アウディQ2ファーストエディション(FF/7AT)
小さくてもエリート 2017.05.18 試乗記 アウディのSUVファミリーである「Qシリーズ」に、最もコンパクトな「Q2」が登場。「今後の販売の柱」と位置づけられるニューモデルの実力を、装備充実の1.4リッターモデルで確かめた。アウディの苦悩を感じるデザイン
アウディQ2という車名には、深い意味があるのだろうかと一瞬思いました。アウディにとって「2」という数字は欠番だったので。かつては「A2」が存在したが、あれが生産中止になってからは2がない、たぶん。1、3、4、5、6、7、8とあるのに2がない。その2がついに登場! よっぽど満を持しての登場なのかと。
しかしどうもそうではないらしい。プラットフォームは「A1」ではなく「A3」と共通だが、エンジンはA1でおなじみの1リッター3気筒ターボが主力。だから真ん中を取ってQ2。なにせ「Q3」はもうあるし。そういうことなのだろう。
サイズも確かに“2”だ。A1よりはかなり大きいけれどQ3よりは確実に小さい。全高が1530mmしかないのでコンパクト感は相当強い。おかげで立体駐車場にも入る(幅があるので、全部ではないですが)。
コンパクト感が強いと見た目の押しは弱くなるが、そこはスタイリングで補っている。「ポリゴン(多角形)をモチーフにしたデザイン」とのことだが、ポリゴンと聞いて思い出すのは「ランボルギーニ・アヴェンタドール」。傘下ブランドの圧倒的な押しを一部移植ということか。
フォルムを見ると、アウディデザインのもがきを感じる。一時代を築きまくったアウディの緻密・清潔デザインだが、次のステップへの脱皮に苦しんでいる。もう上品ぶってもいられない、ちょっとエグいくらいにしないと殻を破れない。Q2はサイズも小さいし、多少羽目を外してもよかんべ。そういうことで調和より大胆で目立つ造形を多用している。つまりアウディの「ジューク」ですね!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
よく見れば“いいお値段”
グリルは六角形から八角形になってどことなくバランスが崩れ、フロント両サイドのエアインテーク状のポリゴンも崩れた形状で目を引く分、車体幅を広く見せるのに役立っている。
極めつけはリアピラーがシルバーに塗色されていることだ。これを「ブレード」と呼ぶそうです。明らかな違和感狙いの存在感増し。さすがにジュークほどはじけられないけど、アウディとして精いっぱい羽目外してみました。そういうことでしょう! サイドのウエストラインを一部ノミで削り取ったような部分も、「ガチャガチャしてるな」という微妙な違和感で人の潜在意識に働きかける高等戦術とお見受けしました。
価格は300万円を切る299万円から。アウディとしては猛烈に安い! ただこの最廉価グレード(1.0 TFSI)は、リアピラーがボディー同色で「ブレードなし」です。なんか差をつけられた感がありますね。結局ほとんどの人が一番下は買わない気がします。
ただ、その上の1.0 TFSIスポーツは大幅に高くなって364万円に。そして今回乗ったのはQ2発売記念の導入限定モデル「ファーストエディション」だ。エンジンはQ3でもおなじみの1.4リッター4気筒ターボに格上げとなり、フル装備で490万円! この瞬間がアウディだよね。せめてもの救いは、この限定モデルはフル装備すぎて、オプションがのってないことでしょう。
あらゆる面でストレスフリー
アウディのニューモデルに乗るたびに、「足硬いな……」と辟易(へきえき)するのが定番だったのは、何年くらい前までだったか。今でも条件反射で身構えて、路面からの突き上げが内臓にこないように腹に力を込めてしまうが、Q2の足まわりはかなりしなやかだ。
もちろんアウディなのでエリートっぽいスポーティーさは健在ながら、内臓にダメージを食らいつつ「これがエリートのノブレスオブリージュ」と耐える必要はない。Q2の足のセッティングは、日常性とエリート感のいい感じの妥協点だ。ドライブモードを「コンフォート」にするとさらに少し日常寄りになって、これなら体幹鍛えてない民草でもOKなレベルです。個人的には、ワインディング含めあらゆるシーンでコンフォートが良かった。
SUVとしてはかなり全高の低いQ2だが、その恩恵はフツーに走っていても実感できる。重心が低くてステアリングレスポンスがシャープだし、段差を斜めに乗り越えるようなシーンでも、体が左右に揺すられる度合いが小さい。ぶっちゃけフツーの乗用車レベルと言っていい。その分見晴らしもかなりフツーだが、乗降性もイイので、個人的にはSUVはこれくらい低めが好きです。
