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第452回:今だからこそ語りたい!
現行型「ジムニー」に宿る普遍の魅力

2017.10.21 エディターから一言 渡辺 敏史
「JB23型」こと現行型「スズキ・ジムニー」の雄姿。
「JB23型」こと現行型「スズキ・ジムニー」の雄姿。拡大

前回のモデルチェンジから20年を迎え、いよいよ新型の登場が現実味を帯びてきた「スズキ・ジムニー」。とはいえ、依然として今のモデルの魅力が色あせていないのも事実である。長年にわたり活躍してきた現行ジムニーにやどる、普遍の魅力について考えてみた。

現行型「ジムニー」のデビューは1998年10月のこと。今年でデビュー20年目のご長寿モデルだ。
現行型「ジムニー」のデビューは1998年10月のこと。今年でデビュー20年目のご長寿モデルだ。拡大
特別仕様車「ランドベンチャー」のインテリア。使い勝手は申し分ないが、その狭さと仕立てのクオリティーに時代を感じる……。
特別仕様車「ランドベンチャー」のインテリア。使い勝手は申し分ないが、その狭さと仕立てのクオリティーに時代を感じる……。拡大
サスペンション形式はコイルスプリングを使った前後リジッド式。今や「本格クロカン」をうたう車種でも、この形式を守るモデルは減ったものである。
サスペンション形式はコイルスプリングを使った前後リジッド式。今や「本格クロカン」をうたう車種でも、この形式を守るモデルは減ったものである。拡大
駆動システムは古式ゆかしいパートタイム4WD。ボディーの下に堂々とぶらさがる“デフ球”が勇ましい。
駆動システムは古式ゆかしいパートタイム4WD。ボディーの下に堂々とぶらさがる“デフ球”が勇ましい。拡大
「ジムニー」の“今どきポイント”その1。エアロッキングハブを採用しているので、昔のように4WD選択時に手動でホイールハブをロックする儀式は必要はなくなった。
「ジムニー」の“今どきポイント”その1。エアロッキングハブを採用しているので、昔のように4WD選択時に手動でホイールハブをロックする儀式は必要はなくなった。拡大

愛されて20年

かねてよりウワサされまくっては消えていったジムニーのフルモデルチェンジ。それがいよいよ具体的なカタチとなって現れ始めたのはこの夏のことだ。山岳路で撮られた全身QRコードのような柄でラッピングされたテストカーは、スズキヨーロッパの拠点があるフランクフルト南部の地域のナンバーを下げており……と、詳細をネチネチ追うまでもなく、ドライバーと車格の関係から一目瞭然、ジムニー的なものということは伝わってくる。

とはいえ、ラッピングの効果でつぶされたテクスチャーはよくわからない。が、それにしてもなんか四角感がハンパないなぁ……と、そんな印象だったところに追い打ちをかけたのが、フルヌードの写真流出だ。それはどうやらカンファレンスの会場か何かで映されたプロジェクター画像を隠し撮りしたようなもので、写り込んだ椅子の背もたれらしきものが漏えい風情を一層高めていた。そう、ちょっと出来過ぎじゃね? と邪推してしまうほどに。

そこでピン甘ながらも暴露されたジムニーとおぼしき画像に盛り上がったのは僕だけではない。日経が、ヤフーのトップのニューストピックスが「ジムニー20年ぶり刷新」と報じることとなった。少なくとも新聞系がネットのスクープ情報をネタ元に記事を書くことはない……とすれば、それはスズキ側とのコンタクトの末、裏が取れたということだろう。

というわけで、ほぼ新型ジムニーと断定できそうなフルヌード写真や擬装済みのテストカーからは、さまざまなことがみてとれる。前後のデフ玉も確認できることから、四輪コイルリジッドが受け継がれることはほぼ確実。中には「現行型とアームの取り付け点がほとんど変わらないようにみえる」と指摘する人もいた。流出した写真はワイドボディー、日本で言うところの「シエラ」相当だが、画像修正ソフトでオーバーフェンダー部を取り除き、すぐさまナローボディーのアガリ予想を披露してくれる人もいた。

ジムニー、こんなに愛されていたのか……。
クルマ好きならずとも、多くの人々の心の片隅にこのクルマのことを想う気持ちがある。スズキにとってそれはお金で買うことのできない、かけがえのない財産だ。

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本当にいい形をしている

そんなこんなの盛り上がりを経て、雑誌などでほぼ確定的な絵面が出始めた新型ジムニーとおぼしき車両のエクステリアデザインは、端的に言えば、先祖返りを果たしたようにみえる。先祖とは1981年のSJ30系から1998年に生産終了したJA12系に相当する、いわば2代目のそれだ。単に倣って四角いというだけではなく、ボンネットの両端に特徴的なスリットが設けられている辺りをみると、そこ狙いであることは確信犯なのだろう。同時に表に出てきた内装のデザインも、横基調のダッシュボードに四角いナセルの2眼メーターと、2代目の基本造形を押さえているようだ。フロントウィンドウはさすがに湾曲ガラスを使っているが、シルエットの四角っぷりはさもすれば2代目以上かもしれない。そして屋根には、今どき工数がかさむだけだろう雨どいまでご丁寧に設けられている。

