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DS 7クロスバック グランシック(FF/8AT)/ソーシックBlueHDi(FF/8AT)

ライバルはいない 2018.08.14 試乗記 清水 草一 DSブランドのフラッグシップにして初のSUVとなる「DS 7クロスバック」。きらびやかなデザインもさることながら、その走りもまた、フランス車ならではの個性が感じられるものだった。

SUVブームの産物

DSという名前には深い思い入れがある。学生時代初めて訪れたパリで目撃した、「シトロエンDS」のスタイリングの衝撃。まだ青かった自分は、そのあまりの違和感に吐き気すら覚えたが、長い潜伏期間ののち、心底見とれるようになった。

シトロエンDSは私にとって、フェラーリよりはるかにハードルの高い、永遠のあこがれのクルマなのだ。でもさすがに元祖DSは買えないので、「エグザンティア」や、ラストの「C5」を経て、現在は「DS 3」のオーナーとなっている。DSがシトロエンから分離して、独立したブランドになるべきだったとは特に思わないが、なにせDSという名がついていれば、それだけでかなり特別なクルマではある。

そのDSから、DS 7クロスバックなるSUVが登場した。「高らかにフレンチラグジュアリーカーの復活をうたうフラッグシップSUV」なのだそうだ。しみじみ、世界的なSUVブームなのだなぁ。もう「C6」みたいな大型セダンは出せないけれど、SUVだったら売れる見込みがある。出せる! そういうことなのですね。しかもこのクルマ、マクロン現フランス大統領の専用車でもある。オランド前大統領の専用車は「DS 5」だったので、それを考えても、しみじみ、SUVブームなのだなぁ。
 
パッと見、サイズ感がつかみにくいが、「マツダCX-5」より45mm長く、「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」より100mm短い。日本人の感覚としては、中ぐらいよりちょっと大きいクロスオーバーSUV、というところか。アウディでいえば、「Q3」よりはかなり大きいけれど、「Q5」よりはそれなりに小さい。このゾーンにはライバルがあまりいないので、あえてその空白を狙ったのかも。

ただ、印象としては、やっぱりQ5クラスに近く見えるので、その割にこの価格設定(469万~562万円)は、相当お安く感じる。

2017年3月のジュネーブモーターショーでデビューした「DS 7クロスバック」。日本では2018年7月に発売された。
2017年3月のジュネーブモーターショーでデビューした「DS 7クロスバック」。日本では2018年7月に発売された。拡大
インテリアは、素材やデザインの異なる3タイプ(オペラ/リヴォリ/バスティーユ)がラインナップされる。写真は「フランスのモダニズムを表現した」とされるレザー仕様のリヴォリ。
インテリアは、素材やデザインの異なる3タイプ(オペラ/リヴォリ/バスティーユ)がラインナップされる。写真は「フランスのモダニズムを表現した」とされるレザー仕様のリヴォリ。拡大
「グランシック」グレードに標準設定される、リヴォリ・インテリアの前席。エアカプセルを使ったマッサージ機能が備わっている。
「グランシック」グレードに標準設定される、リヴォリ・インテリアの前席。エアカプセルを使ったマッサージ機能が備わっている。拡大
トランスミッションは、アイシン・エィ・ダブリュと共同開発した8段ATのみ。シフトレバーの左右には、窓ガラスの開閉スイッチやロックボタンが並ぶ。
トランスミッションは、アイシン・エィ・ダブリュと共同開発した8段ATのみ。シフトレバーの左右には、窓ガラスの開閉スイッチやロックボタンが並ぶ。拡大
リアコンビランプには、かつてコンセプトカー「DS E-TENSE」でも示された格子模様のデザインが採用されている。
リアコンビランプには、かつてコンセプトカー「DS E-TENSE」でも示された格子模様のデザインが採用されている。拡大
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DSならではのキラキラ感

全体のフォルムを見ると、DSらしい「なんだこれ!?」みたいな印象は薄い。このあたりの欧州製SUVは、多くのモデルが似たようなツルンとした形をしていて、お面やお尻のディテールで特徴を出しているが、DS 7クロスバックも同様なのは残念だ。なにせDSなので。

