アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(前編)

2017.10.07 谷口信輝の新車試乗 谷口 信輝 レーシングドライバーの谷口信輝が歯に衣を着せず、本音でクルマを語り尽くす! 今回の主役はアウディのフラッグシップオープンモデル「R8スパイダー」である。取材当日の天候はあいにくの雨。540psものパワーを誇るスーパースパイダーは、箱根のワインディングロードでどんなフットワークを披露するのだろうか。

自分からグイグイ曲がっていく!

「チクショー……」
ほとんど聞き取れないくらい小さな声だったが、谷口信輝はたしかにそうつぶやいていた。
webCGのようなウェブサイトでは本来使ってはいけない言葉だが、よくよく谷口の表情を見てみれば、その意味合いとは裏腹に妙にうれしそうな笑顔を浮かべている。

「チクショー」 繰り返しそうつぶやく谷口に、なぜ“チクショー”なのか尋ねてみた。すると「だってオオタニさんが『どうだ、R8スパイダーいいだろう。文句があるなら言ってみろ!』という顔をしているんだもん。だから一生懸命アラを探したんだけれど、正直“ぐう”の音も出ない。このクラスのスーパースポーツカーとしてはダントツで、ライバルたちがかすんじゃうくらい、メチャクチャいいね。文句のつけどころがない。だから悔しい。チクショーなんですよ(笑)」

ああ、それだったらよかった。では、どこがどんな風に“チクショー”なのか、もう少し詳しく説明してもらおう。
「まず、フロントもリアも接地感がバツグンにいい。今日は雨で路面もぬれているから、この手のスーパースポーツカーを走らせたら緊張感を覚えてもおかしくないけれど、R8スパイダーに乗っていると『あれ? ここ本当にぬれているの?』っていうくらいの安心感が味わえるんです」

安定性重視と聞くとアンダーステア傾向のクルマを想像されるかもしれないが、R8スパイダーはここでもドライバーの予想を裏切るという。
「普通、ある程度のペースでコーナーに進入すると、ぐっとステアリングを切っても思ったほど曲がらなくて、少し切り増したりするじゃないですか。ところがアウディは自分からグイグイ曲がっていこうとするので、反対にステアリングを少し戻したくなるくらい。思わず『いいよいいよ、そんなに曲がらなくても……』って言いたくなっちゃいました」

それじゃあまるでトルクベクタリングが過剰に利いた、人工的な味付けのコーナリングのように思えるが、実際はどうなのか?
「いや、多少は利いているのかもしれませんが、まったく不自然じゃないし、イヤな感じもしない。楽しいか楽しくないかで言ったら圧倒的に楽しいし、最初に言った『チクショー』の半分くらいはコーナリングが楽しかったことの“チクショー”(笑)。だって、コーナリングに余裕があるから、『これだったらもっと攻められるな、もっと攻めたいな』と思っちゃう。メチャクチャ楽しいですよ」

 
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(前編)の画像拡大
 
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(前編)の画像拡大
 
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(前編)の画像拡大
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1940×1240mm/ホイールベース:2650mm/車重:1770kg/駆動方式:4WD/エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ/トランスミッション:7段AT/最高出力:540ps/7800rpm/最大トルク:540Nm/6500rpm/タイヤ:(前)245/30ZR20 (後)305/30ZR20/車両本体価格:2618万円
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ
	ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1940×1240mm/ホイールベース:2650mm/車重:1770kg/駆動方式:4WD/エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ/トランスミッション:7段AT/最高出力:540ps/7800rpm/最大トルク:540Nm/6500rpm/タイヤ:(前)245/30ZR20 (後)305/30ZR20/車両本体価格:2618万円拡大
関連記事
  • メルセデスAMG SL43(FR/9AT)【試乗記】 2023.2.25 試乗記 1954年に初代が誕生して以来、メルセデスの最上級オープンカーと位置づけられてきた「SL」。その新型たる「メルセデスAMG SL」は、乗るほどに優れた技術力を実感させる、極めて完成度の高いスポーツモデルだった。
  • トヨタGRカローラRZ(4WD/6MT)【試乗記】 2023.3.2 試乗記 ボディーもパワートレインも専用仕立て……なのだが、「GRカローラ」を走らせてみると、どこか懐かしい感じがする。何かが突出しているわけではなく、すべての要素が高バランス。この味わいはまぎれもなくカローラだ。ただし、その速さはとんでもない。
  • レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”(4WD/6AT)【試乗記】 2023.3.20 試乗記 20年以上にわたって低燃費競争をリードしてきたトヨタのハイブリッドだが、「レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”」では、目指すところが少々違う。ターボと電気の力を組み合わせたパワートレインは、ひたすら走りの楽しさを追求しているところが新しい。
  • メルセデス・ベンツGLC220d 4MATIC(4WD/9AT)【試乗記】 2023.3.16 試乗記 メルセデス・ベンツの屋台骨を支えるミドルクラスSUV「GLC」がフルモデルチェンジ。キープコンセプトゆえに変化を感じづらいが、電動化を推進するメルセデスにおいて、それはエンジンを搭載する最後のGLCにふさわしい出色の出来栄えだった。
  • トヨタGRカローラRZ“モリゾウエディション”(4WD/6MT)【試乗記】 2023.3.17 試乗記 わずか70台限定で販売された「トヨタGRカローラRZ“モリゾウエディション”」に試乗。高出力ターボエンジンとフルタイム4WDを備えた「GRカローラ」のさらなるハイパフォーマンスバージョンは、走り好きのこだわりが詰まった珠玉のマシンに仕上がっていた。
ホームへ戻る