トヨタ・アクアG“G’s”(FF/CVT)
「ちょい悪ダウンサイジング」の受け皿 2015.02.20 試乗記 ベストセラーのハイブリッドコンパクトカーをベースに、トヨタ自らスポーティーな味付けを施した「アクア“G’s”」。その走りの実力を試した。オートサロンで人を呼べる
2013年に続いて14年も、白いナンバーで日本一売れたクルマが「アクア」だった。今や国民車といってもいいくらいのベストセラー車にカフェレーサー風の個性を与えたのが、トヨタ純正のスポーツコンバージョン車「G’s」である。アクアなのに、東京オートサロンでギャラリーを集められるのもこれだ。
専用のスポーツサスペンションを備え、車高は25mmローダウン。ひと目でG’sとわかるブラックマスクのボディーは、補強ブレースの新設やスポット溶接の打点追加などで剛性強化も図られている。
そのほか、昼なお明るいフロントのLEDビームや専用の前後バンパーなどを備え、室内ではアルカンターラを使ったスポーツシート、革巻きのステアリングホイールやシフトノブが目をひく。その一方、パワーユニットに手を加えないのは、現在6モデルを数えるG’sシリーズに共通の特徴だ。うたい文句は「SPORTSCARS for ALL」。“すべての人”のためだから、そこまではハジけないのである。
価格は237万7963円。一番高いフツーのアクア、「Gブラックソフトレザーセレクション」より約34万円高い。
やんちゃな外観に見合った足まわり
アクアにG’sが出たのは2013年11月である。しかし、筆者の場合、乗ったのはこれが初めて。善男善女のコンパクトハッチから大変身を遂げた外観をじっくり見るのも初めてだった。
『webCG』の駐車場をスタートしたのは早朝で、まだ眠かったため、編集部の若手H君に運転をお願いして、まずはリアシートに乗る。
屋根がスロープしているため、頭上空間は潤沢ではないが、コンパクトなサイズのわりにリアシートの足もとは広い。別の機会に、アクア、「マツダ・デミオ」「日産ノート」「フォルクスワーゲン・ポロ」を集めて比較テストしたところ、意外やアクアのレッグルームは、断トツにだだっぴろいノートに次いで広かった。
G’sだってそこはまったく同じだが、さすがに乗り心地はスポーティーである。どちらかというとやわらかめのノーマル・アクアに比べると、脚の硬さは歴然だ。高速道路の継ぎ目などでは突き上げを食らうことが多い。継ぎ目にも程度があって、ひどくズンッと来たときには「おっと、スイマセン」と運転席のH君があやまった。
しかし、あとで確認すると、乗り心地は前席のほうがいい。この日はあいにく一日中強い雨で、ハンドリングセクションで限界性能を試すようなことはできなかったが、スポーツサスペンションは間違いなくふだんの身のこなしをキビキビさせているし、脚だけでなく、ボディーも固められているから、不快な硬さではない。やんちゃな外観に見合った足まわりともいえる。
ただ、6.5Jの17インチホイールに195を履くためか、ステアリングが切れなくなったのが気になった。ちなみにノーマル・アクアの標準のホイールセットでは、15インチホイール+175である。G’sの最小回転半径値は5.8m。Uターンするときに思いのほか小回りがきかなくて、アレっ!? と感じたことが2回あった。
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パワーユニットに手を付けないのがトヨタ流
もはや「熟成」の域に到達した1.5リッターハイブリッドユニットはノーマル・アクアとまったく同じである。
冷間時を除くと、スタートボタンを押してもまずエンジンはかからない。つまり「すでにEV」である。停止寸前には、電車っぽい回生ブレーキのヒューン音がけっこう出る。そうした「ハイブリッド感」もちゃんと感じさせながら、かといって、不快な違和感は一切与えない。機械として洗練されている。
踏んでゆけば、エンジン+モーターのフル加速はけっこう速い。そもそもトヨタのハイブリッドが遅かったのは、高速巡航を続けると亀の子マークが点灯した初代「プリウス」の初期モデルだけである。ハイブリッド印のトヨタ車が信号スタートからなかなか加速しなかったり、高速道路の低速レーンをフル荷のトラックよりゆっくり走っていたりしたら、それはクルマじゃなくて、ドライバーが遅いのである。
それにしても、これだけハイブリッドを出しているのに、あとからハイパワーモデルを出すことは決してしない。「ホンダCR-Z」にあるような、ボタンひとつで加速性能がアップします的な仕掛けもやらない。個人的にはやったらいいのにと思うが、ここまでやらないと、そんなトヨタ・ハイブリッドの流儀にはむしろ感心もする。
今回の燃費は18km/リッター台だった。純エンジン車のコンパクトカーでも、例えば「フォルクスワーゲンup!」ならこれくらい走りそうだが、up!に興味を持つ層とアクアG’sのそれはバッティングしないだろう。
高速道路を走っていると、ちょっとローダウンして派手なアルミホイールを履かせた黒い「クラウン アスリート」が追い越し車線を追い上げてきた。ピューっと行くのかと思ったら、G’sの斜め後ろにつけて、しばらくロックオンされた。「ダウンサイジングするなら、こいつかな」。中のドライバーのひとりごとが聞こえてくるような気がした。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
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テスト車のデータ
トヨタ・アクアG“G’s”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4055×1695×1430mm
ホイールベース:2550mm
車重:1110kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:74ps(54kW)/4800rpm
エンジン最大トルク:11.3kgm(111Nm)/3600-4400rpm
モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:61ps(45kW)
モーター最大トルク:17.2kgm(169Nm)
タイヤ:(前)195/45R17 81W/(後)195/45R17 81W(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:--
価格:237万7963円/テスト車=290万3005円
オプション装備:195/45R17タイヤ<ブリヂストン・ポテンザRE050A>+17×6.5J G’s専用アルミホイール<ダークスパッタリング>(6万4800円)/SRSサイドエアバッグ<運転席・助手席>+SRSカーテンシールドエアバッグ<前後席>(4万3200円)/スマートエントリーパッケージ<スマートエントリー&スタートシステム+盗難防止システム+コンライト>(5万5080円)/ビューティーパッケージ<「ナノイー」+運転席・助手席シートヒーター+IRカット機能付きフロントドアグリーンガラス>(3万4560円)/アドバンストディスプレイパッケージ<TFTマルチインフォメーションディスプレイ+タッチトレーサーディスプレイ+ステアリングスイッチ>+ナビディレイパッケージ<バックカメラ+6スピーカー>(7万6680円) ※以下、販売店オプション 工場装着用バックカメラ用ガイドキット(1万1880円)/スタンダードナビ(15万120円)/G’s専用フロアマット(2万3760円)/ETC車載器(1万7442円)/G’s専用ボディーストライプ<メタルストライプ+G’s専用ロゴ>(1万8360円)/G’s専用ホイールデカールキット(9720円)/G’s専用LEDアクセントライト<運転席+助手席>(1万9440円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1123km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:364.3km
使用燃料:19.6リッター
参考燃費:18.6km/リッター(満タン法)/19.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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