TRD RC F CCSコンセプト(FR/8AT)/14R-60(FR/6MT)/14R(FR/6AT)
オトナな人にも、マニアにも 2015.08.10 試乗記 NISMO/無限/STI/TRDという自動車メーカー直系の4ブランドが、箱根で合同試乗会を開催。今回は、トヨタの“ワークス”であるTRDが手がけた「レクサスRC F」「トヨタ86」の実力をリポートする。チューンドカーの域を超えている
「RC F CCSコンセプト」のステアリングを握り、ターンパイクの高速セクションを駆けぬけたとき、新しい時代のスポーツカーは空力性能を機軸に発展していく、という感触を得た。
このクルマは、レクサス RC FをベースにTRDがチューニングを施したコンセプトカーである。「CCS」とは「サーキット・クラブ・スポーツ」の頭文字。「レクサスIS F」にも「CCS-R」というサーキット専用車が登場し、ニュルブルクリンク24時間耐久レースや富士スピードウェイで開催されるワンメイクレースを走っているが、こちらはナンバー付きの公道仕様である。
その目玉は、ふんだんに装着されたドライカーボンのパーツだ。中でも直接オーナーの目には触れることのない「エアロアンダーブレース」が筆者のイチ押し商品である。これはアルミ製のハニカム(蜂の巣のような構造体)素材をドライカーボンパネルでサンドイッチしたパーツで、文字通り下まわりの構造体にもなっている。
これとエンジンルーム内の、エンジンカバーとタワーバーを一体化した「エンジンコンパートメントブレースVバンクカバー」(これまたほれぼれするような出来栄えなのだ)を組み合わせた結果、RC Fのハンドリングは大きく変わった。20インチタイヤを履き、車高を低めた仕様とは思えないほど滑らかにサスペンションが路面に追従して、そのグリップ感が手のひらと腰にしっとり伝わってくる。それはベース車のRC Fでは足りないと感じていたフロントタイヤの応答性と接地感を向上させており、477psを発生するスーパースポーツを楽しいとさえ感じさせてくれた。もはやそれはチューンドカーの域を完全に脱しており、これなら欧州の某クーペだって目じゃない、とさえ思えた。
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レースで培ったノウハウをフィードバック
しかしもっと驚いたのは、このアンダーブレースによる剛性向上分は、ほんの10%程度にすぎない、ということだった。つまりその接地感向上には、空力性能が大きく貢献しているというのである。
ダウンフォースは、ざっくり言うとボディー下面と路面との隙間が狭いほどに高まる。そしてリアディフューザーまでのパネルがフラットなほど、多くの空気が排出できる。しかしこのCCSコンセプトは最低地上高も保安基準で必要な90mmを確保しており、床面も完全にフラットな状態ではない。それでも床下の空気の流れが整うと、これだけ高い接地感が得られるのか! と驚いた。
エンジニア氏も「ダウンフォースが出ていなければ、サスペンションはもっと硬く感じたと思います」と話していた。空力性能は外的要素(横風や路面の凹凸)によって乱されることも多いため市販車への投入は難しいはずだが、TRDはこれを見事にバランスさせていた。今後はこうした技術が、市販車にも多く投入されていくのだろう。
ちなみにこのアンダーカバーは、SUPER GTにも参戦している「RC F GT3 CONCEPT」の開発から着想を得たパーツ。そしてこのCCSコンセプトに盛り込まれる全ての空力パーツを合わせると、その価格は600万円を超えるという。そこにRC F本体の価格が加わるわけだからもうタメ息しか出てこないが、もしこれがあなたにとって現実的な価格帯ならば、ぜひとも一度味わってほしい。これこそ筆者がレクサスに期待する、大人のハンドリングである。
“ワークス”ならではのすごみ
続いては、トヨタ86をベースに作り上げられた、本気のスポーツギアを紹介しよう。
「TRD 14R-60」という名称は、「TRDグリフォン コンセプト014」という、やはりトヨタ86ベースのコンセプトカーに由来する。これはレースカテゴリーにとらわれず、TRDが己の技術力を集結して作り上げた研究開発車両で、カーボン素材の使用による大幅な軽量化やボディーのスポット溶接増し打ち、風洞実験で開発したエアロデバイスの採用、フットワークの鍛錬などによって、エンジン本体を改造することなく筑波サーキットで58秒407のラップタイムを記録したモデルであった。そしてグリフォンで得た技術を、市販車レベルに落とし込んだのが今回の14R-60となる。
特に注目すべきは、14R-60がボディー本体に火を入れる(溶接する)ことなしに、その剛性を、スリックタイヤを履きこなすグリフォンと同等レベルにまで引き上げたことだろう。
そのためにTRDは、それこそページを埋め尽くすほどの専用パーツを新規に開発したのだが、中でもサブフレームやサスペンションアーム、メンバーまで新規に作ってしまったあたりには、ワークスのすごみを感じさせられた。またウィンドウの接着剤を変更することでボディー剛性を上げる処理なども、トレンドを先取りしていた。
そして肝心な乗り味だが、これはもう野球やサッカーでいえば本物のスパイク、自転車でいえばビンディングシューズを履いて走り回るような感覚だった。
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高められた空力性能の恩恵
トヨタ86に強化したサスペンションを取り付けると、リアのストローク量が足りなくなりがちなのだが、ボディー剛性を上げ、バンプラバーでミリ単位のストローク量が確保された14R-60の挙動は終始穏やかだ。素早く、強烈に立ち上がるフロントのCP(コーナリングパワー)に対して、標準車のようにリアが引っ張られてオーバーステアを誘発することがなく、一般道で試せる領域では完全にタイヤ(ポテンザRE-11A 3.3T)のグリップが余ってしまう。
それもそのはず。14R-60が目指す場所は完全にサーキットなのだ。ここでの挙動をコントローラブルにすることに、全ての努力が払われているのである。だから、普通の道では歩きにくくても、“走れるステージ”に上がれば、14R-60はきっと素晴らしいスポーツシューズになる。そういう意味では、ぜひともサーキットで試したかった。