ただ、ディテールに関してはさすがDS。なんとも言えないキラキラ感に満ちている。グリルやヘッドライトまわりのメッキや、常時点灯のLEDポジションライトが、離れて見るとまるでシャンデリア! 日本でシャンデリアというと、悪趣味の代表みたいなイメージもありますが、さすが本場おフランスのシャンデリアは違う。これがホンモノのシャンデリアか、って感じでとってもステキです。

インテリアはさらにすごい。これはもう宝飾品の世界です。キラキラしたダイヤモンドクロス模様が各所にあしらわれ、上級グレードの「グランシック」には、ダッシュボード中央にゴージャスなアナログ時計が。しかもそれが、エンジン始動とともに180度回転して現れるという、オシャレすぎる演出にため息が出る。文字盤を見て「これ、フランク・ミューラー?」と思ったが(by時計音痴)、B.R.Mだそうです。聞いたことないけど超絶オシャレさん!

DSのデザイナーたちは、インテリアに命をかけているそうで、「オペラ」「リヴォリ」「バスティーユ」という3種のインテリアは、どれもこれもとってもおフランスだ。その中で私が一番好きだったのは、B.R.Mの時計の付かない、ファブリックシートのバスティーユでした。

ファブリックといっても、とってもキラキラしていて、本革シートよりむしろゴージャスで、シャンデリアっぽい! バスティーユといえばフランス革命。『ベルサイユのばら』ですね。まさかこんなにラグジュアリーなベルサイユのばらが、400万円台から買えるとは……。フツーの人が見れば、1000万円クラスに見えるんじゃないか。大勝利ですオスカル連隊長!

左右両端のデイタイムランニングライトが目を引く「DS 7クロスバック」のフロントまわり。
左右両端のデイタイムランニングライトが目を引く「DS 7クロスバック」のフロントまわり。拡大
上級グレード「グランシック」のダッシュボードに装着される、B.R.Mアナログクロック。エンジン始動とともに180度回転して文字盤が現れる。
上級グレード「グランシック」のダッシュボードに装着される、B.R.Mアナログクロック。エンジン始動とともに180度回転して文字盤が現れる。拡大
バスティーユと名づけられた、ファブリック仕様のインテリア。「ソーシック」グレードに標準設定されるもので、ブロンズをモチーフとした光沢のあるダッシュボードが特徴となっている。
バスティーユと名づけられた、ファブリック仕様のインテリア。「ソーシック」グレードに標準設定されるもので、ブロンズをモチーフとした光沢のあるダッシュボードが特徴となっている。拡大
バスティーユ・インテリアのシート。ブロンズ色を織り交ぜたファブリックシートが備わる。
バスティーユ・インテリアのシート。ブロンズ色を織り交ぜたファブリックシートが備わる。拡大
最低地上高は、18インチホイールを装着する「ソーシック」が185mm。20インチホイールの「グランシック」(写真)は200mmとなっている。
最低地上高は、18インチホイールを装着する「ソーシック」が185mm。20インチホイールの「グランシック」(写真)は200mmとなっている。拡大

甲乙つけがたいエンジン

ということで、DS 7クロスバックは、インテリアだけでも買う価値があるわけですが、一応メカについても触れておかねばなりますまい。

エンジンは2リッターディーゼル(最高出力177ps)と、1.6リッターガソリンターボのハイパワー版(同225ps)の2種類(ともに4気筒)。インポーターサイドは、ディーゼルのほうが売れると踏んでいるとのことで、お安いほうのグレード「ソーシック」は、ディーゼルのみの設定となっている。

PSAのディーゼルエンジンには、1.6リッターと2リッターがあり、個人的には1.6リッターのほうが軽快かつ快適、と思っておりましたが、DS 7クロスバックに搭載された2リッターディーゼルは、かなり改良を受けており、以前より確実に静粛性が増し、回転フィールも滑らかになっておりました。知らずに乗れば、まずディーゼルとは気づきますまい。もちろんトルク感は満点。1.7tの車体を軽々と加速させます。

