フォルクスワーゲン・アルテオンRライン 2.0 TSI 4MOTION(4WD/7AT)
スタイリッシュな実力派 2017.10.27 試乗記 フォルクスワーゲンの新たなフラッグシップモデル「アルテオン」。流麗な5ドアクーペのスタイリングをまとったニューカマーの実力を、アウトバーンを中心にドイツの一般道で試した。夢が見られるかどうか
「アウディA5スポーツバック」や「ポルシェ・パナメーラ」が人気のけん引役となった5ドアクーペというジャンル、ヨーロッパでは引き続き好評のようで、「アウディA7スポーツバック」、BMWの「グランツーリスモ」や「グランクーペ」、「アストンマーティン・ラピード」などがいまもマーケットを賑(にぎ)わせている。
セダンの居住性と走行性能、2ドアクーペを思わせるスタイリング、ワゴン並みの多用途性をあわせ持つところが5ドアクーペの魅力だろうが、それらとともに、通常のセダンやワゴンでは味わえない華やかさ、ラグジュアリーさもファンを惹(ひ)きつける原動力となっているように思う。実際のところ、強い存在感を示している5ドアクーペの多くはプレミアムブランドが手がけた製品。純粋な実用車とはひと味異なる5ドアクーペの向こう側に、アクティブでゴージャスな非日常的世界が垣間見えるからこそ、人々はA5スポーツバックやBMWグランクーペなどを購入するのかもしれない。
ひるがえって、日本における5ドアクーペの歴史は意外に長く、1980年代には「三菱エテルナ」、「トヨタ・スプリンターシエロ」といったモデルがいち早く登場していたが、ひとつのジャンルとして定着するまでには至らなかった。その要因はさまざまだろうが、理由のひとつに、日本製5ドアクーペがファンに「夢を見せられなかった」ことがあるような気がする。つまり、スタイリングやブランド性といった部分で顧客を強く惹きつける力を持ち得なかったから、日本車の5ドアクーペは確固たる地位を築けなかったとも考えられるのだ。
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クーペフォルムに破綻なし
フォルクスワーゲンの新たなフラッグシップ、アルテオンは5ドアクーペに期待される実用性やスタイリングの美しさを見事に体現したモデルだと思う。
生真面目なドイツ人は5ドアクーペであることを言い訳として使わず、クーペ風のスタイリングの内側にワゴン並みの室内スペースを実現しようとする傾向が強く、結果的にエクステリアデザインが破綻してしまうケースがたびたび見られたが、アルテオンは違う。十分な室内スペースを確保しながら、スタイリングの完成度を一切犠牲にしなかったデザイナーの手腕は称賛に値すると思う。
5ドアクーペでとりわけ難しいのがテールエンドの処理。テールゲートを強く寝かせればクーペ風のファストバックデザインが完成するが、そうすると後席の居住空間やラゲッジスペースが不足するのは明らか。だからといって全高を高くすればスポーティーなイメージが崩れてしまうし、ルーフを水平に長く伸ばせばワゴンとの見分けがつかなくなる。このためデザイナーは、あちらを立てればこちらが立たずというジレンマに苦しみながら5ドアクーペの造形を手がけることになるのだ。
しかし、アルテオンのエクステリアデザインはどのラインを見ても無理や無駄がなく、流麗なスタイリングを鮮やかに表現している。アルテオンの全高は、ベースとなった「パサート」よりも数mm低い程度でほとんど変わらないが、視覚的な重心は十分に低く、いかにもスポーティーなデザインに仕上がっていると思う。
もうひとつ、アルテオンのデザインで高く評価したいのが、その立体的造形の完成度が高いことで、リアエンドを眺めながら自分の立ち位置を少しずつずらしてもデザインが破綻することがない。ライバル勢の多くがこの点で苦労していることを思えば、フォルクスワーゲンのデザイナーは素晴らしい仕事をしたと評価できるだろう。
骨太なグランドツアラー
アルテオンの完成度が高いという印象は、試乗してもまったく変わらなかった。
今回はドイツのハンブルグを出発してドレスデンに向かい、そこからフランクフルトに至るまでのおよそ1000kmが試乗のルート。アウトバーンが中心だが、それだけにアルテオンの真価を確認できたともいえる。なお、試乗したのは日本導入が見込まれる「Rライン 2.0 TSI 4MOTION」(7段DSG)だった。
