第14回:走れ、毒ヘビ
2017.04.24 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして 拡大 |
「世界一ケチなバイパーオーナー」ことwebCGほったが、富士スピードウェイでオートクロスに挑戦! 編集部きっての運転ベタは無事東京に帰れるのか? そもそもオートクロスって何? モータースポーツの入門にふさわしいその競技を、8リッターV10のゴーカイな走りとともにリポートする。
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アナタの本気を知りたいの
ことの発端は、さる御仁にかけられた質問だった。
「ほったさん、バイパーで横滑りしたこととかあります?」
いや、ない。あるわけがない。ここのところ物忘れが激しい記者だが、こればかりは間違いなかろう。もし自分がそんな体験をしていたとしたら、うちのバイパーはもっと前衛的なカタチになっているはずだからだ。
かように答えたところ、その御仁はさらにこう続けた。
「こういうクルマは限界性能を知っておいた方がいいですよ。アブないから」
こういうクルマは危ないから、とはいささか強引な理屈だが、当時の記者は「それもそうか」と納得してしまった。ギョーカイ関係者を含め、多数の「俺、バイパーに乗ったことがあるんだぜ!」という御仁から、その後の悲劇を聞かされてきたからだ。某不良漫画風に言うところの、「ハードラックとダンスっちまった」という、アレである。
もちろん、単純にバイパーの動力性能に興味があったというのも事実。そりゃあ16年落ち(購入時)のジジイではあるが、現役当時は世界のレースシーンでブイブイいわしてたスポーツカーですもの。どれほどのもんか、試してみたいじゃないですか。ぐへへ。
かくして記者は、相模原のショップさんが開催する「AUTO X(オートクロス)」なるイベントに参加することとした。日付は2017年3月20日。場所は富士スピードウェイのP2駐車場である。
初心者も気軽にどうぞ
ところで、そもそも読者の皆さまは、本イベントの名称にもなっている「オートクロス」という競技をご存じだろうか? 記者も最近になって初めて体験したのだが、これ、要するにジムカーナである。違う点は、ジムカーナではターンやスラロームの目印としてパイロンが立てられているだけなのに対し、オートクロスではコースの全域にパイロンが並べられていること。これなら鶏頭の記者でもミスコースの不安はナシ。サーキット走行ほどスピードも出ないので、安心してマイカーをシゴき倒すことができる。
しかも、今回のイベントは「あくまで練習会」とのことで、会場にはウエット路面での定常円旋回や、8の字走行のためのスペースも併設。初心者(=記者)がマイカーの限界性能を知るには、最適な内容となっていた。
気になる費用は、事前エントリーで1万5000円。別途富士スピードウェイの入場料も必要となるが、それを含めても社会人の道楽としては適価ではなかろうか。少なくとも、競馬でスるよりゃよほど健康的でしょう。
そんなわけで、編集部きっての守銭奴がめずらしく爽快な気分で身銭をお振り込み。当日は晴天に感謝しつついそいそと武蔵野を出、イベント開始の小一時間前には富士スピードウェイに到着していた。
ゲートにて入場料(1000円)を支払い、構内路を通ってP2駐車場に到着したら、なにはともあれ主催者さまにごあいさつである。ちなみに、本イベントを取り仕切るのはアメ車専門店の「コレクションズ」さん。関東近郊のバイパーオーナーにとってはまさに“駆け込み寺”で、ナンバープレートがへしゃげた折には、記者も駆け込ませていただいた。
もちろん、そうしたお店のイベントなので、参加車両はバイパー濃度高め。社長の本多さんは「こんなに集まるとありがたみがないでしょう?」と笑っていたが、何をおっしゃる。記者のテンションはむしろダダ上がりである。
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バイパーがいっぱい