一方、1.6リッターガソリンターボは、よくぞここまでパワーを絞り出しやがったなという感じで、大変元気よく回る。私も以前、同じく1.6リッターガソリンターボを積んだC5(同156ps)に乗っていたが、アレと比べたらマジでパワフル。数値通りの最高出力を感じる。それでいて下のトルクはそのままなので、日常性もまったく問題ない。

サウンドも適度に元気がいい。特にスポーツモードにすると、室内のスピーカーから、野太い人工快音が加勢する。静かなのがいいならディーゼルがオススメかも、とすら感じる。あのBMW系の1.6リッター4気筒エンジンを、PSAは本当に骨までしゃぶってる。

2リッターの直4ディーゼルターボ。2000rpmという低回転域で400Nmの最大トルクを発生する。
2リッターの直4ディーゼルターボ。2000rpmという低回転域で400Nmの最大トルクを発生する。拡大
選べるドライブモードは4種類。スポーツモードではアクセルペダルのレスポンスやシフトスケジュールがスポーティーになるほか、エンジン音が疑似的に増幅される。
選べるドライブモードは4種類。スポーツモードではアクセルペダルのレスポンスやシフトスケジュールがスポーティーになるほか、エンジン音が疑似的に増幅される。拡大
メーターパネルは12.3インチのカラー液晶タイプ。直線基調のデザインで個性を主張する。
メーターパネルは12.3インチのカラー液晶タイプ。直線基調のデザインで個性を主張する。拡大
ディーゼル車(写真)とガソリン車が選べる「DS 7クロスバック」。同じグレード同士で比べた場合、車両価格はディーゼル車の方が20万円高となるが、エコカー減税により“乗り出し価格”はほぼ同等になるという。
ディーゼル車(写真)とガソリン車が選べる「DS 7クロスバック」。同じグレード同士で比べた場合、車両価格はディーゼル車の方が20万円高となるが、エコカー減税により“乗り出し価格”はほぼ同等になるという。拡大
荷室の容量は、5人乗車時で555リッター。6:4分割可倒式の背もたれを写真のように倒すことで最大1750リッターにまで拡大できる。
荷室の容量は、5人乗車時で555リッター。6:4分割可倒式の背もたれを写真のように倒すことで最大1750リッターにまで拡大できる。拡大

“フワフワ”がうれしい

そして乗り心地。これがなんともスバラシイ。

いまどきこんなに足がソフトなSUVってあったっけ? スポーツカーみたいに足が固くて、ほとんどロールしないSUVはいっぱいあるけれど、こんな船みたいなのはあまりない。DSは、自分たちに期待されるものをよくわかってる!

18インチタイヤを履いたソーシックでも十分にソフトだったけれど、20インチタイヤのグランシックはさらにフワフワ!? どちらにも、カメラが前方の路面状況をスキャンして凹凸を検知、ショックアブソーバーの減衰力をコントロールする「アクティブスキャンサスペンション」が標準装備とのことですが、その効果よりなにより、基本的にフワフワ浮かんでるみたいなのです。20インチのほうがかえってフワフワ感じた理由は不明ですが、まあとにかく、シトロエンっぽくてうれしい。

もうひとつうれしいのは、ゴー・ストップまでやれる、マトモなACC(アダプティブクルーズコントロール)が付いたこと。こういう部分に関して、フランス車は常に時勢に後れをとっておりましたが、DS 7クロスバックには、ちゃんと普通に使えるものが付いていました。自動ブレーキも、60km/h以下なら歩行者も検知する、現代的なものになっている。わが家のDS 3の自動ブレーキは、30km/h以下でクルマその他デカいモノにしか反応しない「ないよりマシ」程度のものなので、隔世の感。たった2年前のクルマなのに……。

「フランス車にそういうのを求めちゃいけない」という気持ちもどっかにあったけど、年齢的に「もうアレがついてないクルマは買えないヨ!」ってなってくるので、真剣によかった。

