フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン(FF/7AT)
大きく 大人っぽく 2018.04.24 試乗記 フォルクスワーゲンのベストセラーコンパクト「ポロ」がフルモデルチェンジ。エンジンがさらにダウンサイジングされた一方で、ボディーは大きく立派になり、ついに3ナンバーの領域に突入。そこに“ポロらしさ”はあるのだろうか。立派で堂々としている
ポロの魅力って何だろう。エントリーグレードから高性能な「GTI」、エコモデルやクロスオーバータイプまで、これまでさまざまなタイプのポロに乗ってきた。バリエーションは豊富だが、いずれにも共通する、核となるポロらしさともいうべきものがある。
「軽やかさ、若々しさ」
「抑制のきいた端正なスタイリング」
「生活に密着した実用性」
「普通に走って気持ちいい」
ポロを表現するのに、いつも同じようなフレーズを使ってきた。
今回試乗したのは、2009年以来のフルモデルチェンジを受けた6代目である。ポロのキャラクターは健在だろうか。好きなモデルであればこそ、期待しながらも不安な気持ちで対面した。「え?」と声が漏れそうになる。ポロって、こんなに立派だったっけ。
全長と全幅がそれぞれ65mmずつ拡大され、堂々とした体つきになった。これまで守り続けてきた、5ナンバーのリミットである車幅1700mmを一気に突破してしまった。ポロが3ナンバーサイズになる日がくるなんて、誰が想像しただろう。全高は10mm下げられているから、腰高感はまったくない。ワイドで低く構えたスポーティーなスタイルである。知らずに見たら、ポロだとは思わなかったんじゃないか。
立派なのは大きさだけではない。ボディーには切れ味のいいエッジが刻まれていて、工作精度の高さを感じさせる。触れればケガをしそうなほどのシャープな折れ角で、研ぎ澄まされた端正さだ。1mmの狂いもなく連続し、リアコンビネーションランプの樹脂部分も正確にラインが一致している。
ダウンサイジングターボは最終型
先代モデルはもう少しおおらかな作りで、のんびりとした気構えだったと思う。いつの間にか、妥協を許さない厳しさを身につけたようだ。都会的で洗練された趣味を習得したのだ。太田裕美のヒット曲『木綿のハンカチーフ』ではアカ抜けたライフスタイルを知った青年が田舎に残してきた恋人を捨ててしまったが、クルマなのだから洗練はプラスの意味しかない。
2009年に発売された5代目はパワーユニットがダウンサイジングされていく時期をくぐり抜けてきたことになり、1.4リッター、1.2リッターと着実に排気量を減らしていった。「up!」の1リッター3気筒をターボ化したエンジンを搭載したモデルも限定販売されたことがある。さすがにもう減らしようがなく、新型のエンジンにも1リッター3気筒ターボのみが設定されている。95psという最高出力は変わらないが、最大トルクが限定モデルの160Nmから175Nmへと増えていて、そのせいかJC08モード燃費は23.4km/リッターから19.1km/リッターに下がっている。
1.2リッターターボの90psよりも5ps強力なのだから、さぞ力強い発進をするのだろうと思ったらそうでもなかった。トロいというほどではないが、スピードに乗るまでちょっともどかしい。信号待ちでアイドリングストップしていてからのスタートでは、エンジンがかかるタイミングを計算に入れないと出遅れ気味になることもある。ついでに細かい文句をつけると、エンジン再始動の時にブルンとくるのはあまり行儀がよくない。震度2ぐらいの振動である。
箱根の登り坂でマニュアルモードを用いてフル加速を試みると、1速と2速はすぐに吹けきってしまった。それでもたいしたスピードは出ていない。ローギアードにして強引にパワー不足を補っている感じだ。3速に入ってからは、2速と切り替えながらワインディングロードを楽しく走ることができる。目の覚めるような加速や鮮烈なハンドリングがあるわけではないけれど、軽やかな走りが心地よい。
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斬新な駐車支援システム
高速道路巡航は、至って静かだ。微振動があってちょっと安っぽい感じもするが、ポロはそういうことに目くじらを立てなければならないクルマではない。「ゴルフ」のようなしっとり感を求めるのは筋違いである。内装は簡素で実用性重視。余計なご機嫌取りがないのが好ましい。ポロらしい抑制されたしつらえである。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)を試す。ステアリングホイールの左側にあるスイッチで速度と車間距離を設定すると、優秀な追従性能を示した。機敏なレスポンスで前車の動きに対応する。ステアリング操作もクルマに任せようと思ったら、スイッチが見当たらない。レーンキーピングアシスト機能はついていないようだ。2つはセットだと思いこんでいたから、ちょっとびっくりした。