クロスカントリー系のモデルはそのモデルライフの長さもあって、しばしばクルマにノスタルジーを求める層のよりどころとなるわけだが、それにしても、だ。余りに過去にすがりすぎてはいないだろうか。新型ジムニーのカタチをみていると、そういう不安にさいなまれる。もちろん、現物を目の前にすればそんな懸念は消し飛んでしまうのかもしれない。が、一方でいま、20年近い時を経てもなんら古さを感じない現行JB23系のデザインを、このまま葬ってしまうのも惜しいなぁと思うのは僕だけではないだろう。

それこそが過去を振り切れない男の未練話かもしれない。が、あらためてまじまじと見つめるとJB23系は本当にいい四角をしている。1998年の軽寸法枠拡大時、スズキは「Kei」といい「ワゴンR」といい、見事な造形手法をみせてくれたわけだが、今にして思えばその中でもジムニーは白眉(はくび)だったのではないだろうか。

「スズキ・ジムニー」は1970年に誕生。その後の47年間でフルモデルチェンジは2回のみ(!)と、モデルサイクルが非常に長いことでも知られる。
「スズキ・ジムニー」は1970年に誕生。その後の47年間でフルモデルチェンジは2回のみ(!)と、モデルサイクルが非常に長いことでも知られる。拡大
1970年に登場した最初の「ジムニー」こと「LJ10型」。ホープ自動車から製造件を譲り受けた軽4WDを、量産に適するものに改良したものだった。
1970年に登場した最初の「ジムニー」こと「LJ10型」。ホープ自動車から製造件を譲り受けた軽4WDを、量産に適するものに改良したものだった。拡大
1981年に登場した2代目「ジムニー」。今から20年も前に生産終了したモデルだが、いまだにちまたで普通に見かける。写真は1990年に登場した「JA11型」。
1981年に登場した2代目「ジムニー」。今から20年も前に生産終了したモデルだが、いまだにちまたで普通に見かける。写真は1990年に登場した「JA11型」。拡大
3代目「ジムニー」は、1998年の軽自動車規格の改定に合わせて開発されたもの。四角四面でありながらも角の取れたデザインには、普遍的な魅力が感じられる。
3代目「ジムニー」は、1998年の軽自動車規格の改定に合わせて開発されたもの。四角四面でありながらも角の取れたデザインには、普遍的な魅力が感じられる。拡大

時間の流れ方が違う

今回、あらためて用意された現行ジムニーの試乗車を目の前にまじまじと見つめていて、とあることに気がついた。

これって、前に乗った、あの個体なんじゃないの?

果たしてナンバーが物語る通り、それは3年近く前に取材した「ランドベンチャー」そのものだった。われわれが取材や撮影用にメーカーからお借りする広報車は、記載なき仕様変更うんぬんも含めて性能評価に備える意味でも、鮮度重視で1~2年で更新されるのが通例だ。が、このランドベンチャーはこの夏に車検を取っている上、履いているタイヤも新車当時のまま。裏返せばこの3年あまり、なんにも変わってないということになる。3年前も7年前も同じ電車に乗り同じ仕事をして、同じ店で同じ酒を飲み同じ布団で寝る……と、そういうオッさん的なタクトで生きているというのがJB23系の長寿ぶりを物語ってもいるのだろう。僕も見事にそういうオッさんに仕上がったがゆえ、そのスタンスが全然憎めない。

手抜きではないが、現行ジムニーの印象については以前乗った際のこちらと全然変わりがなかった。厳密に言えばタイヤのヘタリが……などと仕事をしてる風なことも言いたいところだが、それも本当に変化を感じない。乗り心地にすり減りを感じないのはキャビン独立のフレーム構造も効いているのだろう。そして激しい入力の繰り返しとなるオフロードを走ってみるとあらためて感じるのは、シートの骨格剛性や取り付け精度の高さが、このクルマのいいモノ感において無視できない貢献をしていることだ。

