フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン(FF/7AT)/ゴルフGTI(FF/6AT)
みごとのひとこと 2017.03.01 試乗記 モデルライフ半ばの“テコ入れ”が実施された、最新の「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に試乗。新たに開発された1.5リッターターボエンジンや先進のインフォテインメントシステムは、その走りをどう変えたのか? スペイン・マヨルカ島からの第一報。代えがたい美点がある
押しも押されもせぬブランド力に支えられ、今でも「日本で最も有名な輸入車」と言っても過言ではなかろう、フォルクスワーゲン・ゴルフ。「ゴルフばかりがなぜ人気者に……」と、ライバル車を手がける他社のエンジニアはガックリきてしまうかもしれないが、支持されるには、やはりそれ相応の理由があるのだ。
1974年に初代が登場して以来、ボディーサイズは拡大の一途をたどってきたものの、なお5m台前半に収まる最小回転半径を含め、今でも“身の丈に合っている”感は強い。そして、大人4人がそれぞれ相当量の荷物を持ち込んでも、それらを苦もなく飲み込んだうえに長時間リラックスして過ごせるスペースを提供してくれる、実用的なパッケージング。新しさや存在感をアピールするための奇抜さなどとは無縁の、シンプルでありながら飽きのこないスタイリング……。
このように、思いをめぐらせただけでも多くの理由が浮かぶ。さらに、孤高の存在であり続ける最大のポイントは、カタログ上では表すことのできない、ゴルフならではの走りのテイストにあると思う。
クラスを超えたフラット感を実現する完璧なまでのボディーコントロール性や、「正確無比」と表現しても過ぎることのない、ドライバーの意思に忠実なハンドリングの感覚。そして、えも言われぬ安心感に直結するボディーの高い剛性感などは、いずれも歴代ゴルフが受け継いできた財産といえるもの。「だからもう、他のクルマに乗り換える気がしない」というユーザーのコメントを耳にすると、いちいち納得させられる。
そんな、“ゴルフ7”と呼ばれるゴルフの現行型に、モデルライフ半ばの大規模なリファインが施されたと聞いて、国際試乗会が開催される、地中海のマヨルカ島に飛んだ。
ディテールが磨かれたデザイン
ちょっと“目ヂカラ”が強くなったような気がするけれど、あとはどこが変わったのかな……? それが、地中海の西部に浮かぶスペイン・マヨルカ島の空港で出会った際の、リファインされたゴルフに対する第一印象だった。
実際には、標準モデルの場合、前後バンパーに新たな意匠が採用されている。特にフロントは、バンパー下部のエアインテークがこれまで以上にワイド感を強調するデザインに変更された。しかし、そう紹介されたところで、全体から醸し出される雰囲気は、「これまでと同様、ゴルフそのもの」と表現するしかないものだった。
もっとも、今回は体験することのできなかった夜間走行の方が、リファインの効果はより大きく感じられたかもしれない。全車のリアコンビネーションランプは、電球を1つも用いないフルLED式に変更されたし、その最上級グレードには、ゴルフとしては初めて、光が流れるように見える「ダイナミックインジケーター」を採用。ヘッドライトも、従来のキセノン式に代わってLED式が設定され、高性能モデルの「GTI」では、フロントアッパーグリル下端の赤いストライプが、このグレードでは標準装備となるLEDヘッドライトの“ウイングレット”(翼状のアクセント)に連続するデザインになった。
このように、一見すると従来と変わらぬ最新モデルの外観は、ディテールについては上質さを確実に増した印象で、インテリアについても同様のスタンスがとられていた。
キーポイントは“デジタル化”
「コンパクトカーでは世界初となる、ジェスチャーコントロール機能を備えたインフォテインメントシステムを導入」「新デザインの大型化したタッチスクリーンを採用」「最新のモバイルオンラインサービスに対応」……これじゃ、まるで資料の丸写し! ということは筆者自身も自覚しているのだが、それでも並べて記さずにいられないのが、フォルクスワーゲンが“デジタライズド・ゴルフ”という言葉を使って紹介する、最新モデルの特筆すべきポイントだ。
歩行者検知機能を追加した自動ブレーキや、「半自動運転」と紹介される60km/h以下での渋滞時追従支援システムの設定など、さまざまなドライバーアシスタントシステムのアップデートも含めて、なるほど“デジタルな部分”の進化が一挙に進んだことが、最新ゴルフシリーズの大きな見どころであるのは疑いない。
ドライバーズシートに腰を下ろした時点で、そんな新しさを顕著に意識させるのが、イグニッションオフではブラックアウトしたままのメーター類だ。後に紹介する新開発の1.5リッターガソリンエンジンを搭載した「TSIハイライン」に、パワーアップした心臓を積む「GTI」、さらには“ちょい乗り”したディーゼルの「GTD」に至るまで、今回テストドライブを行ったすべての試乗車には、ゴルフでは初設定となるフルデジタルメーター「アクティブインフォディスプレイ」がオプション装着されていた。
モードの選択によってさまざまな情報を表示できるこのメーターが、物理的なスイッチを廃して全面ガラス張りとなったダッシュボードセンターの大型ディスプレイとともに、最新ゴルフのインテリアの、新しい表情を生み出す肝であるのは間違いない。
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これまでと同様にイイ
