メルセデス・ベンツB180(FF/7AT)/B200(FF/7AT)【海外試乗記】
さらに「Bクラス」らしく 2011.10.06 試乗記 メルセデス・ベンツB180(FF/7AT)/B200(FF/7AT)メルセデス・ベンツのコンパクトモデル「Bクラス」がフルモデルチェンジされ2代目に進化。プラットフォームからパワートレインにいたるまで刷新された新型に試乗した。
大プロジェクトの幕開け
2006年に販売を開始した初代「Bクラス」の販売台数は約70万台。その数はメルセデス・ベンツにとって十分主力に相当するもので、販売終了直近にあたる2011年1〜6月期においても前年比20%以上の台数増を記録したという。無論ここ日本でもそれは、「C/Eクラス」と並び、トップセールスの一翼を担う重要な銘柄だ。
じゃあその兄貴分にあたる「Aクラス」はどうなのよ……となると、このところ鳴かず飛ばずで存在感を弱めつつあるのが正直なところ。今回、メルセデス・ベンツは新たな小型車戦略に基づいて、この新型Bクラスを皮切りにまったく新しいFFプラットフォームとパワートレインを用意した。これを得て後々登場する新型Aクラスが、若い独身ユーザーを想定した相当スポーティーなパッケージへと変貌することは、今年の上海モーターショーで発表されたコンセプトモデルが示唆している。
さらにこのアーキテクチャーを用いたセダンやSUVのプランも半ば公然化するなど、メルセデスは今後数年をかけてこのエントリークラスのバリエーションを相当分厚くしていく構えだ。なんならAMGも動員する構えの総力戦で臨む狙いは、マーケットシェア確保のみならず、先進国において進むメルセデス支持層の高齢化への対処も含まれている。たとえばBクラスの所有年齢層は中国とドイツでは軽く倍以上は乖離(かいり)と聞けば、そこに彼らが手だてを講じない理由はない。
ともあれ、彼らの今後を占う一番の大プロジェクトは、この新型Bクラスの投入で幕を開けたことになる。
“サンドイッチ”よさらば
クラス屈指の使い勝手はそのまま。クラス最高の環境性能は必達。そしてここでも出ました「アジリティ」に富んだ軽快な走り。
彼らの新しいスモールカー戦略においても販売的主軸となるだろう、新型Bクラスのコンセプトはやや欲張り過ぎの感はある。
そのルックスはライト周りに昨今のメルセデスのIDを、そしてサイドのキャラクターラインに新世代のメルセデス・コンパクトのIDを提示したのだろう。が、パッと見は現行型との差異を容易には見抜けない。
しかしプロポーションはがらりと変貌している。言わずもがな、理由はサンドイッチ構造を排したプレーンなFFプラットフォームの採用によるものだ。激変の一端を示す車高は約50mmも低められ、1550mmを若干超えるあたり。サスペンションの設定によっては日本でのタワーパーキングにも対応が可能となる。
その一方で、室内高は従来型を上回るクリアランスを確保している。この変化に伴い着座姿勢はやや垂直寄りの一般的なものとなり、高床ゆえの乗降性の悪さも改善された。ホイールベースが80mm短くなったものの、自慢の広大な室内空間が損なわれなかったのはこういった理由からだ。
と、そこで憂うのがサンドイッチコンセプトの行方。せっかくの前衛的かつ先進的な発想を凡庸化したとは退屈だなぁと思う人もいるだろう。が、そこはメルセデス。ちゃんと手は打っていて、新しいプラットフォームには燃料電池スタックやEV用バッテリーを置くためのアンダースペースをたやすく生み出せる構造を、サンドイッチコンセプトの昇華版として採用しているという。
さすがに後席シート下に設けられるそのスペースは従来型より小さいが、そのぶんバッテリーやスタックの省スペース化は進んでおり、従来の試作車を上回る走行性能は想定してあるというのが彼らの言い分だ。
パワー違いで2種類のエンジン
新型Bクラスに搭載されるエンジンは、当面ガソリンとディーゼルが各2種類ずつ。うち、日本仕様に用意されるガソリンエンジンは、新設計の1.6リッター直噴ターボとなる。最新世代の直噴テクノロジーを採用したそれは、「B180」で122ps、「B200」で156psとなり、トルクはそれぞれ200Nm(20.4kgm)、250Nm(25.5kgm)を共に1250rpm!で発生させるという。まるでディーゼルエンジンのような特性を持つこのユニットは、縦置きにも対応しているとのことで、今後FRモデルへの転用も十分考えられるだろう。
そこに組み合わされるトランスミッションは、コンパクトにまとめられた7段湿式DCT。スタート&ストップシステムと連動し、新型Bクラスの環境性能を後ろ支えする。結果、B180とB200のCO2排出量はどちらもほぼ変わらず140g/km前後に収められた。
ダッシュボード上部やドアの取っ手にまでグルグルとレザーが張り巡らされるインテリアは、表だった豪華さだけでなくその基本質感や触感もしっかりライバルと比肩するところにある。足を投げ出さないアップライトなドラポジのおかげで、「Sクラス」をも上回るという後席の広さは一層際立った印象だ。
「ゴルフ」とはココがちがう
するりと滑らかな走り出しから、速度をじわじわと上げていく過程での変速ショックはもはやトルコン同然でないに等しい。湿式クラッチの採用に加えて、リンケージの制御も滑らかなDCTは、その滑らかさゆえにフォルクルワーゲンのDSGあたりに比べるともっさりした印象を抱く人もいるだろう。が、「ゴルフ」とは一線を画する高級感という、メルセデスが新型Bクラスに託した商品性と考えれば、それも十分納得がいく。
ただしエンジンとの相性はB180とB200とで隔たりがあり、B180では多用する2000〜3000rpm付近での押し出し感が弱い。必要十分ではあるものの、全域でのレスポンスはB200の方に分があるという印象だった。
中・高速巡航からのさらなる速度上昇でも燃費が荒れにくい、そんな印象は車載の燃費計から得たものだが、これはボディ形状からはにわかに信じがたい0.26というCd値がもたらすものかもしれない。このところ、エアロダイナミクスでは他社を大きくリードするメルセデスのノウハウは、新型Bクラスでも充分に生かされている。かえってエンジンルームからの透過音やロードノイズはやや目立つものの、高速巡航での静粛性も及第レベルには達しているといえるだろう。
気になったのは通常の速度域において、電動パワステを介したステアリングフィールと車体の動きとの連携感に若干濁りが感じられる点。原因はフィードバックから察するに、メルセデスの量販クラスとしては初採用となるランフラットタイヤのマスとケース剛性からきているものだと思われる。骨格に由来する根本的なものではないこの癖は、今後走り込みによる熟成によって解決することになるだろう。
一方でコーナリングの素性は、安定性と敏しょう性とがきちんと折り合ったメルセデスらしさが継承されており、大幅な低重心化と路面追従性にたける新設計のサスペンションが生きていることも確認できた。
Cセグメントの車格に圧倒的なスペースユーティリティーを備えた先端的なサルーンという、ライバルとは一線を画したそのポジションはきっちりと踏襲された。新型Bクラスは、今後のファミリー拡大においてもその核を担うだろう。日本上陸は2012年春頃を予定しているという。
(文=渡辺敏史/写真=メルセデス・ベンツ日本)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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