今回の「ジムニー ランドベンチャー」は、3年近く前に試乗したものと同じ個体だった。ちなみに、ジムニーは2014年8月の小改良を最後に、現在に至るまで改良や変更は行われていない。
今回の「ジムニー ランドベンチャー」は、3年近く前に試乗したものと同じ個体だった。ちなみに、ジムニーは2014年8月の小改良を最後に、現在に至るまで改良や変更は行われていない。拡大
タイヤの仕様はオフロードでのグリップ力と耐久性を追求したもの。サイズは175/80R16と非常に“肉厚”で、指定空気圧も前が160kPa、後ろが180kPaと、空気をパンパンにつめて燃費を稼ぐ昨今の軽乗用車の潮流とは真逆となっている。
タイヤの仕様はオフロードでのグリップ力と耐久性を追求したもの。サイズは175/80R16と非常に“肉厚”で、指定空気圧も前が160kPa、後ろが180kPaと、空気をパンパンにつめて燃費を稼ぐ昨今の軽乗用車の潮流とは真逆となっている。拡大
「ランドベンチャー」のシートには、はっ水機能を備え、夏は熱くなりにくく、冬は冷たく感じにくい「クオーレモジュレ」という素材の表皮が用いられている。
「ランドベンチャー」のシートには、はっ水機能を備え、夏は熱くなりにくく、冬は冷たく感じにくい「クオーレモジュレ」という素材の表皮が用いられている。拡大
ジムニーの対障害角度は、アプローチアングルが49度、ランプブレークオーバーアングルが32度、デパーチャーアングルが50度。写真程度の悪路なら、アゴや尻を擦ったり、腹を打ったりする心配はまずない。
ジムニーの対障害角度は、アプローチアングルが49度、ランプブレークオーバーアングルが32度、デパーチャーアングルが50度。写真程度の悪路なら、アゴや尻を擦ったり、腹を打ったりする心配はまずない。拡大

いつまでも楽しめるクルマ

さらに言えば、そういう場面で求められる微妙なペダルワークを自然に引き出してくれる反力の与え方やゲインの立ち上がり方、ATに関しては駆動力をじわじわと伝えるためのトルコンの滑り方といったところまでが、現行ジムニーはもう絶妙に練り込まれている。言い換えればそれがオッさんの滋味だろうか。悪路を走るツールとして、わずか660ccのクルマが与えてくれる絶大な安心感は、やはり昨日今日のにわかSUVとはまったくレベルが違う。そして、その精緻な加減速と穏やかな操舵応答が、結果的にはオンロードでの自然なドライブフィールにもつながっているのだろう。そういえばリサーキュレーティングボールからなるステアリングのフィールも、現在の新車群においてはアナログレコードのような温かみをもたらしてくれる。

あくまで個人の印象……というダイエット食品的な責任感で、新型ジムニーで予想される進化を並べてみると、今日びのスズキの新車としては驚くほどではない程度の軽量化、加えて若干の車内幅&長による居住性の改善、ESPの付与、エネチャージ的なマイルドハイブリッドの採用……と、そんな感じではないだろうか。特に軽量化のいかんによっては現行型を大きく上回る燃費と走破性を両立する可能性もある。何よりスズキにとってやんごとなき存在であるジムニーゆえ、劇的進化なきフルモデルチェンジは社内的にも許されないだろう。

それでも僕は、今、あえてファイナルカウントダウンの始まったJB23系を買う意味はあると思う。実証され尽くしたタフネスに完熟のメカニズム、標準状態での気持ちいいフィードバック、大量のアフターパーツによる走行性能向上と自分らしさの追求……と、そこにはクルマ好きが舞い上がれるあらかたの要素が備わっている。そして得られる楽しみは決して述懐的なものではなく、趣味として普遍的なものであることは間違いない。

(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
 

駆動については、状況に応じてFR、4WD-H、4WD-Lの3種類から選択が可能。車速が100km/h以下であれば、走行中でもFRから4WD-Hへの切り替えが可能となっている。
駆動については、状況に応じてFR、4WD-H、4WD-Lの3種類から選択が可能。車速が100km/h以下であれば、走行中でもFRから4WD-Hへの切り替えが可能となっている。拡大
トランスミッションは5段MTと4段ATの2種類。ATはしっかりトルコンを滑らせるタイプで、燃費を狙ってしょっちゅうロックアップする昨今のATとは、変速フィールが大きく異なる。
トランスミッションは5段MTと4段ATの2種類。ATはしっかりトルコンを滑らせるタイプで、燃費を狙ってしょっちゅうロックアップする昨今のATとは、変速フィールが大きく異なる。拡大
リアシートは座面の高さが低く、一般的な男性の体格だとヒザを浮かせた着座姿勢を強いられる。新型では、こうした居住性についても改善が図られるかもしれない。
リアシートは座面の高さが低く、一般的な男性の体格だとヒザを浮かせた着座姿勢を強いられる。新型では、こうした居住性についても改善が図られるかもしれない。拡大
荷室の広さも「必要にして十分」といった程度。後席は5:5の分割可倒式となっている。
荷室の広さも「必要にして十分」といった程度。後席は5:5の分割可倒式となっている。拡大
およそ20年にわたり現役で活躍してきた「JB23型」。新型がデビューしたとしても、その魅力が色あせることはないだろう。
およそ20年にわたり現役で活躍してきた「JB23型」。新型がデビューしたとしても、その魅力が色あせることはないだろう。拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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