第39回:最新ディーゼル4台イッキ乗り!
おデブなMINIってアリなのか?
2017.05.02
カーマニア人間国宝への道
最新ディーゼルのお勉強
これまで1年近くにわたってディーゼルエンジンについてダラダラと書いてきたが、「そろそろ総括したらどうか」という編集部の追い込みにあい、最新のディーゼルモデル4台に一度に乗ることができました。
●MINIクーパーSD クロスオーバーALL4/483万円
●プジョー308SW GT BlueHDi/378万8000円
●メルセデス・ベンツGLC220d 4MATICクーペ スポーツ/775万円
●メルセデス・ベンツS300h エクスクルーシブ/1283万円
価格を見ると、「5年以内に中古で」ぐらいに考えても、メルセデスの2台は到底ムリ。つまり私の守備範囲ではないが、頂点を知らなければ底辺も語れないという法則に従い、乗らせていただきました。
まず乗ったのは「MINIクロスオーバー」。その頂点モデルである「クーパーSD」の四駆だ。エンジンは「BMW 320d」などでおなじみの2リッター190ps、トルク400Nm。こりゃスゲエ。
見た目はまさにキープコンセプト。いやこれはキープコンセプトっていうんじゃないね。サザエさんの顔の経年変化とかそんな感じ。サイズはぐっと大きくなっているが、クロスオーバーはもともとデブだったので、そっちもあまり感じない。
先代は“ガマンのクルマ”だった
先代クロスオーバーのディーゼルモデルは、エンジンが旧々々世代(?)ぐらいの使い回しで、「D」が112ps、「SD」でも143psしかなかった。
BMWのディーゼルが日本に初上陸したのは320dから。あの力強く軽快でエリート感満点のフィーリングと比べると、先代MINIクロスオーバーのソレは、「こんなのあったんだ!?」と愕然(がくぜん)とするくらいトラックみたいに鈍重でやかましかった。特に「D」の遅さは衝撃的で、学生時代(つまり35年くらい前)、先輩の「日産ローレル ディーゼル」に乗せてもらったのを思い出したほどである。昔はディーゼルって本当にガマンのクルマだったからなぁ。取りえは燃費だけで。
BMWの旧世代ディーゼルは、燃費もイマイチだった。クロスオーバーDのFFでJC08が16.3km/リッター。それで341万円もしたんですよ! SDは387万円。高い! BMWのディーゼルの割には安かったのかもしれないが、マツダの爪の垢(あか)を煎じて飲ませてやりたいと思いました。
それでもクロスオーバーのディーゼルモデルはよく売れたという。もはやBMWの働くクルマ系(ワゴンやSUV)はディーゼルじゃなきゃ! という流れが完全にできているようだ。
それが証拠に、今度のクロスオーバーはディーゼルのみ! 夏にはプラグインハイブリッドも入る予定だが、販売の90%以上をディーゼルモデルが占めるのは間違いないだろう。
“ミニ”なのにデブという衝撃
とまぁ先代の悪口でずいぶん引っ張ったが、新型のSDに乗り、アクセルをひと踏みしてビビリました。
メッチャ速い! こりゃひと踏みぼれ!
アイドリングでのディーゼル音はけっこう大きい。圧縮比は16.5でそれほど高くはないし、もちろん先代よりは大幅に静かだが、それでも静かな浜辺でエンジンをかけると、うわー公害だーという気分になる。
しかし走りだせばこっちのもんで、とにかくグワッと押し出されるトルクが痛快! この瞬間がディーゼルだよね!
車重はけっこうある(1630kg)。ボディーサイズが一回りデカくなってさらに太ったMINIクロスオーバーは、四駆ということもあり、BMW 320dより重いのだ! MINIなのに!
そういうところにどうにもならない本末転倒感もあるのですが、しかしこんだけグワッと加速してくれて乗り心地も良くなってて広くなってりゃ、まぁ文句はないでしょうかね? 先代SDより約100万円高くなったのも納得か。いや、先代が高すぎたんだよ! それと比べちゃいけない。
それより私としては、ようやく300万円を切ってきた「320dツーリング」の中古を狙いたい。190psなんてゼイタクは言わない。マイチェン前の184psで十分です。
来年あたり? 「3シリーズ」がフルモデルチェンジすれば、相場はさらに下がるはず。そこが狙い目ではなかろうか? MINIクロスオーバーは先代も新型もパス! 以上。
(文=清水草一/写真=池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
-
第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
-
第315回:北極と南極 2025.7.28 清水草一の話題の連載。10年半ぶりにフルモデルチェンジした新型「ダイハツ・ムーヴ」で首都高に出撃。「フェラーリ328GTS」と「ダイハツ・タント」という自動車界の対極に位置する2台をガレージに並べるベテランカーマニアの印象は?
-
第314回:カーマニアの奇遇 2025.7.14 清水草一の話題の連載。ある夏の休日、「アウディA5」の試乗をしつつ首都高・辰巳PAに向かうと、そこには愛車「フェラーリ328」を車両火災から救ってくれた恩人の姿が! 再会の奇跡を喜びつつ、あらためて感謝を伝えることができた。
-
第313回:最高の敵役 2025.6.30 清水草一の話題の連載。間もなく生産終了となるR35型「日産GT-R」のフェアウェル試乗を行った。進化し、熟成された「GT-RプレミアムエディションT-spec」の走りを味わいながら、18年に及ぶその歴史に思いをはせた。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。