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メルセデス・ベンツCLA180シューティングブレーク スポーツ(FF/7AT)/CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク(4WD/7AT)

ニッチに見えてメジャー 2015.07.15 試乗記 清水 草一 コンパクトなハッチバック「Aクラス」と多くのメカニズムを共用する、メルセデス・ベンツの新型ワゴン「CLAシューティングブレーク」。試乗してみると、ほかのクルマとは異なる、このクルマならではの強みが見えてきた。

メルセデスのは、ほかのと違う

シューティングブレークというボディータイプは、われわれ日本人とは最も縁遠い気がする。なにしろわれわれは狩猟をしない。江戸時代は肉食が禁忌とされ、イノシシも山鯨と言い換えて食べたくらいの純農耕民族である。そんなわれわれが、猟銃を積むためのクルマにピンとくるはずがない。

私がシューティングブレークというボディータイプがあることを知ったのも、そんなに昔のことではない。「アストンマーティンが英国貴族のリクエストに応えてシューティングブレークを作ったのが始まり」と聞いて写真を見たら「ナニコレ!?」。英国貴族はなんでわざわざこんなカッコ悪いクルマを作らせたんだ、と思ったものだ。
近年ではフェラーリの「FF」。シブイとは思うが、生理的に受け付けない。どうやら2ドアのステーションワゴンという存在が、未熟な私の脳に拒絶反応を起こさせるようだ。

が、「CLSシューティングブレーク」は違った。あれは4ドアだし、全体にとても流麗で、ボディー後部が少し盛り上がっていても全然不自然じゃない。ラゲッジのぜいたくなウッドフロア(オプション)を含め、退廃的なエレガンスが強調されていて、いかにも生活に余裕のある人が乗りそうじゃないか。つまり4ドアならシューティングブレークもOKなのだ。あくまで私の脳内の価値基準ですが。

試乗会場に並んだ、さまざまな仕様の「CLAシューティングブレーク」。同モデルは、日本では2015年6月にデビューした。
試乗会場に並んだ、さまざまな仕様の「CLAシューティングブレーク」。同モデルは、日本では2015年6月にデビューした。 拡大
インテリアの様子。写真は「CLA180シューティングブレーク スポーツ」のもので、レッドステッチ入りの本革巻きステアリングホイールやブラッシュドアルミニウムのインテリアトリムなどでドレスアップされている。
インテリアの様子。写真は「CLA180シューティングブレーク スポーツ」のもので、レッドステッチ入りの本革巻きステアリングホイールやブラッシュドアルミニウムのインテリアトリムなどでドレスアップされている。 拡大
「CLA180シューティングブレーク スポーツ」の前席。赤いステッチやレザーDINAMICAのシート地が特徴となっている。
「CLA180シューティングブレーク スポーツ」の前席。赤いステッチやレザーDINAMICAのシート地が特徴となっている。 拡大
リアビュー。有機的なデザインのリアコンビランプやサイドのキャラクターラインも、デザイン上のセリングポイント。
リアビュー。有機的なデザインのリアコンビランプやサイドのキャラクターラインも、デザイン上のセリングポイント。 拡大
メルセデス・ベンツ CLAシューティングブレーク の中古車

にじみ出るゴージャス感

そのシューティングブレークが、Aクラスベースの「CLAクラス」にも導入された。CLSシューティングブレークは最低791万円するが、CLAシューティングブレークなら断然リーズナブル。ほぼステーションワゴンとして使えて、それであのデカダンスが味わえれば魅力的かもしれない。そういう期待を抱いて試乗会へ向かいました。

まず見た目。なかなかイイ。Aクラスと比べればバランスは悪いが、それはシューティングブレークなのでアタリマエ。この微妙な違和感がゴージャス感を盛り上げる。もちろんCLSシューティングブレークには遠く及ばないが、わざわざこれを選んだというだけで、サイフはともかく気持ちに余裕のある人なんだろうな~と予感させる。CLAだと妙な寸詰まり感があるが、シューティングブレークはルーフが後方まで延ばされているので、それもかなり解消されている。

ラゲッジ容量は495リッター。広大とまでは感じないがそこそこ広いし、後席は6:4で前に倒せるので、ほぼステーションワゴン的に使える。
ただ、CLSシューティングブレークにあったウッドフロアの設定はない。あれには、「荷物がツルツル滑ってどうしようもないだろう!」と思わせる非実用的なぜいたくさがあったので(実際はレールにゴムが貼ってあるのでそれほどでもない)、残念といえば残念だが、さすがにそこまで求める人はCLSの方を買いますよね?

