アウディA6 2.8FSIクワトロ/3.0TFSIクワトロ【試乗速報】
売れっ子の資質あり 2011.08.23 試乗記 アウディA6 2.8FSIクワトロ(4WD/7AT)/3.0TFSIクワトロ(4WD/7AT)……917万5000円/1020万円
アウディのミドル級セダン「A6」が、新型になって日本上陸。その仕上がり具合をリポートする。
骨格から新しい
夏は怪談の季節でありますが、夏になると、やっぱり出ますな。あたしは見たんです。「A6」のカラダに「A1」の顔がついたてぇヤツを。人面犬とか人面魚とかに近いモノがある。場所は東京・汐留の高級シティホテル、コンラッド東京。しかも、1台だけじゃぁない。新型A6の試乗会やってたから当たり前だ。
映画『スター・ウォーズ』のストームトルーパーを思わせるA1顔になったその新型A6、日本市場は204psの2.8リッターNAのV6直噴と、300psの3リッターV6スーパーチャージャーの2本立てで、前者は「2.8FSIクワトロ」、後者は「3.0TFSIクワトロ」と呼ばれる。価格は前者が610万円、後者が835万円と、ちとお高い。前者はいわゆる戦略価格でありますな。ちなみに、ライバルと目されるメルセデスの「E250 CGI ブルーエフィシェンシー」は634万円で、「BMW523i」は610万円だ。
名前の通り、駆動方式はいずれもフルタイム4WDで、ギアボックスはいずれもデュアルクラッチの7段Sトロニック。エンジン縦置きのアウディとしては「A7」に次いでのSトロニックの採用で、それというのも新型A6はA7と共通部分多しの兄弟車なのである。
新型A6は先代と比べると骨格からして新しい。現行「A4」同様、前後重量配分を改善すべく、フロントアクスルを前方に移動している。これにより、ホイールベースは先代比65mm伸び、フロントオーバーハングが短くなったことで、プロポーションがグッとのびやかでアスリートっぽくなった。
クワトロシステムは、前後トルク配分を通常40対60と後輪駆動寄りとし、FFを基本とする4WDでありながら、FRのよさを取り込もうという、怪談の続きでいえば鵺(ぬえ)的な、技術的にいえば、ようするに最近のアウディの流儀にのっとった、新世代の高速4WDシステムを採用しているわけだ。私たちはクワトロ革命の第2章に立ち会っているのである。
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ハイカラでバンカラ
最初に乗ったのは2.8FSIクワトロで、なんと試乗車はオプションの20インチホイールを装着している。標準は18インチだから、低速ではさすがに硬い。路面の凸凹をゴツゴツと正直に伝える。
エンジンはショボイ。カスカスな感じ。正直に申し上げますが、私はギアボックスがCVTかと思った。事実は、私の感性の不徳の致すところで完全な間違いである。試乗したのはコンラッド東京からレインボーブリッジを経由して羽田空港方面への一般道をダラダラ走っただけなので、じつのところ、よくわからんのです。
よくわからないなかで、この20インチのピレリPゼロ、255/35というスーパーサルーン的タイヤを履いた新型A6を評させてもらうと、その資格があるのかというご指摘もごもっともですが、民主主義ということでご理解いただき、つまりこれはアウディの主張する通りのエグゼクティブ・サルーンなのである。電動パワステのステアリングは最近のサルーンとしては驚くほど重めだ。重い。骨太感がある。タイヤが太すぎるからである。乗り心地はゴツゴツする。V6エンジンはレスポンスはどうかと最初は思ったけれど、回すとなかなか勇ましいサウンドがする。
“プラダを着た悪魔”なのである。映画の中身とは無関係にタイトルだけお借りしましたが、新型A6の2.8の20インチは、見かけはモダンかつハイテク、インテリアはスペーシーかつクリーンでありながらゴージャス、前衛でありながらクラシックでもあって、じつに新しい。定評あるところのつくりの品質感もすばらしい。外も中もハイカラだ。だけど、性格はバンカラで、ようするにこれ、BMWの「Mスポーツパッケージ」とかメルセデスの「AMGスポーツパッケージ」のアウディ版、あ、「S-Lineパッケージ」といえばいいのか……。
だから、戦う男にはいいのである。もし、スポーツサルーンが男のやる気をひき出すモノなのだとしたら、新型A6はまぎれもなく、それだ。
やる気が出てくる
高性能版たる3.0TFSIクワトロにも、ごく短時間だけ乗った。こちらも同じくオプションの20インチを履いていた。標準は19インチで、その差が小さいせいか、クルマとしての洗練度がぜんぜん上であった。おまけに440Nm(=44.9kgm)という4リッターV8並みのトルクでもって、アッという間にアウディが想定する常用域の速度に到達する。ゆえに極低速でのタイヤからの衝撃はもしかすると2.8以上のものがあるけれど、それを意識させないうちに爽快な加速感を伴いつつ、快適ゾーンに突入しているのだ。
スーパーチャージャー付き3リッターV6は、現行「S4」にも搭載されている、V8の代わりになるくらいの分厚い低速トルクを持つ。これとの組み合わせだと、Sトロニック、デュアルクラッチの変速のスムーズさ、素早さがキラリと光る。3.0TFSIクワトロは、A6の免許皆伝版たる「S6」の境地へと至る、控えめなS6である。あまりにも当たり前の結論でしたか……。本物のS6はV10ではなくて、V8になるもようである。
新型A6はボディの20%にアルミを採用し、軽量化にも取り組んでいる。「技術による先進」をかかげるアウディならではである。先代A6に比べて30kgの軽量化を果たしたという。ただし、MMIをはじめ、装備は豊富で、おまけに4WDということもあり、車両重量は2.8で1790kgとライバルに比べてそう軽いわけでもない。
それでも、2.8に乗ってハタと思ったのは、クルマが若干大きくなっているにもかかわらず、はるか遠くの記憶をたどってみるに、先代A6よりもまったくもってドライビングのタイト感が増していることである。
だからなんだな、やる気が出てくるのは。ピッと反応する。男はピッと反応するモノが好きなのだ。アイドリングストップもスムーズに作動し、わずらわしいと感じない。環境面のエースは、早晩登場する「ハイブリッド」が担うことになる。当然ライバルも戦略上の新たな手が必要になってくる。
新型A6は、日本のアッパー・ミドル・サルーン市場にアウディ旋風を巻き起こす資質を持っている、と見ました。
(文=今尾直樹/写真=高橋信宏)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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