早速、ヘビどもがとぐろを巻く駐車場の一角に突撃。きっと『マッドマックス』に出てくるような風体の御仁ばかりだろうから、こちらも肩で風切って……と思っていたが、そんなことは一切なかった。“アメ車乗り=アブない人”というのは、今やすっかり偏見である。それどころか、日々の苦労を嘆く記者に、皆率先して「わが家のトラブルQ&A」を伝授してくれた。
中でもありがたかったのが、リモコンキーが利かなくなったときの対処法である。リアの鍵穴を使ってガラスハッチを開け(セキュリティーがピーピー言うが無視!)、そこから腕を突っ込んで非常用の解錠レバーを引く。以前紹介したドアピラーのレバーは、そのためのものだったのだ。
ほかにも、「荷室の雨漏りは水抜き穴の詰まりが原因の9割」「サイドシルを固定しているネジは脱落するので要注意」「対応品が出ているけど、その対応品も脱落するのであきらめろ」などなど……。
皆さんと談笑しつつ、記者はつくづく思った。みんな、このクルマで苦労してんだなあ。
ついでに、話の流れでさるオーナー氏の2代目バイパーに試乗させていただくこととなった。白いマット塗装がまぶしい、“ジェネ4”のコンバーチブルだ。
ちなみに、この“ジェネ●”というのはバイパーの世代を表す用語である。ツウの間では、クルマの世代をビッグマイナーの時期で区切るのがお約束。例えば上述の“ジェネ4”とは、2代目の後期型を指す。わがバイパーは初代の後期型なので、“ジェネ2”。日欧ほどフルモデルチェンジを重視しない(偏見)、かの国ならではの呼び方という感じがしてカッコイイ。
で、その“ジェネ4”バイパーだが、はっきり言って記者の相方とはまったくの別物だった。車体のたてつけはカッチリしているし、エンジンからも「せっかくのパワーがそこらじゅうからダダ漏れ」というムダっぽさが消えている。その代償か、超低回転域の粘りもなくなってしまっていたが、そもそもバイパーはクロカンでもダンプカーでもない。モダンなスポーツカーのエンジンとしてどちらが正しいかと言えば、間違いなくこっちだろう。
オーナー氏いわく「ダイムラーとクライスラーが一緒だったころのクルマだから、それ以前とは全然違いますよね」とのこと。さすがはドイツ人。あのロクデナシをここまで更正させるとは……。
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バイパー、富士に散る!?
かようなオーナー同志の交流も楽しかったのだが、いやいや、今回の目的はあくまでわが相方をシゴき倒すこと。ブリーフィングが終わったら、記者はさっそく水がまかれた定常円旋回コースに向かった。世に言う“ドリフト”ってやつをやってみたかったのだ。しかし、長年にわたりFFの小市民カーをめでてきた人間が、いきなり華麗なテールスライドなんぞできるわけがない。ABSをガーガー言わせつつアンダーステアとオーバーステアを繰り返すばかりで、しまいには乗り物酔いでグロッキーになってしまった。
おのが優秀な三半規管を呪(のろ)いつつ、しばし休憩。もう定常円旋回はこりごりなので、8の字コースでコーナリングの感覚を思い出しつつ、早々にオートクロスに挑むこととした。
ちなみに、コースレイアウトは本ページの写真(写真A)のごとし。左下の入り口からコースに入り、どんつきで90度右折。180度ターンを2度繰り返したら、インフィールドをぐるりと回って右下の出口でゴール。というものだ。
前の走者がゴールから出ていくのを見届けると、いよいよ記者の出番である。おもむろにブレーキからガスペダルに足を移し、グリップ感を探りつつ「ずわっ」とペダルを踏み増す。いきなりどーんと踏まないのは、そんなことしたら老齢のミシュランさんが白煙を上げるからだ。で、ある程度速度が乗ってきたらごりっと2速にシフトアップ。……本気の方からしたらヌルい乗り方かもしれないが、さすがは8リッター、さすがはV10、記者的にはビビるほど速い。