フロントまわりの基本デザインは、セダンの「CLAクラス」と共通。ボディーカラーは、特別仕様車を除き全7色がラインナップされる。
フロントまわりの基本デザインは、セダンの「CLAクラス」と共通。ボディーカラーは、特別仕様車を除き全7色がラインナップされる。 拡大
Cピラー部。のびやかなルーフラインとなだらかなカーブを描くサイドウィンドウが目を引く。
Cピラー部。のびやかなルーフラインとなだらかなカーブを描くサイドウィンドウが目を引く。 拡大
ルーフラインがボディー後方までのびたことで、後席のヘッドクリアランスは、セダン「CLAクラス」比で42mm広がったという。着座している筆者の身長は175cm。
ルーフラインがボディー後方までのびたことで、後席のヘッドクリアランスは、セダン「CLAクラス」比で42mm広がったという。着座している筆者の身長は175cm。 拡大
荷室の容量は、標準の状態で495リッター。後席を前方に倒すことで、最大1395リッターにまで拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
荷室の容量は、標準の状態で495リッター。後席を前方に倒すことで、最大1395リッターにまで拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます) 拡大

乗り心地はしっとり

ということで、機能面の評価は終了。あとは基本的にAクラスと同じだ。全長は350mm長く、車両重量が60kg重いだけ。AMGを除けば「180」(1.6リッターターボ)と「250」(2リッターターボ)という2種類のパワーユニットを持つことも同じである。

実際走ってみると、まず乗り心地がしっとりしなやかだ。タイヤがランフラットではなく、標準タイプなのが効いている。
新型「Cクラス」ではランフラットが標準装着され、それが物議をかもしている。Aクラスも当初はランフラットだったが、現在は標準タイヤ。本国ではどちらも選べるそうだが、日本はインポーター側の要望で標準タイヤに変えたという。

個人的にはですね、ランフラットなんざ重いし高いし乗り心地は悪いし、いや乗り心地に関してはかなり改善されつつあるけれど、いずれにせよランフラットだってパンクすれば100kmくらいしか走れないんだから、メリットは極小でデメリットは巨大。標準タイヤ万歳だ。

まず180に試乗。まあ普通に走るが、アクセルに対するレスポンスは重めで、奥さまの買い物用という感じは強い。もちろん全力を振り絞れば十分な動力性能だが、こういうクルマって全力を振り絞らせたら貧乏くさくなるでしょ? 余裕をブチかますのがメルセデスの存在意義なので、その余裕をブチかませないのは物足りない。

「CLA180シューティングブレーク」のエンジン。万が一の事故の際にボンネットを60mm持ち上げて歩行者へのダメージを軽減する、「アクティブボンネット」も備わる。
「CLA180シューティングブレーク」のエンジン。万が一の事故の際にボンネットを60mm持ち上げて歩行者へのダメージを軽減する、「アクティブボンネット」も備わる。 拡大
トップレベルのエアロダイナミクスを追求したとされる「CLAシューティングブレーク」。空力性能を示すCd値は、0.26。
トップレベルのエアロダイナミクスを追求したとされる「CLAシューティングブレーク」。空力性能を示すCd値は、0.26。 拡大
2眼式のアナログメーター。中央のマルチインフォメーションディスプレイには、運転支援システムを含む各種の車両情報が表示される。
2眼式のアナログメーター。中央のマルチインフォメーションディスプレイには、運転支援システムを含む各種の車両情報が表示される。 拡大
センターコンソールには、インフォテインメントシステムのスイッチ類やSDカードのスロット、走行モードの選択ボタンなどが並ぶ。
センターコンソールには、インフォテインメントシステムのスイッチ類やSDカードのスロット、走行モードの選択ボタンなどが並ぶ。 拡大

コスパで選べるベンツのワゴン

これが250になると、断然余裕ブチかましだ。これだよこれ、これがメルセデスだよね! という感じ。奥さまだってお買い物の際、「少ししかアクセル踏まなくてもスーッっと走るわ~」という余裕を味わいたいはず。
制限速度が最高100km/hのお箸の国では、本来180でも十分ではありますが、新東名・新名神の制限速度が120km/hに引き上げられるという動きもあり、それに備えて(?)250をフンパツするというのもアリではないか。