ところでこのDS 7クロスバック、プジョー・シトロエンのディーラーでは扱っておらず、DSディーラーのみでの販売となるそうです。現在日本全国にたったの7店舗しかございませんが! マジすか!? フェラーリの販売店より少なくね? う~ん、となるとこのクルマ、フェラーリよりはるかにレアな存在になるのかも。レア車好きなマニアにはたまらないかもです。

(文=清水草一/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)

「DS 7クロスバック」は、全車「DSアクティブスキャンサスペンション」を装備。車両前方5~25mの路面状況を常時高速スキャンして路面の凹凸を検知し、4輪のショックアブソーバーの減衰力を最適化する。
「DS 7クロスバック」は、全車「DSアクティブスキャンサスペンション」を装備。車両前方5~25mの路面状況を常時高速スキャンして路面の凹凸を検知し、4輪のショックアブソーバーの減衰力を最適化する。拡大
上級グレード「グランシック」の後席には、背もたれのリクライニング機構が備わる。写真は、手前側を最も寝かせた状態。
上級グレード「グランシック」の後席には、背もたれのリクライニング機構が備わる。写真は、手前側を最も寝かせた状態。拡大
後席用のエアコン調節スイッチ。これも上級グレードの専用装備となる。
後席用のエアコン調節スイッチ。これも上級グレードの専用装備となる。拡大
ディーゼルの下位グレード「ソーシック」に装着される18インチアルミホイール。「BUENOS AIRES」と名づけられた標準タイプ(写真)のほか、オプションの「GENEVE」デザインも選べる。
ディーゼルの下位グレード「ソーシック」に装着される18インチアルミホイール。「BUENOS AIRES」と名づけられた標準タイプ(写真)のほか、オプションの「GENEVE」デザインも選べる。拡大
ボディーカラーは、写真の「ブラン アンドラディート」を含む全8色がラインナップされる。
ボディーカラーは、写真の「ブラン アンドラディート」を含む全8色がラインナップされる。拡大
DS 7クロスバック グランシック
DS 7クロスバック グランシック拡大
最高出力225ps、最大トルク300Nmを発生させる1.6リッターターボエンジン。JC08モードの燃費値は14.7km/リッター。
最高出力225ps、最大トルク300Nmを発生させる1.6リッターターボエンジン。JC08モードの燃費値は14.7km/リッター。拡大
前席と後席の頭上に広がる「パノラミックサンルーフ」。上級グレード「グランシック」にのみオプションとして設定される。
前席と後席の頭上に広がる「パノラミックサンルーフ」。上級グレード「グランシック」にのみオプションとして設定される。拡大

テスト車のデータ

DS 7クロスバック グランシック

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4590×1895×1635mm
ホイールベース:2730mm
車重:1590kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:225ps(165kW)/5500rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1900rpm
タイヤ:(前)235/45R20 100V/(後)235/45R20 100V(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック3)
燃費:14.7km/リッター(JC08モード)
価格:542万円/テスト車=597万0200円
オプション装備:メタリックペイント<ブラン アンドラディート>(7万0200円)/DSナイトビジョンパッケージ<ナイトビジョン+パノラミックサンルーフ>(48万円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:923km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(10)/高速道路(0)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

DS 7クロスバック ソーシックBlueHDi
DS 7クロスバック ソーシックBlueHDi拡大
荷室のフロアは2段式。フロア高を調節することで高さのある荷物にも対応できる。写真はフロアレベルを下げた状態。
荷室のフロアは2段式。フロア高を調節することで高さのある荷物にも対応できる。写真はフロアレベルを下げた状態。拡大

DS 7クロスバック ソーシックBlueHDi

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4590×1895×1635mm
ホイールベース:2730mm
車重:1670kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:177ps(130kW)/3750rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)235/55R18 100V/(後)235/55R18 100V(ミシュラン・ラティチュード ツアーHP)
燃費:16.4km/リッター(JC08モード)
価格:499万円/テスト車=508万6768円
オプション装備:メタリックペイント<ブルー アンクル>(7万0200円)/フロアマット<ベロアタイプ>(2万6568円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1011km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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