アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(後編)

2017.10.12 谷口信輝の新車試乗 谷口 信輝 レーシングドライバーの谷口信輝が歯に衣を着せず、本音でクルマを語り尽くす! 前回に続き、今回もアウディのフラッグシップオープンモデル「R8スパイダー」に試乗する。谷口をして「弱点らしい弱点が見当たらない」と言わしめたR8スパイダーだが、では兄弟モデルというべき「ランボルギーニ・ウラカン」と比べるとどうなのだろうか。谷口が熱く語る!

気負わずに乗れるスーパースポーツカー

先日、たまたま取材でアウディR8とランボルギーニ・ウラカンを乗り比べる機会があった。ワインディングロードで飛ばすと、コーナリング性能のより高いウラカンの楽しさはやはり格別で、コントロール性の高さと相まってクルマとの強い一体感を味わえた。

いっぽうのR8は、限界的なコーナリング性能ではウラカンに一歩譲るものの、それでも前編で谷口信輝が指摘したとおり圧倒的なグリップ感と俊敏な回頭性を味わえて、やはり楽しい。でも、R8の真骨頂は、ウラカンに匹敵するコーナリング性能を備えていながら市街地走行でもバツグンに快適で扱いやすい点にある。ウラカンもかつてのスーパースポーツカーに比べれば、こうした領域での快適性やドライバビリティーは傑出して優れているけれど、さすがにR8にはかなわない。

要は、限界的コーナリング性能を少しだけ削って快適性とドライバビリティーを格段に向上させたのがR8で、これとは対照的にわずかな快適性やドライバビリティーと引き替えに限界的コーナリング性能をより突き詰めたのがウラカンといえるわけだ。

谷口にこの話をしたところ「限界的なコーナリング性能でどっちが勝ったとか負けたとか、正直、どうでもいいと思うんですよ。もしも本当にそんな勝負をしたら、基本的にはクルマの性能じゃなくてドライバーの腕で勝負がつくはずですから……」という答えが返ってきた。谷口の言い分はもっともだ。では、どのような基準でR8とウラカンを選んだらいいのか?

「ウラカンを買うのは、とにかく自分がスーパーカーに乗っているという実感が欲しい人でしょ。でも、それだけに、乗り込むときは心の回転数を上げておかないといけない。ヘリコプターを飛ばすときは、周りの人に迷惑料を支払わないといけないっていうウソとも本当ともつかない話を聞いたことがあるけれど、ウラカンだってエンジンを掛けるときは周囲の人のことをある程度、気遣わないといけないですよね」

「その点、R8はとにかく楽。乗り心地もいいから、まったく気負わずに乗れる。どちらにしても実質上3000万円からするクルマですよね? だとしたら、所有している間に何回乗れるかが大切でしょう。せっかく買ってもガレージにしまいっぱなしじゃもったいない。その点、R8のほうが稼働率は高くなりそうな気がしますね。ただ、裏を返せば『特別なクルマに乗っている印象が薄い』ともいえるわけで、その辺がアウディに共通した長所でもあり弱点でもあると思います」

 
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(後編)の画像拡大
 
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(後編)の画像拡大
 
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ(後編)の画像拡大
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1940×1240mm/ホイールベース:2650mm/車重:1770kg/駆動方式:4WD/エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ/トランスミッション:7段AT/最高出力:540ps/7800rpm/最大トルク:540Nm/6500rpm/タイヤ:(前)245/30ZR20 (後)305/30ZR20/車両本体価格:2618万円
アウディR8スパイダーV10 5.2 FSIクワトロ
	ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1940×1240mm/ホイールベース:2650mm/車重:1770kg/駆動方式:4WD/エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ/トランスミッション:7段AT/最高出力:540ps/7800rpm/最大トルク:540Nm/6500rpm/タイヤ:(前)245/30ZR20 (後)305/30ZR20/車両本体価格:2618万円拡大
関連記事
  • メルセデスAMG SL43(FR/9AT)【試乗記】 2023.2.25 試乗記 1954年に初代が誕生して以来、メルセデスの最上級オープンカーと位置づけられてきた「SL」。その新型たる「メルセデスAMG SL」は、乗るほどに優れた技術力を実感させる、極めて完成度の高いスポーツモデルだった。
  • トヨタGRカローラRZ(4WD/6MT)【試乗記】 2023.3.2 試乗記 ボディーもパワートレインも専用仕立て……なのだが、「GRカローラ」を走らせてみると、どこか懐かしい感じがする。何かが突出しているわけではなく、すべての要素が高バランス。この味わいはまぎれもなくカローラだ。ただし、その速さはとんでもない。
  • レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”(4WD/6AT)【試乗記】 2023.3.20 試乗記 20年以上にわたって低燃費競争をリードしてきたトヨタのハイブリッドだが、「レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”」では、目指すところが少々違う。ターボと電気の力を組み合わせたパワートレインは、ひたすら走りの楽しさを追求しているところが新しい。
  • メルセデス・ベンツGLC220d 4MATIC(4WD/9AT)【試乗記】 2023.3.16 試乗記 メルセデス・ベンツの屋台骨を支えるミドルクラスSUV「GLC」がフルモデルチェンジ。キープコンセプトゆえに変化を感じづらいが、電動化を推進するメルセデスにおいて、それはエンジンを搭載する最後のGLCにふさわしい出色の出来栄えだった。
  • トヨタGRカローラRZ“モリゾウエディション”(4WD/6MT)【試乗記】 2023.3.17 試乗記 わずか70台限定で販売された「トヨタGRカローラRZ“モリゾウエディション”」に試乗。高出力ターボエンジンとフルタイム4WDを備えた「GRカローラ」のさらなるハイパフォーマンスバージョンは、走り好きのこだわりが詰まった珠玉のマシンに仕上がっていた。
ホームへ戻る