プジョー508SWグリフ(FF/6AT)
驚きの変わりっぷり 2015.05.12 試乗記 プジョーのフラッグシップモデル「508」がマイナーチェンジ。果たして、最新型の実力は……? ワゴンの上級モデルに試乗してわかった、走りや乗り心地を報告する。お化粧直しは効果絶大
プジョー508は、日陰にそっと咲くひなげしの花だった。私は508の兄弟車である「シトロエンC5」の元オーナーだが、あの時508には目もくれなかった。
まずデザインがヌメッと正体不明すぎた。特におしゃれでもなく高級でもなくアーティスティックでもない。パワートレインはC5と共通でBMW系の1.6リッター直噴ターボ+アイシン製の6段トルコンATで申し分なかったが、乗り心地が妙に硬く、かつてのプジョーらしい猫足などどこへやら。特に17インチタイヤを履いた上級グレードは、「これっていったい何のため?」というような硬さで、ほとんど何もウリがない大型セダン&ワゴンになってしまっていたのである。
一方のC5は、超絶おしゃれなエクステリア&インテリアと、絶滅危惧種であるハイドラクティブの足まわりがあり、その差はあまりにも巨大だった。
そのプジョー508がマイナーチェンジを受けたわけだが、第一印象は悪くない。まずあのヌメッとしたとりとめのないデザイン、特に顔つきが、ヘッドライトやグリルの形状変更&加飾でかなり引き締まった。やはりクルマは顔が命。顔が悪いとその時点であらゆる評価が下方修正されてしまうが、顔が良ければすべて好意的になってくる。申し訳ありません。
室内の高級感も微妙に増している。ドライバーから見ると、目の前に設置されたヘッドアップディスプレイがまず高級だ。え、これは以前からあったんですか? スイマセン、記憶にありません。印象の下方修正でしょうか。その他、室内の装備はこのクラスとしては標準的で、特にこれ、というものはないが、落ち着いたおしゃれ感はプジョーのフラッグシップにふさわしい。
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数値以上に“味”が違う
そして508SWのラゲッジの広さ、特に左右幅は、同クラスのドイツ勢を確実にリードしている。
私はC5を買う時、セダンかツアラー(ワゴン)かで迷ったが、当時は特にアウトドア趣味もなかったので、つい全長の短いセダンを選んでしまった。ツーリングにしておけば今でも乗っていたかもしれない。無念である。508も、せっかくフランス製の大型車を買うのだから、セダンよりSWを選択しておいた方が、あとあとメリットは大きいだろう。
エンジンは小変更を受け、最高出力が156psから165psに向上している。数値的にはわずかだが、フィーリングはかなり違う。ピックアップが向上して以前よりかなりスポーティーになっている。特に上まで回転を引っ張った時は明らかに元気だ。
以前の156ps仕様は、ダウンサイジングターボらしく低中回転のトルクが厚く、実用性は非常に高かったが、ドライビングプレジャーには欠ける面があり、それが原因で思ったよりずっと早く飽きがきてしまった。ダウンサイジングターボは実用性だけじゃダメ! やっぱり楽しくないと。そのためにはスポーティーなフィールが必要だ。今回の165ps仕様なら多分大丈夫だろう。
燃費も向上している。街中ではアイドリングストップが威力を発揮し、巡航燃費も微妙に改善されているようだ。今回の試乗でも、トータルでリッター13km/リッター近く走ったことを見ていただければ、その経済性は理解してもらえるだろう。このサイズでこの数字はちょっとすごい。
「魔法のじゅうたん」を思わせる
そして足まわり。「キャット・イズ・バック」という感じである。あ、これはジャガーのコピーでしたね。でも猫足が確実に戻ってきている。試乗車は17インチタイヤ装着だったが、以前とは比べ物にならないほどしなやかで乗り心地がイイ。
実はマイチェン前の508も、途中から足の硬さは解消されていたらしいという情報もある。というより、あんなにガチガチだったのは超初期ロットだけだった可能性が高い。
どうも近年のプジョーは、超初期ロットのデキが悪いケースが続いていて、つい印象が悪くなってしまうが、なんとかならないものか。定期的に追跡調査しているわけじゃないので、最初の試乗会で乗った個体がメタメタだと、印象はずっとメタメタのまま。困ったものである。
とにかく、マイチェン後の新型508の乗り味はスバラシイ。C5のハイドラクティブじゃなくても、魔法のじゅうたん感が味わえる。これならC5はいらない――と言ったら語弊があるが、508の方が40万円ほどお安いので、お買い得感はありますね。
手放しでは喜べない
細かいところに不満点はある。例えば、FMラジオの入りが驚くほど悪かったりする。神奈川県内だとJ-WAVEやTokyo FMはまったく入らず、FMヨコハマが辛うじて聞けるか聞けないかなのだからすごい。日本のラジオ電波に対応したアンテナの設置ができていないのだろう。それとも個体差だったりして?
安全装備も物足りない。今どきこのクラスで自動ブレーキの設定は皆無だし、クルーズコントロールも前車追従型はなくベーシックな速度設定型。ほとんどコンパクトカーレベルだ。
もうひとつ怖いのが、手放す時である。値落ちの大きさは覚悟する必要がある。私はシトロエンC5で辛酸(しんさん)をなめました。買ったディーラーに行ったら、C5セダンの中古ばかり並んでて、「困っちゃってるんですよ~」。提示された下取り価格は目の前が真っ暗になるレベルだった。ただし、ワゴンならかなりマシなはず。そちらを考えてもSWがオススメです。
いやいや、一生添い遂げれば下取りなんて関係ありませんでした! 買う前から下取りのことなんか考えちゃいけません! ホントにどうもスイマセン。
(文=清水草一/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
プジョー508SWグリフ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1855×1505mm
ホイールベース:2815mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:165ps(121kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17 98W/(後)215/55R17 98W(ミシュラン・プライマシーHP)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:462万1000円/テスト車=469万1200円
オプション装備:メタリックペイント<アルタンス・グレー>(7万200円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:4414km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:298.0km
使用燃料:23.8リッター
参考燃費:12.5km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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