MINIジョンクーパーワークス クラブマン(4WD/8AT)
あくまでもドライバーファースト 2017.06.10 試乗記 「MINIクラブマン」に追加されたホットモデル「ジョンクーパーワークス」に試乗。ワゴンボディーがもたらす高い利便性と、“JCW”専用チューニングによる高い走行性能は果たして両立するのか。340kmあまりのドライブで得られた結論とは?偉大なエンジニアの名を持つ
「目地段差キツいっすよ!」
試乗車を受け取りに行くと、編集部Fクンから忠告された。なぜだろう? 乗るのはMINIクラブマンだと聞いていた。ハッチバックモデルの全長を伸ばし、リアに観音開きドアを持つステーションワゴンである。MINIの中でもライフスタイル寄りのモデルだ。ハードな乗り味のはずがないと思ったのだが、実車を見て疑問は氷解した。ボディーには「John Cooper Works」のバッジが誇らしげに輝いていたからだ。
MINIジョンクーパーワークス クラブマンは、たくさんのバッジで飾られている。数えてみると、「Clubman」はリアに1つあるだけで、「ALL4」が2つ、「MINI」がフロント、リア、ステアリングホイールに1つずつで計3つ。「John Cooper Works」は、フロントグリルとリアに1つずつ、左右のサイドスカットルに2つ、ホイールに4つ、ブレーキキャリパーに2つ、内装ではステアリングホイールに1つ、速度計の中に1つ、サイドシルに2つ、前席シートバックに2つ。合計16個である。バッジの数からすると、このクルマは圧倒的にジョンクーパーワークス濃度が高い。
MINIラインナップのトップパフォーマンスグレードを意味するジョンクーパーワークスは、自動車レースの歴史に名を刻む、偉大なエンジニアのジョン・クーパーに由来する名前だ。彼はF1のコンストラクターとして初めてミドシップマシンを投入して大成功を収め、レースの常識を変えてしまったことで知られる。
彼は経済的な大衆車だった「クラシックMINI」のポテンシャルを見抜いた。高度なチューンを施してラリーやレースに参戦し、目覚ましい戦績を残している。MINIの高性能モデルが「MINIクーパー」と呼ばれるゆえんだ。さらにスポーティーなモデルのために作られたのが、ジョンクーパーワークスというグレードである。
全MINIの中でも屈指の高額モデル
ジョンクーパーワークスを名乗るモデルはクラブマンのほかに「3ドア」「コンバーチブル」、そして最近追加された「クロスオーバー」があり、いずれも直列4気筒2リッターツインパワーターボエンジンを搭載する。ツインの名が付いているが、タービンが2つあるわけではない。直噴と可変の技術が使われているという意味だという。少々わかりにくいが、とにかく231psというありあまるパワーを発揮する。
1959年に経済的なミニマムカーとして登場したMINIだったが、人気モデルとなってバリエーションを増やしていった。多くの荷物を積むことのできる「トラベラー」「カントリーマン」というエステートモデルが作られ、近代的な意匠のクラブマンに引き継がれたのだ。
新世代MINIでは、2代目モデルで2007年にクラブマンが追加されている。右側だけに小さなリアドアを持つ変則的なスタイルだったが、3代目では左右に通常方向に開くリアドアを備えるようになった。リアに観音開きの2ドアがあるから、6ドアモデルである。全長は先代の3980mmから4270mmに伸ばされており、堂々たるサイズのステーションワゴンとなった。小さいサイズのMINIにも5ドアモデルがあるが、荷室容量は278リッター。360リッターのクラブマンには大きなアドバンテージがある。
クラブマンにはガソリン車5種、ディーゼル車2種があり、ジョンクーパーワークスは最強のエンジンが与えられる上にALL4と呼ばれる四輪駆動システムを搭載している。MINIラインナップ中、最高価格の座は556万円の「ジョンクーパーワークス クロスオーバー」に譲ったが、510万円というのは230万円の「MINI ONE」からすればクラス違いだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
SPORTモードでレスポンス向上
内外装は価格に見合うゴージャスな仕立てである。スポーティーなデザインのバンパーなど、エアロダイナミック・キットが装備され、専用デザインの19インチアロイホイールが標準だ。内装では赤のステッチを施されたダイナミカレザーコンビネーションスポーツシートが採用された。
試乗のために箱根を目指すと、まずは首都高速3号線を通ることになる。目地段差が連続することで知られる道であり、早速荒々しい洗礼を受けることになった。リズミカルに腰への衝撃がやってくる。収まりがいいから不快感は少ないのだが、長く乗っているとダメージが蓄積しそうだ。
シフトセレクターを囲むように設けられているリングで、「SPORT」「MID」「GREEN」という3つの走行モードを切り替えることができる。ダンピングコントロールと連動しているので、GREENかMIDを選べばSPORTモードよりは柔らかい設定になるらしい。ただ、目に見えて快適になったかというと、そうでもなかった。ジョンクーパーワークスは、際立ったゴーカートフィーリングを楽しむためのモデルなのである。
