スバル・レガシィアウトバック リミテッド(4WD/CVT)
もっと遠くへ 2015.01.14 試乗記 「ツーリングワゴン」がベースの派生モデルという出自でありながら、今や「レガシィ」シリーズの主軸を担うまでに成長を遂げたクロスオーバーSUV「レガシィアウトバック」。新型の実力を、上級グレードの「リミテッド」で試した。ラインナップの主役はこちら
2014年秋にフルモデルチェンジを受けたスバル・レガシィシリーズについて簡単におさらいをすると、ツーリングワゴンが廃止されてセダンの「B4」とクロスオーバーSUVのアウトバックの2本立てとなった。
パワートレインは2.5リッター水平対向4気筒自然吸気エンジンとリニアトロニック(CVT)の組み合わせのみの一本勝負。駆動方式は全車アクティブトルクスプリットAWD(四輪駆動)となる。
ボディーは従来型からひとまわり大型化。今回試乗したアウトバックは、全長は25mm長くなって4815mm、全幅は20mm広がって1840mmとなった。
この全長×全幅=4815mm×1840mmというサイズは、「メルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴン」の4705mm×1810mmと同「Eクラス ステーションワゴン」の4910mm×1855mmの中間ということになる。ちなみにレガシィの弟分たる「レヴォーグ」は、4690mm×1780mmだ。
2009年に5代目たる先代モデルが登場した時には、ボディーの拡大に対して「こんなに太ったレガシィはレガシィじゃない」という声があがった。けれどもスバルは国内専用ワゴン「レヴォーグ」を出すことでそうした声を封じ、販売台数の75%を占める北米市場で戦うべくレガシィのボディーを大きくした。
ちなみに北米でのアウトバックとB4の販売比率は2:1とのことであり、つまり現時点でのレガシィの主軸モデルはこのアウトバックということになる。
サイズ拡大の効果ははっきりしており、乗り込んで真っ先に感じるのがその広さだ。インテリアがシンプルであることと、そのデザインが運転席から助手席に向かって水平方向に展開していることも、スペースに余裕があると感じさせる一因となっている。
後席も足元、頭上ともに空間たっぷり。身長180cm級の大人4人が乗り込んでも、息苦しさを感じずに移動できる。
スバル伝統の水平対向エンジンを始動して走りだすと、その乗り心地に「オッ」と思わされた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗り味はドイツ車的
乗り心地は、めっぽうしなやかとかソフトというわけではなく、路面からのショックはそれなりに伝わってくる。それでも不快だと感じないのは、ボディーの揺れが一発で収束するからだ。だから乗り心地がやわらかいわけではないのに、滑らかな走行感覚が得られる。ボディーががっちりしていることと合わさって、ドライバーは、車体が一丸となって突き進んでいる印象を受ける。この「それなりに硬さを感じさせるけれど、フラットで滑らか」なライド感覚は、最近のアウディに似ている。
試乗した「アウトバック リミテッド」は、「スタブレックス・ライド」と呼ばれるKYB製の油圧ダンパーを備えると同時に、タイヤサイズも225/60R18へとインチアップされる(ノーマルは225/65R17)。
同条件でノーマルと比較していないので断言はできないが、このダンパーとタイヤがドイツ車的な足まわりの剛性感につながっているのは間違いないだろう。
背高ボディーの外観から期待はしていなかったけれど、このモデルは「曲がり」も苦にしない。ロール(横方向への傾き)は適度に抑えられていて、ステアリングが正確だから曲がりたい方向へぴたっと向きを変える。
ただしワインディングロードでがんがん走るという気持ちにはならなかった。その理由はシャシーにではなく、パワートレインにある。
エンジンを上まで回すと、アクセル操作に対する反応がワンテンポ遅く感じられるからだ。随分とよくはなっているものの、まだCVT独特の「エンジン回転が先に上がって、後からスピードがついてくる」感覚が残っている。
この鈍さは、SI DRIVEスイッチで「Iモード」「Sモード」「S♯モード」を切り替えても変わらなかった。
ちなみに、エンジン回転が3000rpm以下の領域ではこの“CVT臭”は感じられず、あくまで高回転域に限った話である。
ツインクラッチ式であれトルクコンバーター式であれ、スムーズでレスポンスが鋭い最近のトランスミッションに慣れた体には、やや気になる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
地味だけど賢い
といった具合に気になる点はあるものの、1日付き合っているとだんだんこのクルマが好ましく思えてくる。エンジンを高回転域まで回すような走り方は普通はしないから、通常の走り方であればその美点だけを味わえるのだ。
しかもアウトバックというのは峠道でガン走りをするためではなく、遊び道具やスーツケースを満載して遠くを目指すためのモデル。この車の性格は、そんな使い方に合っている。
丸1日乗っていると、ほかにもいろいろと見えてくる。例えば素っ気ないと感じたインテリアも、落ち着いた雰囲気で使い勝手がいいし、運転席シートも上出来だ。見かけはフツーの形状であるけれど、背中から臀部(でんぶ)にかけて、ふんわり包み込むようにサポートする。フラットな乗り心地とあいまって、長距離、長時間のドライブが苦にならないどころか楽しくなる。
ver.3へと進化した「アイサイト」のステレオカメラはカラーとなり、前車のブレーキランプを認識できるようになったほか、アクティブレーンキープといった新しい機能が加わった。
高速道路で全車速追従機能付きクルーズコントロールを作動させて、ヒザを打った。この車は、こういう使い方が一番似合っているのだ。滑らかに加減速をしながら、前の車についていく。前述したように、高速道路の乗り心地は快適だから、アクセルを踏んだり戻したりするのとは違う、新しいファン・トゥ・ドライブがある。
このクルマは、賢くて足の速い、乗り心地のよいラクダのようだ。サラブレッドのように派手ではないけれど、ドライバーの体に負担をかけず、快適に遠くまで連れて行ってくれる。
そういう目で見ると、高い位置にステレオカメラの目がふたつある点や、実直なインテリアもラクダに似ていると思えてくる。
幅が広いから日本中どこでも使い勝手がいいとは言えないけれど、「私を遠くまで連れて行って」という使い方にはマッチする。
(文=サトータケシ/写真=向後一宏、webCG)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
スバル・レガシィアウトバック リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4815×1840×1605mm
ホイールベース:2750mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:175ps(129kW)/5800rpm
最大トルク:24.0kgm(235Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/60R18 100V/(後)225/60R18 100V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:340万2000円/テスト車=381万2400円
オプション装備:ハーマンカードンサウンドシステム&SDナビゲーション<CD/DVDプレーヤー&AM/FMチューナー>+専用12スピーカー<センタースピーカー、サブウーファー付き>+サンルーフ(41万400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2343km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:115km
使用燃料:11.0リッター
参考燃費:10.5km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。































