【デトロイトショー2017】注目のドイツ勢、キーワードは「電動化」

2017.01.13 自動車ニュース 鈴木 ケンイチ
デトロイトショーにおけるフォルクスワーゲンブースの様子。写真手前が新型SUVの「アトラス」。
デトロイトショーにおけるフォルクスワーゲンブースの様子。写真手前が新型SUVの「アトラス」。拡大

2017年のデトロイトモーターショーは、日本メーカーの充実ぶりが目についたが、ドイツ勢の頑張りもなかなかのもので、特にフォルクスワーゲン(VW)は力が入っていた。各メーカーの展示に込められた意図を、会場からリポートする。

「フォルクスワーゲン・ティグアン」
「フォルクスワーゲン・ティグアン」拡大
コンセプトカー「I.D. Buzz」は、今回のショーで特に注目を集めたクルマの一台だった。
コンセプトカー「I.D. Buzz」は、今回のショーで特に注目を集めたクルマの一台だった。拡大
「I.D. Buzz」のインストゥルメントパネルまわり。
「I.D. Buzz」のインストゥルメントパネルまわり。拡大
アウディのプレスカンファレンスの様子。
アウディのプレスカンファレンスの様子。拡大

会場で最も注目されたVWのコンセプト

北米におけるVWの立場は、なんといってもチャレンジャーそのものだ。北米市場は、販売の半数が小型トラック(ピックアップトラックや、それをベースとしたSUVなど)という特殊なエリア。そこで、日本メーカーはアメリカ向けの小型トラックを用意しているが、VWは乗用車だけで勝負する。しかもディーゼルの不正問題もあり、シェアは落ちる一方。その数値は2%前後で、スバルやメルセデス・ベンツと競い合っている状況なのだ。10%ほどを確保するトヨタ、日産、ホンダの背中は遠い。

売れてナンボの大衆車ブランドとしては北米市場の攻略は大きな課題になっているはずで、その北米にかけるVWの強い思いはプレスカンファレンスからも感じ取ることができた。まず、日本メーカーと同様にミッドサイズSUVである「アトラス」が北米生産であることを強調。同時に新型「ティグアン」のロングホイールベース仕様を発表し、「この2台でアメリカ市場にカムバックする」と宣言したのだ。

また、懐かしい“VWバス”の現代版コンセプトとでもいうべき「I.D. Buzz」を世界初公開。今回のショーでお披露目された数少ないコンセプトカーということもあり、注目度は抜群だった。それこそ、撮影が困難なほど常に人が張り付いている状況で、今回のショーで最も注目度が高いクルマであったと思う。

苦戦するVWを横目に、アウディの北米の成績は右肩上がり。その勢いを受けるかのように、2台の世界初公開と1台の北米初公開が用意された。前者はフルサイズSUVである「Q8コンセプト」と、ハイパフォーマンスSUVの「SQ5」。後者は「S5カブリオレ」だった。ちなみに、アウディの主力モデルとなる新型「Q5」はメキシコ生産となるが、その事実は、今回のショーで触れられることはなかった。

大幅改良を受けた「メルセデス・ベンツGLA」。Aピラーに手をかけているのが、独ダイムラーのディーター・ツェッチェ会長。
大幅改良を受けた「メルセデス・ベンツGLA」。Aピラーに手をかけているのが、独ダイムラーのディーター・ツェッチェ会長。拡大
新型「Eクラス クーペ」のお披露目では、生バンドによるライブが催された。
新型「Eクラス クーペ」のお披露目では、生バンドによるライブが催された。拡大

多数の新モデルを持ち込んだメルセデス・ベンツ

メルセデス・ベンツのプレスカンファレンスでは、パリモーターショーで世界初公開されたコンセプトカーの「ジェネレーションEQコンセプト」を紹介。EVへの取り組みがアナウンスされた。

とはいえ、本番はその後だ。まずは大幅改良が施された「GLA」、そして「Eクラス クーペ」、さらに「AMG GT Cエディション50」という3台もの“ワールドプレミア”を登場させた。Eクラス クーペの紹介では、生バンドの演奏をバックに車両がステージに登場。Eクラス クーペから現れたダイムラー会長のディーター・ツェッチェ氏が、バンドのボーカル嬢に花束をプレゼントするという華やかな演出が行われた。デトロイトは、「モータウン」レコードの発祥の地。そんな歴史を思い出させてくれたパフォーマンスだった。

新型「5シリーズ」が前面に押し出されたBMWのブースの様子。
新型「5シリーズ」が前面に押し出されたBMWのブースの様子。拡大
こちらは「5シリーズ」のプラグインハイブリッドモデル。フロントのフェンダーパネルには「i」のバッジが装着されていた。
こちらは「5シリーズ」のプラグインハイブリッドモデル。フロントのフェンダーパネルには「i」のバッジが装着されていた。拡大
今回のショーにおけるドイツ勢の展示からは、電動化にかける意気込みが感じられた。
今回のショーにおけるドイツ勢の展示からは、電動化にかける意気込みが感じられた。拡大

BMWの主役は新型「5シリーズ」

BMWはこのショーで、フルモデルチェンジとなった新型「5シリーズ」をお披露目した。北米市場だけでなく、世界中で販売されるBMWの主力モデルであり、ある意味今回のショーで登場した新型車の中での重要度は、これが一番高いのではないだろうか。

また、5シリーズは、ガソリン車だけでなく、同時にプラグインハイブリッドモデルも発表。パリで発表済みの「コンセプトX2」も展示されていた。

ドイツ勢による車両のお披露目は、実際に売れる主力モデルが中心だが、ブース全体としては別のメッセージもあった。それが電動化にかける強い思いだ。VWのブースは、「Think New」のキャッチフレーズを中心に、自動運転や電動化、コネクテッド化を訴えるような演出となっていたし、メルセデス・ベンツはブースの最前列にズラリとプラグインハイブリッドモデルを並べていた。そしてBMWは、「i」ブランドの象徴ともいうべき「i8」を会場の入り口の正面に展示。パリモーターショーで鮮明となったドイツ勢の電動化の動きは、ここデトロイトでもしっかりと感じ取ることができた。

(文と写真=鈴木ケンイチ)

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