マツダCX-5 XD Lパッケージ(4WD/6AT)/CX-5 25Sプロアクティブ(4WD/6AT)
人気者は休まない 2018.04.06 試乗記 デビューから1年で早くもマイナーチェンジを受けた「マツダCX-5」に試乗。「CX-8」と同じ「スカイアクティブ-D 2.2」や気筒休止機構を搭載した「スカイアクティブ-G 2.5」など、エンジンに大幅な改良が施された最新モデルの走りをリポートする。見分けがつかないけれど新型
昨年春に2代目にモデルチェンジしたばかりだから仕方ないのかもしれないが、それにしてもマイナーチェンジ後のモデルと従来モデルとの外観上の違いがないので見分けがつかない。カメラマン泣かせの新型マツダCX-5である。
今回のマイナーチェンジでは2.2リッターディーゼルターボとガソリンの2リッターおよび2.5リッターエンジンが最新型に換装されたのが最大の変更点であり、特に2.5リッターガソリン4気筒には気筒休止システムが組み込まれたことがトピックだ。
人気モデルであれば(2017年2月から12月までで国内4万台以上、グローバルで約26万台を販売したという)、急いでマイナーチェンジを行わなくても良さそうなものだが、スカイアクティブテクノロジーを投入した新世代商品群を送り出してからのマツダは、ユーザーにメリットのある改良はタイミングを計らずに、できる限り速やかに市場に投入する方針を採ってきた。
「もちろん新型にモデルチェンジした時にいっぺんに投入できれば良かったのですが……」と担当者もちょっと言いにくそうだったが、こればっかりは常に進化しなければならない商品の宿命ともいえる。
実質的な改良を受けて中身は一段と充実したものの、ぱっと見従来モデルと変化がないこともあって、装備の変更に伴うものを除けば、価格は事実上据え置きだという。
最新仕様エンジンを搭載
ディーゼルエンジンについては、兄貴分のCX-8と同じく進化したスカイアクティブ-D 2.2を搭載する。主な内容を紹介すると、まずターボチャージャーが異なる。スカイアクティブ-D 2.2は2ステージターボチャージャー(低回転用と高回転用の大小2基のターボ)を採用しているが、そのうちの高回転用(大きいほう)に可変ジオメトリーターボを新たに導入。ちなみにデミオなどの1.5リッター版は可変ジオメトリー付きのシングルターボである。
その結果、最高出力と最大トルクは従来型2.2リッターディーゼルターボ(175ps/420Nm)に比べて一段と増強され、190ps(140kW)/4500rpmと450Nm(45.9kgm)/2000rpmを発生する。また新形状のエッグシェイプピストンと高応答マルチホールピエゾインジェクターを採用して燃焼を改善、振動騒音を抑制したという。燃費向上のためには冷却水制御バルブや低張力ピストンリングなども新たに導入されている。
あらためて従来型の「XD Lパッケージ」に乗ってみると、これで十分にいいじゃないかという力強さとレスポンスだが、新型に乗り換えると、ああこれは別物だ、というぐらい洗練されている。始動する際もアイドリング時も、音・振動ともにこれまでより小さく、緩やかに加速していく際にもザラザラしたラフなフィーリングが伝わってこない。
また新型エンジンは、全開時にパワフルで加速に優れているというより、ごく普通にスロットルペダルを踏んで穏やかに加速しようという場合に、その反応に遅れがなく、ツキがいいのが特徴だ。最近マツダが取り組んでいる“躍度”の研究成果が表れているのかもしれない。
ディーゼルを敬遠する人が最大の難点として挙げるのは、スタート時や中間加速時のレスポンスの悪さだと思うが、操作に対する反応に遅れがなくスッと動き出し、ドライバーの意図した通りに加減速をコントロールできれば、軽快に身軽に、そして上質に感じられるものだ。
ノイズと乗り心地に関してはさすがにCX-8に一歩及ばないようだが、車重はおよそ200kg軽いから明らかに身軽だ。微妙な加減速のレスポンスが問題となる市街地でこそ、レスポンスに優れ、リニアにパワーが湧き出る新型ユニットの特長は明らかである。
2気筒か4気筒かは分からない
ガソリンのスカイアクティブ-G 2.0と2.5には登場以来初めてハード面にも手が入れられたが、スペックはほとんど変わらない。試乗した「25Sプロアクティブ」が積む2.5リッターエンジンは、従来の184ps(135kW)/6000rpmと245Nm(25.0kgm)/4000rpmから188ps(138kW)/6000rpm、250Nm(25.5kgm)/4000rpmへ出力・トルクともにわずかに増強されているが、主な狙いはさらなる効率向上である。
そのために低抵抗のピストンやピストンリングを採用してフリクションを低減、さらに冷却水流の制御バルブ、可変容量オイルポンプ、精密制御インジェクターなどを備えたのは2リッター/2.5リッター共通、そのうえで2.5リッター版には負荷が小さい状況で4気筒のうちの2気筒を休止させるシステムが採用されたことが注目点である。
ただしこれも、たとえ耳を懸命にそばだてていても、今何気筒が働いているのかを感じ取ることは不可能である。試乗車にはスマホを利用した作動モニターが備わっていたが、市販モデルには2気筒と4気筒モードを識別する表示はないから、ドライバーはどのモードで走っているかはまったく分からないはずだ。
フライホイールに特別な“振り子ダンパー”を組み込み、燃料噴射や点火タイミングを緻密に制御したというだけあって、切り替え時のショックや音はなく、2気筒走行で振動が大きくなることもない、まったくの“黒子”システムである。