その代わりというわけでもないのだろうが、駐車支援システムの「Park Assist(パークアシスト)」が装備されている。縦列駐車や車庫入れの際にステアリング操作を自動で行うものだ。同様な機能を備えるモデルはほかにもあるが、パークアシストはこれまで体験したことのないタイプだった。普通は駐車枠を検知して白線の中にクルマを誘導しようとする。パークアシストが探すのは、ほかの駐車車両である。クルマとクルマの間に駐車する機能であるため、ほかにクルマがいなければシステムは作動しない。実際に使ってみると、正確に両脇のクルマの中間へと導かれた。斬新で面白かったが、おあつらえ向きの状況がいつもあるとは限らない。
ボディーサイズ拡大の恩恵で、荷室スペースも大きくなった。先代より71リッター増えて351リッターという十分な容量である。床下には、アンダーボックスも備えられている。ただし、使い勝手はあまりよくなさそうだ。タイヤの形をしたスペースの真ん中に、パンク修理キットが据え付けられている。スペアタイヤを載せておかなければならない場合に備えた仕組みになっているので、効率的な空間配置ができないのだろう。
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「ポロらしさ」は健在
クルマを降りてあらためて眺めてみる。これがBセグメントのクルマであるという事実をまだ受け入れられない。新型ポロはゴルフなどと同じアーキテクチャーの「MQB」を採用していて、サイズが接近するのも当然なのだろうけれど。
現行のゴルフは全長×全幅×全高が4265×1800×1480mmなので、4060×1750×1450mmの新型ポロはひと回り小さいサイズではある。ただ、初代ゴルフの3705×1610×1395mmと比べればはるかに巨大だ。ちなみに初代ポロは3512×1559×1344mm。1975年のモデルだから今とはまったく環境が異なるわけだが、本当に小さなクルマだったのだ。
最初に列挙した「ポロらしさ」は、新型でも失われていなかった。軽やかな走りで端正なスタイリングを持ち、高い実用性を備える。取り立ててハイパワーだったり機敏だったりはしないが、普通に気持ちよく走れる。過剰さを排除していて、身体感覚に沿った快適性がある。嫌みがなく、あざとさとは無縁だ。生活に密着した実用車であり、多くの人のライフスタイルにマッチするだろう。
おっと、ひとつ抜けていた。若々しさである。しばらく会わない間に、ずいぶん成長していた。サイズはもちろんのこと、全体的に落ち着いた所作を身につけて大人っぽくなったように感じられる。95psのパワーユニットはポロには十分だし、多少の微振動もポロならばむしろ愛嬌(あいきょう)だ。体格がゴルフに近づいてしまったことで、それが少し不釣り合いな特徴に感じられてしまったのかもしれない。成長と成熟は喜ぶべきことである。わかってはいるけれど、イマイチさえないところがあっても、生気にあふれてハツラツとしたポロが懐かしくなってしまった。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1750×1450mm
ホイールベース:2550mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:95ps(70kW)/5000-5500rpm
最大トルク:175Nm(17.9kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)195/55R16 81V/(後)195/55R16 81V(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト5)
燃費:19.1km/リッター(JC08モード)
価格:265万円/テスト車=297万4000円
オプション装備:“Discover Pro”パッケージ(22万6800円)/セーフティーパッケージ<ハイライン向け>(9万7200円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2036km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:551.0km
使用燃料:40.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.5km/リッター(満タン法)/13.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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