ただ、価格にはかなりの差がある。180が360万円から買えるのに対して、250は492万円から。うーん、360万円でシューティングブレークのぜいたく感が味わえるならやっぱり180がお買い得かな~。

「A180」だと「ベンツの一番安いヤツでしょ」「無理してベンツ買っちゃって」みたいな陰口をたたかれる可能性なきにしもあらずだが、シューティングブレークなら絶対大丈夫だ。なにせ貴族の乗り物なのだから。それが360万円というのは安い! 「Cクラスステーションワゴン」は「C180」でも451万円から。90万円も安くてラゲッジ容量は大差ない。ものすごくシビアに実用性やコスパを考えても、CLA180シューティングブレークは、ニッチに見えてかなりメジャーな選択ではないだろうか。

(文=清水草一/写真=荒川正幸)

「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」には、メルセデスAMGのエンジニアが独自に開発したフロントアクスルとサスペンションが与えられる。
「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」には、メルセデスAMGのエンジニアが独自に開発したフロントアクスルとサスペンションが与えられる。 拡大
赤いリングでドレスアップされた、「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」のバイキセノンヘッドライト。交通状況に応じて照射範囲を自動的に調節する機能が備わる。
赤いリングでドレスアップされた、「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」のバイキセノンヘッドライト。交通状況に応じて照射範囲を自動的に調節する機能が備わる。 拡大
前席のシート下には、折りたたみ傘などが収納できる小物入れが用意される。写真はトレーを最大限に引き出した状態。
前席のシート下には、折りたたみ傘などが収納できる小物入れが用意される。写真はトレーを最大限に引き出した状態。 拡大
「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」のリアビュー。レッドライン入りのバンパーは、このモデルならではのアイテムだ。
「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」のリアビュー。レッドライン入りのバンパーは、このモデルならではのアイテムだ。 拡大
メルセデス・ベンツCLA180シューティングブレーク スポーツ
メルセデス・ベンツCLA180シューティングブレーク スポーツ 拡大
 
メルセデス・ベンツCLAシューティングブレーク【試乗記】の画像 拡大
 
メルセデス・ベンツCLAシューティングブレーク【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツCLA180シューティングブレーク スポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1780×1435mm
ホイールベース:2700mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:122ps(90kW)/5000rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/1250-4000rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:15.9km/リッター(JC08モード)
価格:428万円/テスト車=454万5000円
オプション装備:レーダーセーフティパッケージ<ブラインドスポットアシスト+ディストロニックプラス+レーンキーピングアシスト+PRE-SAFE>(19万9000円)/メタリックペイント(6万6000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:812km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

メルセデス・ベンツCLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク
メルセデス・ベンツCLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク 拡大
2リッター直4ターボエンジン。JC08モードの燃費値は、13.4km/リッター。
2リッター直4ターボエンジン。JC08モードの燃費値は、13.4km/リッター。 拡大
「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」には、18インチのAMG5スポークアルミホイールが装着される。
「CLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク」には、18インチのAMG5スポークアルミホイールが装着される。 拡大
今回の試乗車である「CLA250シュポルト 4MATICシューティングブレーク」と、高性能モデル「メルセデスAMG CLA45 4MATICシューティングブレーク」のみ、駆動方式は4WDになる。そのほかのモデルはFF。
今回の試乗車である「CLA250シュポルト 4MATICシューティングブレーク」と、高性能モデル「メルセデスAMG CLA45 4MATICシューティングブレーク」のみ、駆動方式は4WDになる。そのほかのモデルはFF。 拡大

メルセデス・ベンツCLA250シュポルト 4MATIC シューティングブレーク

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1780×1435mm
ホイールベース:2700mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y/(後)235/40ZR18 95Y(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:13.4km/リッター(JC08モード)
価格:545万円/テスト車=598万9000円
オプション装備:レーダーセーフティパッケージ<ブラインドスポットアシスト+ディストロニックプラス+レーンキーピングアシスト+PRE-SAFE>(19万9000円)/AMGレザーエクスクルーシブパッケージ<レッドステッチ入り本革シート+前席メモリー付きフルパワーシート+レッドステッチ入りレザーARTICOダッシュボード+レッドステッチ入りレザーARTICOドアパネル+アンビエントライト+harman/kardonロジック7サラウンドサウンドシステム>(34万円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1096km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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