レクサスLS500“エグゼクティブ”(4WD/10AT)/LS500“Fスポーツ”(FR/10AT)
丁寧にこしらえましょう 2018.02.09 試乗記 新開発の3.5リッターV6ツインターボエンジンを搭載した「LS500」を一般道で初試乗。11年ぶりに生まれ変わったレクサスのフラッグシップの出来栄えは? ハイブリッドモデルとの比較とともにリポートする。 拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
V6ツインターボにひと安心
先行して発売されたハイブリッドの「LS500h」が少々期待外れだっただけに、新開発V6ツインターボを積むLS500の試乗会に向かう気持ちは複雑だった。今度は良い話を伝えられるだろうか、という不安でちょっとどんより気分。だが、結果何とか滑り込みセーフのレベルに達していたように思う。
レクサスLS500hの何が期待外れだったかというと、その第一はハイブリッドパワートレインの気ぜわしさである。従来型のロングホイールベース仕様よりもさらに大きくなった新型LSは、最も軽いLS500のRWD(後輪駆動)でも2150kg、最重量級のLS500h AWDの“エグゼクティブ”だと2390kgに達する重量級であり、それに対してLC500hと同様の3.5リッターV6+モーターの実用域トルクは物足りず、ちょっと加速しようと踏み込むと、CVTのせいもあってすぐにエンジン回転数が上昇、ビーンという無味乾燥のノイズが耳につく。
右足の操作に伴って忙しく上下する回転計の針と、決して耳に心地いいとは言えないエンジン音が大きくなったり小さくなったりして落ち着かないのである。高速道路をゆっくり一定速で走る場合はいいが、それ以外の場面では繊細なスピードコントロールが難しく、ラグジュアリーセダンの余裕が感じられなかった。
LS500に搭載されるV35A-FTS型3.5リッターV6ツインターボは対照的である。トヨタとしては久しぶりにイチから開発されたブランニューエンジンだが、新型「カムリ」のA25A-FXS型4気筒エンジンと同様のロングストローク(ボア85.5×ストローク100.0mm)タイプで、パワーと高効率の両立を図った新世代の「ダイナミックフォースエンジン」である。
自然吸気アトキンソンサイクルのA25Aの41%には及ばないが、エンジンの熱効率も37%に達しているという。現時点ではLS専用ながら、今後トヨタ/レクサスの主力パワーユニットとして展開されるはずだが、その最高出力と最大トルクは422ps(310kW)/6000rpmと600Nm(61.2kgm)/1600-4800rpmと、LS500hのシステム最高出力(359ps)よりも明らかに強力で、実用域でのトルクが十分なだけでなく、高回転までシュパーッと気持ち良く吹け上がり、リニアにスピードが乗っていく。
ドライバーの意図をくみ取るようにスロットルに即応するレスポンスは小気味よく、実にスムーズに変速する10段ATと組み合わされたパワートレインの逞(たくま)しさ、切れの良さは明らかだ。スポーティーに走る時だけでなく、穏やかに加速する際も加速度のつながりやエンジン音の高まりがハイブリッドに比べて段違いに自然で違和感がないのである。
燃費の点ではハイブリッドが圧倒的に有利なのは当然だが、フラッグシップのラグジュアリーセダンに求められるパワーユニットとしては、たとえ自分でステアリングを握らないとしても、このV6ツインターボがふさわしい。
落ち着かない乗り心地
ゆっくり走る時も先を急ぐ時も、余裕を持って優雅にスピードをコントロールできるLS500に胸をなで下ろしたものの、惜しいことに乗り心地に関しては、やはりLS500もLS500h同様、太鼓判を押すまでにはいかない。路面状態によってはゴツゴツした硬質の突き上げを感じるうえに(20インチのランフラットタイヤの影響もあると思う)、ブルルンという振動が残ることもあり、エアサスペンションを備えたラグジュアリーセダンとしては、期待したほどのしっとり滑らかな感触は得られなかった。
新しいGA-Lプラットフォームを採用してボディー剛性を大幅に向上させたうえに、重心高や前後重量配分を最適化したというLSは、従来型に比べて確かにステアリングの正確性が向上しており、以前より自信を持って道幅を目いっぱいに使えるようになったが、ただしその分いわゆるラグジュアリー感がややおろそかになったような気がする。
新型LSはボディーサイズも価格帯も「Sクラス」や「7シリーズ」と同格になり、もはや言い訳なしに比較されるのは避けられないが、そのドイツ勢と比べて乗り心地が勝っているとは言い難いし、ハンドリングについてもたとえば先日別の機会に比較試乗した「740d」や「S560 4MATICロング」のほうが総合的に上回っている。
“Fスポーツ”のRWDモデルには可変ステアリングやDRS(ダイナミック・リアステアリング)、アクティブスタビライザーなどを統合制御するシステムが装備され、さらに専用の強化ブレーキが備わるというが、“エグゼクティブ”との明確な違いを体感するには至らなかった。というより、AWDとRWDの車重の差なのか、あるいは“Fスポーツ”だけ前後異なるサイズとなる20インチタイヤのせいなのか“変数”が多すぎて判断できないというのが正直なところ。
いずれにしても試乗会で試した限りでは大差はない。LSは自分でステアリングホイールを握るというより、ショーファーカーとして使われることが多いかもしれないが、そうであれば乗り心地はもっとしなやかであってほしい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ラグジュアリーを考える
