第492回:電気自動車ならではの強みを生かす
新型「日産リーフ」の先進装備はここがスゴイ!
2018.03.30
エディターから一言
拡大 |
「新型『リーフ』の開発秘話を話すので、本社に来てください」
そんな妙な(?)お招きをいただき、webCG取材陣は横浜市にある日産のグローバル本社へ。自動駐車機能とワンペダルドライブに関するうんちくを聞いてきました。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日産社内で行われる“うんちく大会”
日産が2017年10月2日に発売した電気自動車(EV)の新型「リーフ」。2018年2月末の時点での累計受注台数は1万8000台を突破しており、2017年のCEV補助金が終了しても、販売は堅調に推移しているとのこと。先代リーフの国内累計販売台数が、8万1675台だったことを踏まえると、新型車への注目の高さがうかがえる。
そんな新型リーフについて、開発者自身による開発“秘話”説明会が実施された。これは日産の社内で実施される技術発表会「うんちく大会」での発表内容を、メディア向けにも披露するというもの。ちなみに同大会は、担当外の技術者にも、新型車に搭載されている技術内容を理解してもらうために行われるもので、日産の坂本副社長を審査委員長としている。うんちく大賞の受賞者には、なぜか副社長の顔写真入り表彰盾がプレゼントされたそうだ。
さて、今回披露された技術のうんちくは、自動駐車機能「プロパイロットパーキング」、ワンペダルドライブを可能とした「e-Pedal」、静粛性と加速性能が向上した電動パワートレイン、航続距離向上に貢献したエアロダイナミクスの4項目となる。その中でも特に注目度が高いと思われるプロパイロットパーキングとe-Pedalを中心に紹介していきたい。
カメラと超音波センサーがフュージョン
新型リーフの目玉のひとつである自動駐車機能のプロパイロットパーキングは、ドライバーは最初にスイッチ操作を行うだけで、あとはステアリング、アクセル、ブレーキ、シフト、パーキングブレーキといった駐車動作のすべてを自動制御してくれるというもの。運転は好きでも駐車は苦手という人は意外と多いだけに、画期的な機能といえる。
他メーカーも自動駐車機能を備えたクルマをラインナップしているが、プロパイロットパーキングの最大の強みは、カメラと超音波センサーの機能をフュージョン(融合)させたこと。これにより枠にピタリと収める駐車を可能としているのだ。利用可能なシチュエーションは、後退駐車と縦列駐車、さらに前向き駐車となっている。前向きは必要? と思われるかもしれないが、これは主に充電時に活用できる。リーフはフロントに充電口があるので、充電器のケーブルの長さによっては、前向き駐車が必要な状況があるためだ。
搭載されるセンサーは、カメラがクルマの前後左右に計4台。さらに前後バンパーに計12個の超音波センサーを備え、これで車両周囲をカバーしている。全方位をカバーする機能として「アラウンドビューモニター」が用意されているが、それよりも解像度の高いカメラを使う点もポイント。この高解像度が白線認識を行う上で重要な役割を果たすのだ。
実際の駐車時には、カメラが駐車枠の自動検出と駐車枠のリアルタイムモニターを行う。超音波センサーは障害物を検知し、衝突の恐れがあれば自動でブレーキを作動させる。そして、カメラと超音波センサーの情報を組み合わせることで、移動可能なスペースを認識。障害物の位置を把握し、最適な経路を計算し、走行し、必要に応じて切り返しも行う。つまり、それぞれのいい部分を組み合わせて自動駐車を実現しているのだ。
プロパイロットパーキングに弱点はある?
リーフがプロパイロットパーキング搭載第1号となった最大の理由は、電動化にある。自動駐車するときの作動スピードは、かなりスムーズで速い印象を受けるが、実際の車速はクリープ程度。電動化によるステアリング操作やシフトのスムーズさが、体感的な速さとして感じられるようだ。この駐車スピードも、「遅すぎず、速すぎず」とベストな時間を検討して決定したそうで、技術的にはさらなるスピードアップも可能というから驚きだ。
まさに万能と思えるプロパイロットパーキング。できる限り多くのタイプの駐車場をカバーすべく開発されているのだが、やはりNGなものもある。その代表が、フラップ付きのコインパーキングだ。このほかパレットタイプも、段差や凹凸のあるものは厳しいという。これは安全上、クリープ速度以上の高いトルクを発生させないようにしているためで、段差や傾斜などは一定以上となると登ることができない。さらに、車両下部をセンシングする装置は備えていないため、状況によっては車止めのブロックなどにコツンと当たる場合もある。安全面はかなり考慮されているものの、各種センサーには不得手な状況もあるため、あくまでドライバーが監視した上での機能である点を忘れてはいけない。
プロパイロットパーキングの今後の他車種への展開予定を聞いてみると、検討はしているが、やはり電動化車両であるかどうかが、大きな分かれ目となるそうだ。なので、クルマによっては、機能を限定して投入することもあるかもしれないと、近い将来の展望を教えてくれた。
ワンペダルドライブは運転を楽にしない
新型リーフのもうひとつの目玉であるe-Pedalは、アクセル操作のみで加減速を可能とする機能だ。すでに「ノートe-POWER」にも似た機能が搭載されているが、リーフではそれをもう一歩進化させ、停止状態の保持までを可能としたことで、本当にワンペダルのみでのドライブを実現した。ポイントは、坂道などの傾斜した路面でも停止を保持できるところにある。その結果として、e-Pedalをオンにすることで、ブレーキペダルの操作を約90%削減できるそうだ。アクセルオフ時の減速力は最大で0.2G。街なかの走行なら、ほぼ十分な減速力だというが、それを超える減速が必要な場合は、ドライバーがブレーキペダルを踏む必要がある。
