メルセデス・ベンツB250 4MATIC(4WD/7AT)
迎撃準備完了 2014.11.26 試乗記 メルセデス・ベンツのコンパクト・ピープルムーバー「Bクラス」がフェイスリフトを受けた。その内容は外装の部分的な変更にとどまらず、内装のアップグレードに安全装備の拡充と多岐に及んでいる。「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」を迎え撃つ態勢はこれで万全か? 2リッターのガソリンターボエンジンを搭載する「B250 4MATIC」に試乗した。内も外も最新モードへ
マイナーチェンジが施された「メルセデス・ベンツBクラス」にスペインのマヨルカ島で乗ってきた。
マイナーチェンジといっても、姿カタチは画像をご覧になっての通り。2012年に導入された、いわゆる第2世代のBクラスとほとんど変わらない。というか、真横から見たら区別がつかない。でも、グルッと回って見てみると、LEDヘッドライトが採用されていたり、フロントバンパーとその下のエアインテークの形状が改められていたり、リアバンパーの形状も変わっていたりする。
どちらのバンパーのデザインも、「GLAクラス」や「Cクラス」などと共通する各ディテールの彫りが深く陰影を強く導き出している、最新のメルセデス・ベンツ特有のものだ。
内容面においては多くの改変が積み重ねられている。まずインテリアでは、ディスプレイモニター画面の大型化、ステアリングホイールやメーターパネルのデザイン変更などが挙げられる。
目で見て確認しづらい部分としては、安全装備の拡充がある。ドライバー支援システムとして、CPAプラス(コリジョン・プリベンション・アシスト・プラス)では、追突のリスクを軽減する自動パーシャルブレーキング機能が搭載された。
また、標準装備のアテンションアシストにも改良が加えられ、動作速度域が60km/hから200km/hに拡大されたとともに、ドライバーの現在の注意力レベルを示す5段階棒グラフの表示が取り入れられた。
並列駐車にも対応するアクティブパーキングアシストやキーレスゴーなどの初採用もある。細かいところでは、パーキングアシストビューの、視野角度の180度までの拡張なども含まれる。COMANDシステムの刷新や車内でのWi-Fiテザリング対応などもある。
このように、目立たないが、現行のBクラスのオーナーならば真っ先に気付くだろう実質的で有益な改変が「B250 4MATIC」にはいくつも盛り込まれている。
乗り心地が劇的に改善されたワケ
そして、現行のBクラスオーナーが真っ先に気付く違いといえば、乗り心地が劇的に改善されていることだろう。現行型の、サスペンションストロークが短くピョコピョコと細かく跳ねるような硬い乗り心地が消えうせ、フラットで、細かなショックも強いショックも柔らかく吸収する快適な乗り心地が実現されていた。ちょっと驚かされた。
サスペンションが大きく改められてはいないから、この劇的な乗り心地の改善の理由として考えられるのはタイヤではないか。
試乗したB250 4MATICは、現行のランフラットタイプではなくノーマルタイヤを履いていた。開発担当者に確認すると、ヨーロッパではノーマルタイヤが標準で、ランフラットはオプションとのこと。
現行の日本仕様のBクラスにはすべてランフラットが設定されていたから、マイナーチェンジを機に日本でもヨーロッパのようにノーマルタイヤを選べるようになればいいと、オーナーでもないのに切に願った次第である。おのおのにメリットとデメリットが存在するが、選べられることこそプレミアムの証しになると強く思った。
「広い車内、そして機敏性と快適さが自慢です」
マヨルカ島では、メルセデス・ベンツの開発担当取締役のトーマス・ウェーバー博士が運転するB250 4MATICに同乗してインタビューすることもできた。アドリアーノ港から出発して郊外の小高い山々を回ってきた。まず、最も開発で力を注いだ点について聞いてみた。
「コンパクトなボディーサイズでありながら、広い車内空間を持っていること。機敏な操縦性と快適性の両立。高い安全性と豊富な装備を有していることもBクラスのアドバンテージだ。特に、今回の改変ではドライバー支援システムを追加した」
ウェーバー博士はハンドルを握りながら、冗舌に語った。現在、コンパクトメルセデスには「Aクラス」「Bクラス」「CLAクラス」「GLAクラス」と4モデルが存在しているが、今年の12月中に5番目のモデルの姿が発表されると教えてくれた。大サービスである。
「『CLAシューティングブレーク』です。ステーションワゴンでありながら、エモーショナルなデザインが特徴のクルマになる」
CLAシューティングブレークは、ちょうど「CLSシューティングブレーク」の弟分のようなクルマになるという。
EVと天然ガス車のバリエーションも
コンパクトメルセデスは5モデルで完結するが、モデル内でさらなる充実が図られることも教えてくれた。
「ここにも持ってきている、Bクラスをベースとした電気自動車(EV)と天然ガス車だ。さまざまなエネルギーに対応できるようにバリエーションを広げる」
そのBクラスベースのEVにもこの後に試乗したが、車内空間の広さを損なうことなく5人乗りを実現している点が光っていた。
メルセデスのEVというと初代Aクラスの「ダブルフロアコンセプト」が思い出されるが、それはこのBクラスEVの「パーシャルダブルフロアコンセプト」に継承されているのだという。初代Aクラスのように、床の全面が二重底になっているのではなくて、リアシート下の空間を二重にして、そこにバッテリーを収めてある。ヨーロッパでは2015年に導入されるが、日本へは「さらに先」とのことだ。
BMWも2シリーズ アクティブツアラーによって、このプレミアムコンパクトセグメントに参入してきて沸騰しかけている。マイナーチェンジが施されたBクラスはそれを万全の構えで迎え撃つことになった。スポーティーな操縦性とフィーリングでは2シリーズ アクティブツアラーに分があるが、快適な乗り心地と安全装備の充実ではBクラスが勝っていると思う。
(文=金子浩久/写真=ダイムラー)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツB250 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4393×1786×1562mm
ホイールベース:2699mm
車重:1505kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)225/45R17/(後)225/45R17
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

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