TRDの技術力を結集して作られた14R-60は確かに素晴らしい。「でも630万円という価格は、あまりに非現実的だよね」という人々に対しても、TRDはきちんと答えを用意してくれていた。「14R」はグリフォンと14R-60で培った空力技術をノーマルボディー用に最適化したエアロパーツが装着されるコンプリートカー。試乗当日はTRD推奨パーツとしてさらにボディー剛性パーツやサスペンションなど総額100万円近いオプションが組み込まれていたが、コンプリート車両価格としては約380万円とはるかにリーズナブルである。
そしてこの乗り味も、14R-60の面影を色濃く残すものだった。というのも筆者は、14Rが14R-60と同じ「ポテンザRE-11A 3.3T」を履いていると思ったのだ。しかしその足元には、「ポテンザS001」が装着されていた。正直に言えば、S001のグリップレベルはそれほど高くない。しかし14R-60と非常に近い感覚を得ることができたのは、その空力の効果が大きいのだと思う。ダウンフォースで押さえつけることによって、S001のグリップ力を最大限に発揮することができたのだろう。スワンネックのGTウイングなどは普段乗るにはちょっと恥ずかしい気もするけれど、性能は本物。86に魅力を感じているユーザーにとって14Rは、いいベース車両となるはずである。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
TRD RC F CCSコンセプト
(ベース車:レクサスRC F“カーボンエクステリアパッケージ”)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4705×1850×1390mm
ホイールベース:2730mm
車重:1780kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:477ps(351kW)/7100rpm
最大トルク:54.0kgm(530Nm)/4800-5600rpm
タイヤ:(前)255/30ZR20/(後)275/30ZR20(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
ベース車の価格:1030万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
装着部品:CFRP製左右一体型フロントスポイラー/CFRP製サイドスポイラー/CFRP製リップスポイラー/CFRP製4枚フィンタイプ リアディフューザー/CFRP製リアロワスポイラー/CFRP製バンパーサイドスポイラー/CFRP+アルミハニカム製のエアロアンダーブレース(トランスミッション下部)/CFRP+アルミハニカム製のエアロアンダーブレース(フロア下部)/CFRP製エンジンコンパートメントブレースVバンクカバー/CFRP製リアパーティションブレース/専用サスペンション(減衰調整車高調+直巻きスプリング)/20インチ鍛造アルミホイール/パフォーマンスダンパー(フロント、リア)/機械式L.S.D(1.5Way)/チタンマフラー(フロントパイプ)/チタンマフラー(リアピース)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:9826km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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TRD 14R-60
(ベース車:トヨタ86)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4335×1820×1305mm
ホイールベース:2570mm
車重:1230kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:200ps(147kW)/7000rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/6400-6600rpm
タイヤ:(前)235/40R18 91W/(後)235/40R18 91W(ブリヂストン・ポテンザRE-11A 3.3T)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:630万円/テスト車=630万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:8969km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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TRD 14R
(ベース車:トヨタ86)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4285×1790×1325mm
ホイールベース:2570mm
車重:1250kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/7000rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/6400-6600rpm
タイヤ:(前)225/40R18 88W/(後)225/40R18 88W(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:--km/リッター
価格:384万9710円/テスト車=478万6286円
オプション装備:GTウイング<スワンネックタイプ>+GTウイング専用フロントアンダーリップ(38万8800円)
装着部品:TRDピロアッパーセット(6万8040円)/TRD直巻きスプリング<前:49.5N/mm、後ろ:72.0N/mm>(3万4560円)/TRD全長調整式ショックアブソーバー(21万6000円)/TRDスタビライザーセット(8万1000円)/エアロスタビライジングカバー(1万7280円)/リアサイドスポイラー(1万5120円)/カナード(9720円)/フロントストラットタワーバー(3万240円)/メンバーブレースセット(6万480円)/リアスタビライザーブッシュ(8856円)/底付きスペーサー<前:10mm、後ろ:5mm>(6480円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2823km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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