あっという間に第1コーナーが迫り、「この辺かしら?」と想定していたブレーキングポイントに差し掛かる。「どれどれ。同志たちにアウディ田部さん直伝のブレーキングを見せてやるか」などとひとりごちつつ、ブレーキをべたんこ。たちまち前輪がロックして、盛大に黒煙を噴き上げた。
迫るパイロン、突っ込むバイパー、記者の頭を走馬灯が駆け巡った。
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“ミニ乗り”の記憶に救われる
しかし、走馬灯のおかげで記者は思い出した。こんなときはブレーキを緩めるのだ。ミニもそうだったではないか! ……たぶん。
パイロンへ向けて突進しながらブレーキを緩めるという矛盾行為に、歯が浮く。しかし、そのかいあってか前輪はグリップを取り戻し、記者はどうにか最悪の事態……すなわち、「本日のパイロンシューター第1号は、webCGの関係者だってよ。ぷぷぷ」と後ろ指をさされることだけは避けられたのだ。
それにしてもである。定常円旋回ではあれだけガーガー言っていたのに、ABSは今何をやっていたのよ? その気まぐれっぷりを他の参加者にグチったところ、「何言ってんですか? この時代のアメ車の電子制御なんて、アテにしちゃだめですよ」と一笑された。なんというか、皆さんホントにたくましい方々である。
そんなわけで、午後からは「俺のバイパーにはABSは付いてない」(ちなみに、初代の前期モデルにはホントに付いてない)と思い込んでコースに挑戦。「このクルマは、やたらとパワフルなFRのミニだ」と言い聞かせつつ各種操作にいそしんでいたら、ようやく、なんとなくコツがつかめてきた。
そして、わがバイパーの問題点もつかめてきた。
いい加減タイヤを交換しなさい
第7回でリポートした通り、公道でちょっと冒険するくらいならなんの問題もないわがバイパーだが、そこからさらに速度を増すと、まあ曲がらない。止まらない。おまえホントにルマンの覇者か? と問いただしたくなるレベルである。
しかし、後日もろもろの症状をデスクの竹下に伝えたところ、「それは(クルマじゃなくて)、たぶんタイヤのせい」と冷静な指摘を受けた。
「タイヤがすぐにロックするのは、だいたい(タイヤの)グリップ力が足りていないから。本当にブレーキがプアーな場合は、ブレーキの摩擦力でタイヤの回転を止めることができない=タイヤは回っているわけだから、操舵のコントロール性まで失われることはないはずなのよ。ほった君のバイパー、まずはタイヤを交換してみるだねえ……」
さすがはフィオラノで「フェラーリ488GTB」をブンまわした男である。ウンチクの重みが違う。そして、やはりタイヤを交換しないことにはバイパーの運動性能は推し量れないようである。記者の無精によりモヤモヤした結論となってしまい、申し訳ない。反省しております。
一方、そんな中でも「ホント、バイパーはすげえな!」と素直に喜べた部分といえば、月並みだけど、結局のところ、やっぱりエンジンだった。なにせ「180度ターンの手前でがっつりブレーキング→ターン出口で再加速」というシチュエーションでも、シフトダウンの必要ナシ。クラッチでいろいろ逃がす必要もナシ。ギアは常時2速でもトップスピードに不足はなく、ブレーキから足を離せばそれだけでグイッと車体が前に出る。運転がしやすいし、速い。
記者はあらためて思い知った。気筒数は真理、排気量こそ正義であると。イモータン・ジョーなき今、ウォーボーイズにはぜひV10をあがめていただきたい。
なんというか、今回はちょっとIQ低めのオチとなってしまったが、この走行会で記者がよりバイパーのことを理解できたのは事実。次回はぜひ、万全のコンディションで挑ませていただきたい。
……などと言っていたら、オートクロス事務局のオフィシャルサイトに早くも次回のスケジュールが載っていた。まじか、6月4日かよ。タイヤ貯金間に合うかな?
(webCG ほった)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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