伝統工芸の手法を生かした凝ったインテリアトリムは見事だが、ただしあまり斬新というか先進的な印象は受けない。室内トリムの演出やインストゥルメントの配置に“要素数”が多く、煩雑な印象を受けるのがその理由かもしれない。
ひとことで言えばくどい感じで、必要な時以外は何も見せないように削(そ)ぎ落とそうとしているアウディなどとは対照的だ。メーター表示もグラフィックが細かすぎて、オヤジ世代には見にくいのではなかろうか。せっかく世界最大級のヘッドアップディスプレイを装備したのだから、既存のメーターは思い切って簡略化するなどの大胆さが欲しかったと思う。
エンジンフードから独立したフロントフェンダーの峰など、部分的にはエレガントで魅力的なラインも見つけられるのだが、座ってみると、何だかちまちまとした料理の器がずらりと並ぶ一見豪勢な温泉ホテルの大名御膳を思い出してしまった。
エレガントという言葉には簡潔で美しいという意味が含まれている。スイッチの数が多いほうが豪華で高性能だと感じる人もまだいるだろうけれど、クールでミニマルな主張こそ現代的でリッチだと感じる人もいる。足し算だけではなく、引き算も上手に組み込んでこそ現代のラグジュアリーサルーンではないだろうか。
信じて突き詰めるしかない
レクサスの看板たるハイブリッドのLS500hは優雅に走るのが難しいという点でちょっとお薦めできないが、V6ツインターボのLS500ならば何とか皆さんの期待に応えられると思う。ただし、11年かかって生まれ変わった新型車、それもトヨタグループのフラッグシップとしてはやはりちょっと物足りないのである。レクサスLSが出場するのは世界選手権であり、そこには日々同じように鍛錬するライバルが存在し、もしかすると自分たちよりも先に進んでいるかもしれないことを忘れてはいけない。
トヨタの“匠”たちがそれに気づいていないはずはない。きっと何かの理由でやり切れなかった、あるいは突き詰める時間がなかったのかもしれない。そんな時は、椎名林檎でも中島みゆきでも聞いて、自分を奮い立たせてくじけずに進むしかないではないか。JASRACがうるさいからそのままの歌詞は引用しないけれど、この時代に手間暇かけてもかけなくても結局一緒と諦めるのではなく、きっと違いの分かる人はいるはず、である。それを信じて丁寧に作りましょう、と歌う椎名林檎氏のおっしゃるとおりである。レクサスはもっとできるはず、である。
(文=高平高輝/写真=尾形和美/編集=大久保史子)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
レクサスLS500“エグゼクティブ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5235×1900×1460mm
ホイールベース:3125mm
車重:2360kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:422ps(310kW)/6000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1600-4800rpm
タイヤ:(前)245/45RF20 99Y/(後)245/45RF20 99Y(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:9.5km/リッター(JC08モード)
価格:1540万円/テスト車=1623万4840円
オプション装備:L-ANILINE本革シート+レザーカットスペシャル(64万8000円)/245/45RF20 99Yランフラットタイヤ&20×8 1/2Jノイズリダクションアルミホイール<スパッタリング塗装>(16万2000円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ・ウインドシールドデアイサー等>(2万5000円)
テスト車の年式:2017年式
テスト開始時の走行距離:430km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
レクサスLS500“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5235×1900×1450mm
ホイールベース:3125mm
車重:2230kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:422ps(310kW)/6000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1600-4800rpm
タイヤ:(前)245/45RF20 99Y/(後)275/40RF20 102Y(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:10.2km/リッター(JC08モード)
価格:1200万円/テスト車=1244万8200円
オプション装備:ボディーカラー<ヒートブルーコントラストレイヤリング>(16万2000円)/“マークレビンソン”リファレンス3Dサラウンドサウンドシステム(28万6000円)
テスト車の年式:2017年式
テスト開始時の走行距離:2106km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。



















































