第498回:【Movie】“15年選手”の日産車も大人気!
大矢アキオ、捨て身の路上調査員「ドイツ・エッセン編」
2017.04.21
マッキナ あらモーダ!
炭鉱とオートショーの街で
訪れた街で、実際に走っているクルマをウォッチして、各国の生の自動車事情をお伝えする路上調査員シリーズ。今回は、ドイツ北西部の都市・エッセンで実施した。
選抜高校野球の“学校紹介”にならって、先に街を紹介しよう。エッセンは19世紀初頭から鉱工業で栄えた都市である。日本でも地理の時間に学ぶ「ルール炭田」に属する。市内にあるツォルフェアアイン炭鉱業遺産群は、ユネスコの世界遺産にも指定されている。
数年前、市内の高齢者ホームに住むお年寄りたちと会話した際には、じつに多くの人から「昔は炭鉱で働いていた」と聞かされた。またエッセンは、エレベーターをはじめとする製品で知られる重工業メーカー「ティッセンクルップ」の創業の地でもある。
近年はチューニングカーショー「エッセンモーターショー」や、ヒストリックカーショー「テヒノクラシカ」の開催地としても知られ、それぞれのイベントが欧州最大級に成長している。
さて、今回エッセンの中央駅前で、平日昼間の10分間に通過するクルマをカウントした結果は、以下の通りである。商用車やタクシーは除いている。ちなみに、後者は「メルセデス・ベンツEクラス」が圧倒的多数を占めていた。
1位 フォルクスワーゲン/メルセデス・ベンツ:各12台
3位 オペル/アウディ/フォード:各8台
6位 BMW:7台
7位 トヨタ:5台
8位 日産:4台
9位 ルノー:3台
10位 シトロエン/マツダ/シュコダ:各2台
13位 ダチア/プジョー/セアト/スマート/ホンダ/ヒュンダイ:各1台
このように、ケルンに生産工場をもつフォードも含め、ドイツ勢が6位までを独占。第485回でお届けした北米「ラスベガス編」と比較すると、ブランドの多様性は限られていることに気づく。
それはともかく、街を散策していて驚いたのは、日産の英国工場で作られた2代目「マイクラ」(日本名「マーチ」)をたびたび目にしたことだった。
「K11」といわれるこのモデルは2002年に生産終了しているから、最も若い個体でも15年落ち、いや失礼、15年選手ということになる。
コンパクトでルーミー。新車当時、ボクが住むイタリアでも、わが家の家主が「フィアット126」からの乗り換えを夢見ていたものだ。また、ボクが知る日産ディーラーのセールスマンは、2年ほど前に「今はSUVモデルが好調。でも2代目や3代目のマイクラのような、日産車の入門用も欲しいんだよ」と訴えていた。
2016年のパリモーターショーでデビューし、フランスで生産開始された5代目マイクラが、2代目と同様にヨーロッパの人々からラブコールをもらえるのか気になる。
エンスージアストはともかく、ヨーロッパの一般人の間で日産のイメージを支えているのは「GT-R」ではなく、こうした至極堅実なモデルであることを忘れないでほしい。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)
【Movie】捨て身の路上調査員「ドイツ・エッセン編」
(撮影と編集=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)
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大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナ在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、22年間にわたってリポーターを務めている。『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。最新刊は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。