試乗してまず感じたのが、フラット感の強い乗り心地と優れた直進性。装着されていたタイヤが245/35R20というサイズだったため、低速域ではややゴツゴツとしたショックを伝えることもあったが、速度を上げていけば滑らかさが次第に際立っていき、快適な乗り心地を味わえた。試乗中、速度無制限区間でたびたび200km/h以上の速度域で巡航したものの、そうした際にもボディーのフラット感は失われず、乗員の感じる疲労度はミニマムに近い。直進性の高さも特筆すべきで、たとえ雨が降り始めてもスロットルを緩めようという気持ちにはならなかった。これには、フルタイム4WDの4MOTIONが大きな役割を果たしていたはずだ。
アルテオンのホイールベースは2837mmで、パサートより46mm長い。このため後席のレッグルームはアルテオンのほうが拳半分ほど余裕がある。いっぽう、全高はパサートよりわずかに低く、しかもアルテオンのルーフラインは後方に向かうにしたがってなだからに下降しているにもかかわらず、後席のヘッドルームはパサートとアルテオンではほぼ同等。これはアルテオンのシートバックをやや後傾させることで実現したものだろう。なお、アルテオンのラゲッジルームは後席を立てた状態で563リッターと発表されている(いずれもヨーロッパでのカタログ値)。
日本で人気を得るためには……
もうひとつ、忘れることのできないアルテオンの魅力は、そのエンジンにある。フロントに横置きされた2リッター直4ガソリンターボエンジンは280psを発生するが、排気量が“たった”2リッターしかないことが信じられないほど、どの回転域からも気持ちよく加速する。しかも、7段デュアルクラッチ式ギアボックス“DSG”のおかげでスロットルペダルの動きに即応する歯切れいい加速感が味わえるのも魅力的。ちなみに0-100km/h加速は5.6秒と発表されているが、これは3リッタークラスのターボエンジンと比較しても遜色のない数値だ。
スタイリングもいい。シャシーの完成度も優れている。パワートレインにはクラスを超えた力強さがある。では、アルテオンは日本で人気モデルとなるだろうか?
前述のとおり、5ドアクーペが成功するには「ユーザーが夢を見られること」が重要だと私は考えている。そのアルテオンが戦う相手はアウディA5スポーツバックや「BMW 4シリーズ グランクーペ」などといったプレミアムブランドの強豪。アルテオンに実用性やパフォーマンスの点でライバルたちと同等の実力があっても、最後はブランド力で顧客を奪われてしまうのではないか? そんな心配がなくもない。
もっとも、このカテゴリーに新加入(再加入?)するフォルクスワーゲンには、新鮮さを武器にセールスを伸ばすという戦略も残されている。すでにプレミアムブランドの製品を何台も乗り継いできたユーザーにとって、フォルクスワーゲンはむしろ目新しい存在といえるかもしれない。そういった層にアルテオンの実力がしっかりと伝わったなら、意外なヒット作になるだろう。
日本仕様の価格は549万円から。クルマ選びの目利きたちはアルテオンにどんな評価を下すのか。いまから楽しみだ。
(文=大谷達也<Little Wing>/写真=フォルクスワーゲン/編集=竹下元太郎)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・アルテオンRライン 2.0 TSI 4MOTION
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4862×1871×1450mm
ホイールベース:2837mm
車重:1716kg(EU値)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:280ps(206kW)/5100-6500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1700-5600rpm
タイヤ:(前)245/35R20/(後)245/35R20
燃費:7.3リッター/100km(約13.7km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:549万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様車のもの。価格は日本仕様の「アルテオンRライン4MOTION」のもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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