もっとも、それによる燃費向上はJC08モード数値には表れないというより、2.5リッターの4WD同士を比べるとJC08モードでは14.6km/リッターから14.2km/リッターへむしろ低下している。これはより現実に即した今後のWLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)モードへの適合を考えたためで、マツダによれば実用燃費では違いが出るという。
2021年にはCO2平均規制値が95g/kmとなるEU市場をにらめば(マツダ車が売れているからこそ)、先を見据えて手を打つ必要があるのだ。ちなみに2.2リッターディーゼルターボ搭載のXD Lパッケージの4WDで比べると、JC08モード燃費も従来型の17.2km/リッターから18.0km/リッターに向上している。
細部は意外に変わっている
パワートレイン以外の変更点は多くない。外観はまったく変わらないと言ったが、実は細かい点だが360°モニターが設定されているモデルには、フロントの大きなマツダエンブレムの下にカメラが装着されている。他にも細かい部分だが、「細部をみっちり改善しました!」と目を輝かせてアピールするのがマツダのバージョンアップだから、細かく説明しよう。
車速感応式オートドアロックが全車標準になったこと、運転席パワーウィンドウスイッチに運転席用だけでなく全ドア分にオートモードが付き、おかげで“AUTO”の文字が消え、さらにイルミネーションが付いたこと、またMRCC(マツダ・レーダークルーズコントロール)ステアリングスイッチに“ON”の文字が加わった。
以前はMRCCスイッチに“MODE”の表示しかなく、分かりにくいとの声があったのだという。というのもマツダ車は今もレーダー追従式と、シンプルなクルーズコントロールの、2種類のモードを切り替えられるからだ。さらにこれまでは115km/hまでしか設定できなかったが、その制限が外れたことも細かいが実質的な改良点である。
見た目ではなく、細かい中身をきっちりバージョンアップした点に、ユーザーに受け入れられているというマツダの自信が表れているように思う。
(文=高平高輝/写真=尾形和美/編集=大久保史子)
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テスト車のデータ
マツダCX-5 XD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190ps(140kW)/4500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:18.0km/リッター(JC08モード)/16.6km/リッター(WLTCモード)、13.6km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、16.5km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、18.6km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:355万8600円/テスト車=363万4200円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2127km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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マツダCX-5 25Sプロアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1620kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:188ps(138kW)/6000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:14.2km/リッター(JC08モード)/13.0km/リッター(WLTCモード)、10.2km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、13.4km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、14.7km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:299万1600円/テスト車=318万6000円
オプション装備:ドライビング・ポジション・サポート・パッケージ<運転席10wayパワーシート&シートメモリー[アクティブ・ドライビング・ディスプレイ連動]+運転席&助手席シートヒーター+ステアリングヒーター>(6万4800円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/パワーリフトゲート(5万4000円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2310km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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