第338回:電動ハードトップの「マツダ・ロードスターRF」登場!
ニューヨークショーの会場で開発主査とデザイナーに話を聞いた
2016.03.28
エディターから一言
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かねてウワサのあった“電動ハードトップのロードスター”こと「マツダMX-5 RF(日本名:ロードスターRF)」が、ニューヨーク国際オートショーでついにお披露目された。商品の狙いは? あのカタチになった理由は? ショーの会場で開発者とデザイナーに聞いた。
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もはや“脇役”にあらず
何を隠そう、「NC」こと3代目ロードスターは、モデルライフの終盤では販売の半数以上が電動ハードトップの「RHT」だったってご存じでしたか?
オープンカーというのはその特別感がイイトコロなのは言うまでもありませんが、いざ所有するとなると、その特別感が邪魔をする場合があるのも事実。「普段はクーペだけれど、ここぞという時はオープンにもなります!」というこのタイプは、やはり多くの方が選びやすいんですよね。
しかし、それくらい販売割合が高いとなると、「いっそRHTモデルを最初に出してから、その後にソフトトップ仕様を出すという考えもあったのでは?」と言いたくなったりもしますが、現行型ロードスターの開発主査である山本修弘氏によると「やはりロードスターはソフトトップのオープンカーであることが基本ですから、発表する順番を変えるのはあり得なかった」とのこと。とはいえ、開発当初からRHT を出すという構想はしっかりあったんだそうで、計画には織り込み済みだったんですね。
それにしても驚かされたのが、そのカタチ。世界中のスポーツカー好きが注目する中、ニューヨーク国際オートショーでお披露目されたハードトップのロードスターは、なんとファストバックスタイルのクルマでした。まさか! と心底驚かれた方も多かったのではないでしょうか? 事実、この私がそうでしたからね……。デザイン的にはひとこと「素直にカッコイイ!」というのが個人的な感想ですが、ロードスターのハードトップが登場したというよりも、「ロードスターRF」という新しいクルマが誕生したという印象の方が強かったですね。ちなみに「RF」とは、リトラクタブルの「R」とファストバックの「F」からなる造語ということでした。
理由は「屋根をしまえなかったから」
さて、こうなるとなぜにファストバックにしたのか? というのが気になるポイントですよね。実はその本当の理由は、カッコイイからではなく、「そのままだとルーフがしまえなかったから」なんだそうです。
車体に大手術を加えれば入らないことはなかったのだそうですが、それはしたくなかったとのこと。4代目のロードスターは“原点回帰”をうたうこともあり、せっかく短くしたホイールベースを延ばすなんてあり得ない! せっかく確保したトランクスペースをつぶすなんてあり得ない! ということで、暗中模索が始まったんだとか。
チーフデザイナーの中山 雅氏によると「当然ですが、最初はなんとか中にルーフ(の全部)をしまおうと思ったんですよ。でも、ソフトトップと同じ形状だと8分割しなきゃ入らなかった。構造的に3分割だとすると、それはあり得ない……。そうこうするうち、『もういっそのこと、全部しまわないでルーフの一部を残せばいいじゃないか』という逆転の発想が生まれ、そのあとは簡単でしたね」とのこと。全部を収納しないという方向になったおかげで、自然とカッコいいファストバックスタイルが描かれ、あとはもう何の迷いもなかったのだとか。「決まっちゃえばデザイナーとしてはラクだったと言ってもいいかもしれません」と、おっしゃるくらい、これしかない! という姿が生まれたんだそうです。
実は山本主査によると、ルーフの一部を残すことは運動性能的にも大きなメリットがあるのだとか。「重量物の位置移動が少なくなるので、開け閉めした際の重量バランスの違いが少なくて済むんです。これは、スポーツカーであるロードスターにとっては、とてもメリットが大きいんですよ」とのこと。
チューニング度合いの違いこそあれ、ロードスターは基本的にタイヤや足まわりの構造が全グレード共通。このあたりの“バランス感覚”はとても重要なものになるんですよね。
日本仕様にもいよいよ2リッターが登場
デザインと並んでロードスターRFの話題となっているのが、パワートレインの設定です。北米仕様に搭載している2リッター直4エンジンの「SKYACTIV-G 2.0」を、日本仕様にも搭載することが決まっていたんですね。
これまでも、「いいクルマだけれどもう少しパワーが欲しい」という声が一部から聞こえていたロードスター。2リッターエンジンの採用は、ハードトップ化・ファストバック化による重量の増加だけでなく、やはりRFがラインナップの中でも上級モデルに位置することから、“ゆとり”を考慮したのだそう。インテリアなども基本構造はソフトトップと同じですが、革素材などに1ランク上のものを使うことで、質感をより高めているのがポイントとなっています。
そしてもちろん、ルーフの開閉にかかわらず航空機内持ち込み用キャリーバッグが搭載できるほどのラゲッジスペースを確保するなど、使い勝手のよさがきちんと保たれているのも大事なこと。そういった細やかな心遣いがあるからこそ、より多くのお客さまに受け入れられるのだと思います。
気になる乗り味については、「ソフトトップのロードスターが、タイヤや基本的な足まわりが同じなのにもかかわらず(グレードや仕様によって)乗り味が違うように、RFもまた乗り味の違う一台になっていると思います」と山本主査。日本で乗れる日を、大いに期待して待ちたいものですね。
(文=竹岡 圭/写真=佐藤靖彦、マツダ)
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