゲートを3ドアより寝かせたということだ。こうすることで、キャビンを小さく見せる効果があるという。5ドアにすると格好悪くなっちゃうというのは、デザイナーも承知の上なのだ。
それでも試乗を終えて、MINIの楽しさが変わっていないことを実感すると、言われてみればそれほどヘンじゃないかも、と思えるようになってきた。いやむしろ、このちょっと胴長で、スタイルが悪いぐらいが庶民的でかわいいのではないか。MINIの5ドア化に懐疑的な自分をしてそう思わしめるあたり、やはりキャラが立っている車は強い。
(文=サトータケシ/写真=森山良雄)
テスト車のデータ
MINIクーパー 5ドア
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4000×1725×1445mm
ホイールベース:2565mm
車重:1260kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/4300rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88W/(後)205/45R17 88W(ダンロップSP SPORT MAXX RT DSST)
燃費:17.9km/リッター(JC08モード)
価格:298万円/テスト車=465万5000円
オプション装備:ダイナミック・ダンパーコントロール(7万7000円)/マルチファンクション・ステアリング(4万5000円)/17インチ・アロイホイール ルーレットスポーク 2トーン(20万2000円)/コンフォートアクセス(4万5000円)/ブラック・ボンネットストライプ(1万7000円)/クロームライン・インテリア(2万4000円)/ビジビリティーパッケージ(3万9000円)/リアビューカメラ(3万9000円)/電動パノラマ・ガラスサンルーフ(14万円)/アームレスト(2万4000円)/ETC車載器システム内蔵自動防眩(ぼうげん)ルームミラー(6万9000円)/ストレージ・コンパートメント・パッケージ(2万6000円)/カラーライン<サテライトグレー>(1万5000円)/MINIエキサイトメント・パッケージ(3万9000円)/MINIドライビング・モード(2万9000円)/ライトパッケージ(2万4000円)/LEDヘッドライト+LEDフロントフォグライト(12万5000円)/ドライビングアシスト(11万4000円)/パーキングアシスト・パッケージ(12万3000円)/ヘッドアップ・ディスプレイ(5万8000円)/シートヒーター<フロント>(4万5000円)/クロス・レザー<サテライトグレー>(14万9000円)/ナビゲーションパッケージ(17万8000円)/メタリックペイント<ムーンウォーク・グレー>(2万9000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:395km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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