エンジンは前述のように4気筒1.4ターボ。いまさら書くまでもないおなじみのパワーユニットで、相変わらず性能はしっかり出ている。低い回転からトップまで太いトルクが湧き出し、トップエンドの吹け上がりも十分スムーズ。特に快感のようなものはないけれど、ストレスはまったくないし動力性能は十分という仕事人だ。
クワトロを思わせる安定感
エンジンの小ささと軽さは、軽快な身のこなしも生んでいる。重心も低めだけどノーズも軽い。重量配分はもちろんフロント寄りだが、体感的には4輪に均等に重量がのって自由自在に曲がる感じ。決してリアは出ないけどフロントも逃げない。飛ばすほどに足はしっとりしなやかに感じられ、「これがエリートの世界やね」と納得させられた。実は試乗中はクワトロだと思いこんでいたのですが、Q2はいまのところ全車FF! マジで!? すごい4輪の張り付き感だ。
高速巡航では少し動きがシャープすぎる感じもありますが、なんせコンパクトSUVなのでこれでいいと思います。走りに関しては文句ない。「どうでした?」と問われれば「言うことナス」と返すしかない。
これでエンジンが3気筒の1リッターターボだとどうなるのだろう。さらに重心は低くなりノーズは軽くなり、そこらの四つ角を曲がるだけでもある種の甘美さが生まれたりするのではないか。あの3気筒ターボエンジンは、無味無臭な仕事人である4気筒ターボより「コロロロロ~」と回転フィールに快感があった。パワーは小さいけどそっちの方が気持ちいいのではないかと個人的には予想します。
さすがにA1ではちょっと小さすぎるし狭すぎるし3ドアだから不便、と感じる富裕層の奥さまにとって、5ドアのQ2は、後席のスペースにもご満足いただける余裕がある。なんせベースはA3なので、足元の広さはそれに準じ、頭上空間はA3以上。後席に座ると床面がヤケに低く、お子さまや小柄な女性は、足の裏がぺったりつかなくて疲れるかもという懸念はあるが、そこがOKなら、Q2はアーバンなファミリーカーとして、皆さまのステキな足になるでしょう。言うことナス。
(文=清水草一/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
アウディQ2ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4205×1795×1520mm
ホイールベース:2595mm
車重:1340kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92W /(後)215/50R18 92W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:17.9km/リッター(JC08モード)
価格:490万円/テスト車=490万円
オプション装備:なし ※テスト車「Q2ファーストエディション」の主な装備:オプションカラー(タンゴレッドメタリック)/オートマチックテールゲート/バーチャルコックピット/セーフティパッケージ(アクティブレーンアシスト+トラフィックジャムアシスト+サイドアシスト+リアクロストラフィックアシスト+ハイビームアシスト+プレセンスベーシック)/ナビゲーションパッケージ(MMIナビゲーションシステム+スマートフォンインターフェイス+8スピーカー)/デコラティブパネルフォーマット(アンビエントライティング)+アンビエントライティングステアリング+ホイール3スポークレザー マルチファンクションシフトパドルフラットボトム+S lineパッケージ(S lineステアリングホイールエンブレム+ヘッドライニングブラック+ドアシルトリムS line+ステンレススチールフットペダル+クロス・レザーシートS lineロゴ+S lineエクステリアロゴ+スポーツバンパー+スポーツサスペンション+アルミホイール 5スポークYデザイン 7J×18 215/50R18タイヤ)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:964km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。


















































