【フランクフルトショー2017】メルセデスブースの主役はEVと“公道のF1マシン”

2017.09.13 自動車ニュース 櫻井 健一
「メルセデスAMGプロジェクトONE」
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フランクフルトショー2017でのメルセデスブースの内容は、まさに多様化という言葉がふさわしい。プレスカンファレンスでは、電気自動車(EV)や燃料電池車などがステージに上ったかと思えば、“公道走行可能なF1マシン”を標榜(ひょうぼう)するハイブリッドスポーツカーが登場して喝采(かっさい)を浴びた。

プレスカンファレンスでは、冒頭でダイムラーのディーター・ツェッチェ会長が登壇。
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「メルセデス・ベンツS560e」はセダン、クーペ、カブリオレの3バリエーションが披露された。
「メルセデス・ベンツS560e」はセダン、クーペ、カブリオレの3バリエーションが披露された。拡大
「スマート・ビジョンEQフォーツー」
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「スマート・ビジョンEQフォーツー」のお披露目は、ミュージカル風の演出が施されていた。
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次世代モデルの「CASE」とは、Connected(つながるクルマ)、Autonomous(自動運転)、Shared & Service(カーシェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取ったもの。
次世代モデルの「CASE」とは、Connected(つながるクルマ)、Autonomous(自動運転)、Shared & Service(カーシェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取ったもの。拡大
「コンセプトEQA」
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「メルセデス・ベンツGLC F-CELL」
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「メルセデスAMGプロジェクトONE」
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「メルセデスAMGプロジェクトONE」
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「コンセプトEQA」
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ディーゼルに対する投資を継続

世界最大級のモーターショーとして奇数年の秋に開催されるのが、ドイツのIAA(Internationale Automobil-Ausstellung:独語で「国際自動車ショー」の意)、通称フランクフルトモーターショーだ。

会場となるフランクフルトメッセの広さやその出展台数は、“世界一のモーターショー”と紹介することに躊躇(ちゅうちょ)はない。メインゲート近くにあるダイムラーグループが使用する2号館とF2館(中でつながっている)から、その反対に位置するBMWグループの11号館までは、普通に歩けば軽く15分はかかりそうな距離なのだ。筆者はメルセデスのプレスカンファレンスで一緒になった地元ドイツのメディアの人から、「距離はそれくらいだが、人が多いから(到着まで)20分は見ておいた方がいい」とのありがたいアドバイスも頂戴した。

そのダイムラーが擁するメルセデス・ベンツ/メルセデスAMG/メルセデス・マイバッハ、そしてスマートの展示は、トピックスにあふれていた。プレスカンファレンスでは、冒頭でダイムラーのディーター・ツェッチェ会長が登壇。フォルクスワーゲン(VW)グループに続き、ディーゼルエンジンの排ガス問題で揺れた同社だが、そんな流れを払拭(ふっしょく)するかのように、「ディーゼルエンジンは、二酸化炭素削減には有効なパワーユニットである点は揺るがない。今後もより効率のいいディーゼルエンジンを開発するための投資は継続する」とコメント。VWグループが、ディーゼル色を漂わせないように配慮した出展を行ったのとは対照的に、電化だけでなく既存の技術もさらに磨いていくという前向きな姿勢を示した。

さまざまな電動化技術を披露

さて、イベントのトップバッターとしてプレスカンファレンスでワールドプレミア(世界初公開)されたモデルは「メルセデス・ベンツS560e」。これは、「Sクラス」ベースのプラグインハイブリッドモデルで、セダン、クーペ、そしてカブリオレの3バリエーションを有す。

続いてステージでお披露目されたのは、スマートブランドの未来を予告した「スマート・ビジョンEQフォーツー」だ。メルセデスが2016年のパリモーターショーで発表した次世代モデルの「CASE」と呼ばれるコンセプトの下に開発された車両で、クルマの新しい使い方を提案している。ステージではミュージカル風な演出で、コネクティビティー(スマホで車両位置を確認)を用いたカーシェアと、自動運転(呼び出した人のところに無人のEQフォーツーが自動でやってきて、さらに目的地に自動運転で到着)の様子が表現され、都市部でのクルマの使い方について具体的な使用イメージが紹介された。

その次に登場したのが、メルセデスの新しいサブブランド「EQ」のニューモデルである「コンセプトEQA」だ。EQは、ご存じのとおりEVのためのサブブランドで、こちらも2016年のパリモーターショーで発表された。パリでワールドプレミアされたのはSUVクーペの「ジェネレーションEQ」だったが、今回は車名末尾のアルファベットが示すように、同じプラットフォームやパワーユニットモジュールを使用したコンパクトカーの登場が示唆されている。EQブランドのモデルレンジがこれから拡大していくという主張が込められているといえそうだ。

SUVの「GLC」ベースの燃料電池車「GLC F-CELL」では、燃料電池とプラグインハイブリッドを世界で初めて組み合わせ、エネルギーダイバーシティー(燃料の多様化)への対応を印象付けた。EVの弱点である航続距離や充電時間を解決する水素で走る燃料電池車に充電式のバッテリーシステムを加えたことで、より効率よく走ることができる。ちなみにバッテリーだけの走行距離は50kmと発表されている。

“公道走行可能なF1マシン”が登場

ここまででもニュースとして十分なラインナップといえそうだが、本命は最後に現れた。メルセデスのサブブランド、AMGが開発した公道走行可能なF1マシンを標榜する「メルセデスAMGプロジェクトONE」だ。エンジンは1.6リッターのV6で、これに4つのモーターを組み合わせて4WDとしている。エンジンはF1マシンのものをほぼそのまま搭載し、ハイブリッド化することで最高出力は1000psに達する。その最高速度は約350km/h。0-200km/h加速については6秒と、市販車最速をうたう「ブガッティ・シロン」の6.5秒を凌駕(りょうが)するパフォーマンスを備える。

価格は227万5000ユーロという設定で、生産台数は275台を予定。日本円に換算すると約3億円というこのハイパーカーは、同じ「公道を走るF1」というコンセプトで開発が進む「アストンマーティン・ヴァルキリー」の良きライバルになるはずだ。今後、他社からも同セグメントのモデルが登場しそうという期待も募る。ちなみに正式な販売は、2018年中盤以降とのことである。

電動化を中心に、利便性や環境適合性を訴えるだけでなく、走る楽しさや所有する喜びも忘れないメルセデスのコンセプトモデルたちからは、自動車を発明したブランドという自負と、真剣にモビリティーの未来を考えているというメッセージが感じられた。電化がクルマのキーワードになっても、クルマの楽しさは決して失われることはない。そんな印象をあらためて持った、メルセデスがプロデュースするたっぷり45分間のステージだった。

(文=櫻井健一/写真=ダイムラー)

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