ここまで聞くと運転を楽にする機能と思うが、実はそれのみにあらず! 開発サイドの本当の狙いは、もっとEVの運転を楽しくするためだというのだ。彼らの言う“ずっと乗っていたいクルマ”とは、意のままに操れるクルマのこと。先代リーフでも、低重心構造による優れたコーナリングやモーターによる力強い加速は好評だったが、加速だけでなく、減速についてもリニアな動きができないか考えたという。それがe-Pedalとして世に出たわけだ。
減速時のキモとなるのは、回生ブレーキから摩擦ブレーキ(フットブレーキ)への受け渡しだ。EVなので、可能な限り回生ブレーキを活用したい。そのため、停止直前に摩擦ブレーキへと切り替わる仕組みとなっている。仮にリチウムイオンバッテリーが満充電に近く、回生ブレーキによる発電を必要としない状況では、摩擦ブレーキを併用することで、運転感覚が変わらないように配慮されている。
スリップしやすい路面でも役に立つ
前のページで「坂道でも止まる」とサラリと書いたが、実はここが難しいところで、停止時にモーターが発生するトルクが坂道の傾斜と釣り合うようにしなければ、クルマが前後に動いてしまう。ここに日産が培ってきた緻密なモーター制御技術が活用されているのだ。もちろん、実際に停止したあとはすぐに摩擦ブレーキが作動し、無駄に電気が消費されることはない。
さらに、e-Pedalを利用すると、雪道などの滑る路面も走りやすくなるそうだ。タイヤスリップなどの車両の動きをリアルタイムでモニターしており、前輪のみで減速する回生ブレーキだけでは不安定と判断すると、摩擦ブレーキが介入。4輪の減速力を制御することでトラクションを安定させるのだ。ここはテストドライバーにも評判のいいポイントなんだとか。
一部を抜粋した上に駆け足での紹介となってしまったが、ためになるうんちくを聞くことができた。雑感として、他社よりもクルマの電動化で先行しているというメリットを生かし、さらに使いやすいEVの実現につなげているのだという思いを抱いた。新型リーフが着実な進化を遂げた裏には、開発する技術者のアイデアと、日々の努力があることを忘れてはならない。
(文と写真=大音安弘/編集=藤沢 勝)

大音 安弘
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ! 2026.5.15 「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。
-
第869回:思わぬサプライズもいっぱい! クルマ好きのための祭典「シン・モーターファンフェスタ2026」で“最旬ニューモデル”に触れる 2026.4.24 日本最大級の“クルマ好きのための祭典”「シン・モーターファンフェスタ2026」に、発売を間近に控えるさまざまな注目モデルが終結! 会場の様子や、そこで得られた最新情報をお伝えしよう。
-
第868回:ウエット路面での実力は? ブリヂストンの新スタンダードタイヤ「フィネッサ」を試す 2026.4.22 2026年1月に発表されたブリヂストンの「FINESSA(フィネッサ)」は、次世代の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する最新のスタンダードタイヤだ。ドライ路面での試走報告に続き、今回は自慢のウエット性能をクローズドコースで確かめた。
-
NEW
ディフェンダー110ハードトップX-DYNAMIC SE D350(4WD/8AT)【試乗記】
2026.6.13試乗記写真を見ていつもの「ディフェンダー」とはどこか違うと思われた方は鋭い。このクルマは1ナンバー、つまり商用車登録の「ディフェンダー・ハードトップ」である。全長約5mのボディーに備わるシートは前の2座のみ。広大な荷室を使いこなす生活を思い描いてみた。 -
キャデラックCT5スポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.6.12試乗記アメリカのプレミアムブランド、キャデラックが擁する4ドアセダン「CT5」。その最新モデルに試乗する機会を得た。今や“上質な4ドア”というだけでも貴重な存在だが、さらにCT5には、ジャーマンスリーとは趣の異なる個性が確かに宿っていた。 -
ここがヘンだよCEV補助金! ―電気自動車のヘビーユーザーが不透明な補助金制度に物申す―
2026.6.12デイリーコラム普通車の「ホンダ・スーパーONE」は130万円で、軽自動車の「N-ONE e:」は58万円。ジープやテスラは120万円超なのに、BYDはたったの15万円! CEV補助金の支給額は、いったいどうやって決まるのか? EVのヘビーユーザーが、不透明な制度に苦言を呈す。 -
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)
2026.6.12JAIA輸入二輪車試乗会2026創業は1901年というアメリカの老舗、インディアンモーターサイクルの「チーフ ヴィンテージ」に試乗。往年の「チーフ」をオマージュしたという一台は、ネオクラシックモデルとしての完璧な趣と、濃厚なファン・トゥ・ライドを併せ持つマシンに仕上がっていた。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”編
2026.6.11webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。ほかのカローラ クロスとは異なるパワーユニットや足が与えられたスポーティーモデルを、プロはどのように評価するのか? -
メルセデス・ベンツS450d 4MATIC/S580 4MATICロング
2026.6.11画像・写真過去最大規模の改良を施したという、「メルセデス・ベンツSクラス」の最新型が上陸。2026年6月11日、東京・虎ノ門ヒルズで発表会が開催された。会場に展示された「S450d 4MATIC」と「S580 4MATICロング」の姿を紹介する。













































