第456回:新世代DSが本格始動
ブランド統括責任者に今後の展開を聞く
2017.11.05
エディターから一言
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DSオートモビルは東京モーターショー2017で、新世代モデルの第1弾となるフラッグシップ・クロスオーバーSUV「DS 7クロスバック」を公開した。このジャパンプレミア(日本初公開)のために、同社のブランド統括責任者、エリック・アポド氏が来日。シトロエンから独立し、唯一無二のラグジュアリーブランドとしての歩みだしたDSブランドの戦略と魅力、そして日本での展開について聞いた。
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まずは2018年上半期にDS 7を発売
――DSの第2世代のプロローグとなるDS 7クロスバックが、ついに日本初公開されました。第2世代のスタートにより具体化した今後の展開や戦略などを教えてください。
エリック・アポド氏(以下、アポド):やっと日本でもDS 7クロスバックを披露できたことをうれしく思います。本国フランスで2014年に立ち上げたDSブランドは、独立ブランドとすることを2015年に日本でも発表しましたが、その時は口頭での説明にとどまっていました。やはり、新型車をお披露目することで、日本でも独立したDSの、具体的な動きをお見せできたことはいいニュースであり、私自身、皆さんとのお約束を果たせたことをうれしく感じています。
DS 7クロスバックは、新生代の皮切りとなるモデルです。今後、DSから新プロダクトが続々と登場します。発売は2018年の上半期となりますが、それ以降、毎年1モデルを必ず投入していきます。最終的には、DS 7クロスバックを含めて6モデルを送り出し、DSラインナップを完成させます。
新ラインナップの具体的な中身ですが、BセグメントからDセグメントまでをカバーする3車種の3ボックスセダンと、3車種のSUVを世界展開していきます。もちろん、これらは日本にも導入します。特筆すべき点として、各モデル共にハイブリッド車、電気自動車、そしてプラグインハイブリッド車を設定することが挙げられます。これにより、2025年には全体の30%を電動パワートレインモデルが占めるでしょう。DS 7クロスバックには、DS初のプラグインハイブリッドモデルが設定されます。これはシステム出力が300psとパワフルさが自慢です。
安全装備には“ナイトビジョン”も
――新ラインナップを構築するうえで、既存のモデルはどうなるのでしょうか?
アポド氏:新型車の投入によってラインナップを刷新し、同じポジションにある既存のモデルは順次、置き換えていきます。その新型車とはフェイスリフトなどの改良型ではなく、その時点での最新のプラットフォームと技術によって開発される、全く新しいものです。そして、先にも述べたように、それはセダンかSUVです。このため、現在のDSにあるハッチバックモデルは、将来的にラインナップから失われ、今後、新たなハッチバックを追加する計画はありません。あらためてDSの戦略を説明させていただくと、DSが掲げる醍醐味(だいごみ)とは、フランスならではの豪華なルックスと手の込んだ職人技、そしてそこに最新テクノロジーを組み合わせていることです。
――その最新テクノロジーについて教えてください。
アポド氏:DSが誇る最新テクノロジーは、すでにDS 7クロスバックにも搭載されており、細かいものを含めると全部で15にも及びます。いくつか代表的なものを紹介すると、前走車との車間保持、および車線維持を自動的に行う「DSコネクテッドパイロット」や、可変ショックアブソーバーを自動制御する独自のサスペンション「DSアクティブスキャンサスペンション」、そして夜間や濃霧などでも赤外線カメラで歩行者や動物を検知し、視認性を高める「DSナイトビジョン」などが挙げられます。特にDSナイトビジョンは、このセグメントでは珍しいアイテムではないでしょうか。DSが自負しているのは、同セグメントの中でも、ユニークな機能を備えていることです。特に安全機能は、安全快適かつ居心地よく運転していただけるのが強みです。
――好敵手だと感じているライバルブランドはありますか?
アポド氏:われわれが大切にしているのは謙虚さです。他のブランドを意識するよりも、われわれ自身が持っているDNA、つまりフランスらしさやフランスならではの豪華さ、手工業をクルマと組み合わせた特徴を大切にしていきたいと考えています。それがDSが提供する、独自のラグジュアリーでもあります。
販売網とオーナー向けサービスを強化
――DSの日本における今後の展開について教えてください。
アポド氏:クルマだけでなく、販売ネットワークも完備していかなくてはなりません。日本ではDS専売店が現在4店舗のみですが、2018年の半ばには9店舗が新たにオープンする予定で、今後、販売店ネットワークを充実させていきます。もちろん、店舗だけではなくサービスも強化していきます。それが「DSオンリーユー」です。これは、DS購入者向けの専用のサービスで、オーナーのサポートや特別なサービスなどを提供するものです。DSブランドにとって、日本は重要な10カ国のひとつに定められています。ですので、非常に重点的に取り組んでおり、この10カ国は、本国フランスと同等に重要視しています。
――最後に、DSに興味を持っている日本のファンへメッセージをお願いします。
アポド氏:まず、日本でDSブランドを立ち上げられたことを、本当にうれしく思います。フランス人は日本、そして日本人が大好きなので、日本の皆さんに、われわれが提供するフランチラグジュアリーの世界を知っていただければ幸いです。(インタビューはここで終わり)
東京モーターショーの会場で目にしたDS 7クロスバックは、想像以上にアバンギャルドな存在だった。モダンで大胆なエクステリアの内側には、先進的かつアーティステックなインテリアが広がる。ただそこに温かみが備わるのは、アポド氏が言うように、フランスならではセンスと職人技を巧みに融合させているからなのだろう。DS流に仕立てた大胆なSUVを見てしまうと、DSがセダンをどのように料理するのかが気になってきた。アポド氏は、何度も自身がDSの展開として約束したことを守ると強調していたので、本当に1年ごとに新たなDSの世界をわれわれに見せてくれるはずだ。
もっともユーザーにとって、日本での販売ネットワークの脆弱(ぜいじゃく)さは気になるところだろう。しかし、この点においては、プジョー・シトロエン・ジャポン代表取締役社長であるクリストフ・プレヴォ氏が、「販売店と協力し、ネットワークを育て、DSという唯一無二のラグジュアリーブランドの魅力を安心して手にできるようにしていく」と話してくれた。多少の時間は必要となるだろうが、新世代ラインナップが完成する頃には、日本でしっかりとした販売ネットワークが構築されていることを期待したい。
(インタビューとまとめ=大音安弘/写真=webCG/編集=竹下元太郎)

大音 安弘
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