マツダ・アクセラスポーツ15Sプロアクティブ(FF/6AT)/アテンザワゴンXD Lパッケージ(FF/6AT)/デミオ13Sツーリング(4WD/6AT)
雪の上でも“人馬一体” 2017.01.26 試乗記 マツダの現行ラインナップに北海道・剣淵のテストコースで試乗。彼らが独自のシャシー制御技術とマン・マシン・インターフェイスに対する“こだわり”によって追及しているものとは何か? 雪上でのドライビングを通して確かめた。微細なエンジン制御で走行安定性を高める
北海道にあるマツダのテストコース「剣淵試験場」では、新型「CX-5」の試乗と同時に、マツダの走行安定性に対する3つの取り組みを体感する機会に恵まれた。CX-5の試乗による「i-ACTIV AWD」の体感については既にリポートしているので、今回紹介するのは残りの2項目。ひとつはコーナリング制御技術「G-ベクタリングコントロール」(GVC)の検証で、もうひとつはドライビングポジションの有効性についてである。
GVCはその名の通り、「G(車両の加速度)を方向付ける制御」だ。……といきなり言われても、読者のみなさんもチンプンカンプンだと思う。
筆者にしても、どうにも端的にこれを表現できない。それでも回りくどく言ってみれば、「カーブでは曲がりやすく、レーンチェンジではクルマがピタッと収まり、雪や砂利などの低μ路ではクルマが真っすぐ走ってくれる制御」である。あぁ、歯切れが悪い。
例えばアナタがカーブに差し掛かる。アクセルを緩めたり、ブレーキを踏んだりするほどきつくないカーブに。そのときGVCは、アナタが切り始めたハンドルに対して、電動パワーステアリング(EPS)のモーターから検出される操舵速度を微分して演算し、ちょっとだけエンジンのトルクを緩めてくれる。もちろんそのとき、アクセルは踏んだままだ。
するとどうなるか。荷重がわずかにフロントタイヤへ移動して、ハンドルの応答性が上がる。だからクルマは狙った通りに、ターンインでスーッと曲がってくれるというわけである。そして“ターンミドル”から“ターンアウト”にかけては、戻したハンドル舵角とともに、もとのトルクへと復帰していく。
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ダンパーを交換したような感覚
これをテストコースでは、30km/hの速度で試した。車両は「アクセラ」で、特別に今回はGVCのオン/オフも比較した。
コースレイアウトは大きなスラローム。速度制限を30km/hとしたのは、旋回時にドライバーがアクセルを緩めないで走れる速度を維持したかったからだろう。
筆者はGVCの効果をアクセラの公道試乗会で体感していたから、今回のテーマは「GVCに挑戦!」だった。要するにその速度や路面状況、タイヤのグリップ感からターンインにおける滑り具合を予測して、ハンドルを切り始めるポイントを見極め、ターンインではツマ先の力をわずかに抜いて、GVCと同じように走らせてやろうとしたのである。
果たしてその結果は……疲れます(笑)。いや、これはレースなどでは普通にやっていることだからできるのだけれど、スネの筋肉に力は入るし、身構えるから体もこわばる。だからちょっと運転に疲れるのである。
そしてこれをGVCオンにすると、非常に運転が快適。ターンインが非常にスムーズで、実に気持ちよく走れる。雪道を走っているにもかかわらず過度な緊張が強いられず、「あぁ、舵が利くなぁ!」とうれしくなる。
また電子制御でクルマに走らされているような感覚もない。例えばそれは、ダンパーを上質なものへと付け替えたような感触だ。実際GVCの採用によって、マツダのダンパーは良くなった。それまでマツダはフロント荷重の増加をダンパーで実現しようとしていた。だがダンパーの減衰初期のコントロールは品質管理が難しく、スムーズにしようとするあまり初期減衰力が弱すぎて、そのハンドリングがやや神経質だったと記憶している。
それがGVCによって荷重をコントロールできるようになったことで、ダンパーは本来あるべきダンピング剛性を取り戻し、走りが全体的にしっかりした。
直進走行時にも得られる恩恵
さらにGVC効果として特筆したいのは、雪上での直進安定性の向上。路面のギャップやドライバーのちょっとした操作の強弱でも進路が乱れるこうした路面で、人間は無意識に修整舵を当てているものだが、これに対してGVCが即座にトルク制御を行うことで、その修正が素早く作用し、挙動を素早く安定化してくれる。だから安心してアクセルを踏んでいけるのだ。
ちなみに試乗会では、GVCに「オン/オフボタンを付ければよいのに」という声がいくつか上がっていた。あまりにも自然な制御だから、常時作動だとありがたみを感じにくいという話のようだ。だがこの制御はアクセルオンのとき、しかも0.05G以下の領域でしか発動しないアシストだから、乱暴な運転をしているとそもそもその恩恵は味わえない。またGが高いスポーツドライビングの領域では発動しない(つまりドライバーの邪魔をしない)。
だったらむしろ今のまま、「マツダの走りって気持ちいいね!」という評価を底上げする黒子に徹するのもよいのかもしれない、と筆者は思った。あえて言うならば安全支援装置と同じく、アクティブを基本としてオフにすることができるスイッチを付ければいいかもしれない。それよりも筆者は、これをちょっとばかり“ハンドリングコンシャス”に過ぎる「ロードスター」にアドオンしてほしいと感じた。
雪上走行で際立つインターフェイスの差
さてもうひとつは、ドライビングポジションの適性化だ。ここ最近のマツダはハンドル形状やペダル配置といった、マン・マシン・インターフェイスの分野にこだわりを見せており、それを微妙な操作が要求される雪上で、体感してほしいというわけである。
試走内容は、林間コースをスタッフが運転する前走車に一定間隔でついていくというもの。最初、普通に走行していた前走車は、2周目からランダムに加速・減速を繰り返す。
ここで感じたのは、ブレーキタッチの良さだった。試乗車の「アテンザ」は微妙な踏力に対して制動力が調整しやすく、前車が突然踏むブレーキに対しても余裕をもって距離を保つことができる。これはパッドの摩擦係数が高すぎず低すぎず適切なこと、キャリパーの油圧レスポンスがリニアなことに加え、アクセルペダルからの踏み替えがしやすい位置にブレーキペダルが配置されている効果が大きい。またオルガンタイプのアクセルペダルも踏み込み量がわかりやすく、体を支えるフットレストのサイズや角度もちょうどいい。
面白かったのは、マツダがさまざまな“しかけ”を用意してくれたことだった。
まずは、走る際にスノーブーツや簡易かんじき(スノーステップ)を履いて運転した。これは積雪地で多く見られるユーザーの傾向を疑似体験したものだが、確かにブーツを履いた状態だと、足首を曲げようとするたびにブーツの反力が加わって、動きが規制されてしまう。また大きめのブーツは、せっかくのペダル配置を台無しにしてしまっていた。