前述のように複数の車種が用意される中で、メインとして乗ったのはいずれ日本にも真っ先に導入されるであろう、ハッチバックボディーで7段DSG仕様のTSIグレードだ。
搭載されるエンジンは、従来の1.4リッターユニットをベースに、昨今フォルクスワーゲンが提唱する“ライトサイジング”のコンセプトに基づいて、排気量を増しつつ新開発された、2気筒休止機構付きの1.5リッター直噴ターボユニット。ちなみにフォルクスワーゲンは、これをベースにミラーサイクルを採り入れた、可変ジオメトリーターボ付きの新エンジン「1.5 TSIブルーモーション」をローンチすることも発表済みだ。
走り始めての、その加速感に対する第一印象は、「これまでのハイラインが積む1.4 TSIと、ほとんど変わらないな……」というものだった。最高出力は10ps増しの150psであるものの、25.5kgmという最大トルクは発生回転数も含めて変更ナシだから、それも当然かもしれない。0-100km/hの加速タイムが8.7秒というデータが示しているように、「踏めばそれなりに速い」ということも実感した。例によってシームレスで素早い変速を行うDSGとのマッチングも文句ナシだ。
前出のアクティブインフォディスプレイとともに、やはり今回の試乗車全車に採用されていたのが、電子制御式可変減衰力ダンパー「DCC」。こちらも動力性能と同様、従来型に対する変化やアドバンテージは特に感じられなかったというのが正直なところだが、それにしても相も変わらず見事なまでにフラットな乗り味と、正確なハンドリングには感心させられた。
一方で「あれっ?」と思ったのは、路面状況の違いに対して妙に敏感にロードノイズが変化したことと、ゴムまりが弾んだ時に出るような空洞音が気になるレベルにあったことだ。現行型のゴルフ7がデビューした当初、ライバル車に対して最も差が感じられたのは、その静粛性だったのだが。
「ゴルフ8」への課題も残る
一方、同じく10psの出力アップが伝えられるゴルフGTIはMT仕様とDSG仕様の双方に試乗した。速くて、軽快で、快適で……と何拍子もそろうこのモデルは、シフトフィールにも優れるMTが痛快! と思える「最も楽しいゴルフ」だった。
最適なシフトが常に自動で行われるDSG仕様で乗るとなかなか分かりにくいものの、MT仕様に乗れば、強力かつフレキシブルなそのエンジンのキャラクターはあらためて明確になる。1000rpm付近まで回転を落としてもそこからのリカバリーは造作のないこと。一方、1800rpm付近から上でのアクセルオンに対しては、いかにも“スポーツ心臓”らしい強靭(きょうじん)さを見せつけてくれた。
「せっかくの機会だから」とディーゼルモデルなどにもつまみ食いで乗ったこともあり、今回のリファインにおける売り物である最新のマルチメディアやコネクティビティーに関しては、じっくり試すに至らなかった。
ただ、日常的に用いるであろうナビゲーション機能の使い勝手などについては、「良いところと悪いところが半々ずつかな」という印象を抱いた。例えば、メータークラスター内への地図の割り込み表示などは、大いに便利と感じる場面もあった一方で、オーディオのボリュームや地図の縮尺変更など、簡単な基本操作でも目視が必要なフラットパネルの使い勝手は、自動車の操作系としては決して優れているとはいえない。
センターディスプレイがドライバー側に傾けられたため、助手席側から見た場合、ドアガラスから入った外光が反射する点も含めて見えにくいことも、課題として残る。そもそも、ゴルフ7開発の段階でこれほどのデジタル化が想定されていたのかは疑問である。
ということで、今回採り入れられたさまざまなアイテムは、数年後の「ゴルフ8」でこそその真価を花開かせるのであろうと、そう感じさせられたことも事実。もちろん、そうはいっても今回のリファインが、最新ゴルフの総合的な商品力をより高めたことは間違いない。
(文=河村康彦/写真=フォルクスワーゲン・グループ/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4258×1790×1492mm
ホイールベース:2620mm
車重:1317kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)225/40R17/(後)225/40R17(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:5リッター/100km(20.0km/リッター 欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4351×1799×1492mm
ホイールベース:2626mm
車重:1386kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:230ps(169kW)/4700-6200rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4600rpm
タイヤ:(前)225/40R18/(後)225/40R18(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:6.4リッター/100km(約15.6km/リッター 欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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