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第19回:ゼイタクは敵(その3)

2016.11.29 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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中古車の悲しいオーディオ環境

(その2)からのつづき
いよいよ理想的な欧州の牛丼カー「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」の契約書に判を捺(お)した私だが、納車前の注文として、カーオーディオの入れ替えをお願いした。

09年式デルタの純正オーディオは、残念ながらCDとラジオにしか対応していない。今時いちいちCDを入れ替えするなど面倒すぎるし、ラジオはあまり聴かない。現代のオーディオ機器(iPhoneとか)に対応するためには、オーディオを更新せねばならぬ。

考えてみれば、2010年式の我が宇宙戦艦号こと「フェラーリ458イタリア」も、オーディオは旧態依然としている。CDとラジオ、あとはハードディスク(再生したCD音源をため込むヤツ?)がついているのみだ。

以前間違ってハードディスクを再生したところ、AKB48らしき若い女子たちのポップな歌声が聴こえてきて度肝を抜かれた。どうやら前オーナーがAKBファンだったらしい。乃木坂46かもしれないが。

しかも、入っていたのはそのアルバム1枚だけ! こればっかり聴いていたのだろうか……。

新車で458イタリアを購入された方が、車内でAKBばっかり聴いていた(かもしれない)。ある意味衝撃的な事実だが、消去方法がわからないのでそのままにしてある。

もともとフェラーリはエキゾーストサウンドがミュージックなので、オーディオは不要! 普通のミュージックなんか聴いてられっか! というのが22年前から私のスタンスだが、それでもたまに普通のミュージックがないのが寂しくなることがある。そんな時は、グローブボックスに出ているUSBコネクターを思い出して、ちょっと悲しくなる。

筆者の新たな牛丼カー「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」。
筆者の新たな牛丼カー「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」。拡大
宇宙戦艦号こと「フェラーリ458イタリア」と筆者。(写真=池之平昌信)
宇宙戦艦号こと「フェラーリ458イタリア」と筆者。(写真=池之平昌信)拡大
愛車の「458イタリア」でiPhoneを充電しながら、音楽を再生している様子。
愛車の「458イタリア」でiPhoneを充電しながら、音楽を再生している様子。拡大

無用の長物に8万7000円!

このコネクター、一見いろんな音源に対応していそうに見えるが、iPod専用らしく、iPhoneを接続してもウンともスンとも言わない。

入手したオプション表を見ると、このコネクターだけで8万7000円! さすがフェラーリ様! なのにまったく無用の長物!

思えばこの頃はまだ、iPodのみに対応のコネクターが多かった。8万7000円出したのも私じゃなくAKB(or乃木坂)ファンの前オーナーだ。誰を責めるわけにもいかない。

「フェラーリのオーディオも入れ替えればいいじゃん!」

そう思われるだろうが、事はそう簡単ではない。

458イタリアのオーディオは、手元のセレクターで操作できるようになっているが、後付けオーディオをそれと連動させるのはウルトラ困難。純正オーディオ本体はグローブボックスの中に変則的に収まっており、新たなオーディオ本体の設置場所もない。なんでも安く直してくれる名人・コーナーストーンズ尾上メカも、「458のオーディオだけは勘弁して!」とのたまう。ナビ交換はさらに難物らしいが。

ディーラー様に持ち込めば、バージョンアップも可能かもしれない。しかしいくらかかるのか? 50万円くらいでしょうか? なんせiPodケーブルだけで8万7000円なんだから! 滅多に乗らないクルマの、滅多に聴かないオーディオに50万円(推定)かけるなんざ狂気の沙汰。ゼイタクは敵だ!

よって私は現在、458車内で普通の音楽が聴きたくなった時は、iPhone本体のあの小さな小さな小さなスピーカーで再生している。それもまたちょっと悲しいが。

「458イタリア」のiPod専用コネクター。なんと8万7000円也!
「458イタリア」のiPod専用コネクター。なんと8万7000円也!拡大
「458イタリア」のオーディオセレクター。
「458イタリア」のオーディオセレクター。拡大
「458イタリア」のスピーカー。ここから音が流れることはほぼない。
「458イタリア」のスピーカー。ここから音が流れることはほぼない。拡大
「458イタリア」での音楽再生はiPhone本体の極小スピーカーが頼り。
「458イタリア」での音楽再生はiPhone本体の極小スピーカーが頼り。拡大

液晶が真っ暗

フェラーリは滅多に乗らないんだからそれでもいい。しかしこのデルタは牛丼カーとして日々の足になる。現代的なオーディオは必須だ。

デルタの純正オーディオは、一見1DINで入れ替え可能なようにも見えたので、取りあえず調査を依頼して帰宅した。

後日、コレツィオーネ成瀬社長から連絡が入った。

「デルタのオーディオなんですが、あのパネル全体が本体で、交換できないことがわかりました。外すと大きな穴がポッカリ開いてしまうんです」
「そ、そーだったんですか!?」
「それで、新しいオーディオをグローブボックスの中に付けさせていただこうかと思っているんですが、いかがでしょう?」

となると、純正オーディオは電源が死に、あの一番目立つところにあるオーディオパネルの液晶が消え、夜は真っ暗になるのか。ちょっと寂しい気もするが、iPhoneの小さな小さなスピーカーで音楽を聴くのはフェラーリの車内だけにしたいので、「それでよろしくお願いします!」と元気に答えた私だった。

(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

第17回:ゼイタクは敵(その1)
第18回:ゼイタクは敵(その2)

「デルタ」のオーディオパネル。
「デルタ」のオーディオパネル。拡大
「デルタ」のグローブボックス内に新たに取り付けた新オーディオシステム。
「デルタ」のグローブボックス内に新たに取り付けた新オーディオシステム。拡大
「デルタ」のオーディオパネル。夜間は液晶が消え、真っ暗になってしまった。
「デルタ」のオーディオパネル。夜間は液晶が消え、真っ暗になってしまった。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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