続いて、アクセルペダルのスプリングレートだけを上げた試乗車に乗ったときは、ブレーキペダルとの踏力の違いに違和感を覚えた。
とはいえ、恐れながらこちらもプロである。その特性を覚えこみさえすれば、普通には走れてしまう。
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大事なのは運転しやすい環境
しかし、前走車が予想以上のブレーキロックで挙動を乱したとき、筆者もつられて軽くスリップしてしまう場面があった。「やっぱり上手ですねぇ!」なんて助手席のスタッフと話が盛り上がったときに不意を突かれてスリップしたものだから、赤っ恥もいいところ。
ただ、そこで発見だったのは、挙動を乱した後では自分でも無意識にアクセルワークが荒くなっていることだった。同様に前走車も、発進で前輪を大きくスキッドさせていた。私と同様、前走車のドライバーもきっとドキドキしていたに違いない(笑)。人間集中しているときは、その操作は相応に精度が高い。しかしいったんこれが崩れると、簡単にメロメロになってしまう。それをリアルに体験したハプニングだった。
話を戻せば、だからこそマツダは、自然に運転できるペダル配置やドライビングポジションにこだわる。適度な集中力を維持するためには、ストレスのない操作環境が重要だとわかっているからだ。そして、ドライバーには運転しやすい身なりをソフトに啓蒙(けいもう)している。奥ゆかしいメーカーである。
ABSやDSCは、あくまで緊急アシスト。基本は、人がクルマをコントロールするのが大前提である。だからこそマツダは、前回紹介したAWD制御やGVCと同じかそれ以上に、操作系にこだわるのである。「人馬一体」の定義はスポーツの領域を超えて、ここまできたのだなぁとうれしくなった試乗だった。
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
マツダ・アクセラスポーツ15Sプロアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1795×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1280kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:111ps(82kW)/6000rpm
最大トルク:14.7kgm(144Nm)/3500rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92Q/(後)205/60R16 92Q(ブリヂストン・ブリザックVRX)
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
価格:213万8400円/テスト車=236万5200円
オプション装備:ボディーカラー<マシーングレープレミアムメタリック>(5万4000円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/セーフティクルーズパッケージ<スマートブレーキサポート&マツダレーダークルーズコントロール+スマートシティブレーキサポート[後退時]+AT誤発進抑制制御[後退時]+リアパーキングセンサー[センター/コーナー]+ドライバーアテンショナラート>(7万5600円)/ドライビングポジションサポートパッケージ<運転席10Wayパワーシート&シートメモリー[アクティブドライビングディスプレイ連動]+運転席&助手席シートヒーター+ステアリングヒーター>(6万4800円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2429km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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マツダ・アテンザワゴンXD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1840×1480mm
ホイールベース:2750mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92Q/(後)225/45R19 92Q(ブリヂストン・ブリザックVRX)
燃費:19.6km/リッター(JC08モード)
価格:377万4600円/テスト車=371万5200円
オプション装備:DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(2万7000円)/4スピーカー(-8万6400円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:7349km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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マツダ・デミオ13Sツーリング
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1695×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1130kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92ps(68kW)/6000rpm
最大トルク:12.3kgm(121Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88Q/(後)185/65R15 88Q(ブリヂストン・ブリザックVRX)
燃費:20.6km/リッター(JC08モード)
価格:189万円/テスト車=218万0520円
オプション装備:ボディーカラー<マシーングレープレミアムメタリック>(5万4000円)セーフティパッケージ<ブラインドスポットモニタリング[リアクロストラフィックアラート機能付き]+車線逸脱警報システム+アダプティブLEDヘッドライト>(11万7720円)/セーフティクルーズパッケージ<スマートブレーキサポート&マツダレーダークルーズコントロール+スマートシティブレーキサポート[後退時]+AT誤発進抑制制御[後退時]+リアパーキングセンサー[センター/コーナー]+ドライバーアテンションアラート>(8万6400円)/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1436km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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