SPORTモードでは、エンジンも戦闘態勢に入る。320Nmの最大トルクが350Nmまで高められるのだ。不穏な音を奏でるようになり、明らかにレスポンスが向上する。追い越し車線に出ると、前を行くクルマに道を譲られることが多かった。フロントグリルの下方の赤いラインを見て、ハイパフォーマンスモデルだと気づいたのだろう。
ドライバーの正面には大きな円形のスピードメーターがある。回転計は左脇の三日月型なので少々見にくい。この問題は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を活用することで解決する。設定によって目の前に直感的な表示を出現させることができるのだ。ただ、HUDの角度が合っていないと見るのに苦労する。調整のボタンを探したが、見当たらない。インフォテインメントシステムを使って操作しなければならないのだ。メニュー→車両設定→システム設定→ディスプレイ→ヘッドアップディスプレイ→高さと、6段階の操作でようやく調整が可能になる。
高速道路でも山道でも使えるACC
目地段差の少ない、普通の高速道路では乗り心地の悪さも解消する。フラットな路面をハイスピードで走るのは得意分野だ。ただし、クラブマンは観音開きのリアドアの桟のせいで、後方視界が悪いことを忘れてはいけない。覆面パトカーや白バイを気にしなければならないような走りはもちろんNGである。
巡航時には、走行モードをGREENに設定し、アダプティブクルーズコントロール(ACC)をオンにして走ればいい。自動で加速する際のレスポンスがいいので、ストレスなくおまかせ走行ができる。8段ATが滑らかな変速で快適なドライブをサポートしてくれるのだ。ワインディングロードに入ったらSPORTを選ぶ。タイトなコーナーでもほとんどロールを感じることなく、活発な走りを楽しめる。8段ATは、スポーツ走行でもいい仕事をしていた。
交通量が多くなってくると、山道でもクルマが連なってアヒル走行になってしまう。おとなしく後をついていくしかないのだが、ACCを試してみたら問題なく機能した。さすがに任せきりにするのは不安だが、十分に実用になるレベルである。
クラブマンは、5人乗車でも余裕のある荷室スペースが確保された実用的なモデルである。観音開きのバックドアは使い勝手がよく、危険のないように2段階で開く設定になっているところなどは配慮が行き届いている。だからといって、ファミリーカーとしても使えるとはいいにくい。その乗り心地の悪さゆえ、後席の乗員に受け入れてもらえない可能性がある。クラブマンには、もっと家族に優しいグレードも用意されている。ジョンクーパーワークスは、ドライバーファーストの思想が貫かれたモデルだということを忘れてはいけない。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
MINIジョンクーパーワークス クラブマン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4270×1800×1470mm
ホイールベース:2670mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231ps(170kW)/5000rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1750-2750rpm
タイヤ:(前)225/35R19 88Y XL/(後)225/35R19 88Y XL(ピレリPゼロ)※ランフラットタイヤ
燃費:14.2km/リッター(JC08モード)
価格:510万円/テスト車=575万9000円
オプション装備:ボディーカラー:レベルグリーン(11万6000円)/ダイナミカレザーコンビネーション(0円)/INTERIORパッケージ(15万円)/ランフラットタイヤ(0円)/アラームシステム(5万5000円)/ブラックルーフ&ミラーキャップ(0円)/MINI Yoursインテリアスタイル:ファイバーアロイイルミネーテッド(4万3000円)/ドライビングアシストアダクティブクルーズコントロール(6万円)/アダプティブLEDヘッドライト(2万5000円)/パーキングアシストパッケージ(5万5000円)/ハーマンカードン製HiFiラウドスピーカーシステム(12万3000円)/ブラックスポーツストライプ(3万2000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:1871km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:343.2km
使用燃料:40.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.5km/リッター(満タン法)/8.6km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。















































