ポルシェ911 GT3 RS(RR/7AT)
喜びに打ち震える 2018.05.23 試乗記 991型「ポルシェ911」の集大成ともいえるスペシャルモデル「GT3 RS」に、ニュルブルクリンクGPコースで試乗。軽量ボディーに歴代GT3 RS最高となる520psの自然吸気エンジンを載せたマシンは、緊張感と高揚感をドライバーにもたらした。そろそろ伝統を語っていい
GTプロダクトラインマネジャーのオリバー・ベルグ氏によれば、イメージカラーの鮮やかなグリーンは、開発テストのため訪れていたニュルブルクリンクでたまたま黄緑色の74年式「911カレラRS 3.0」を見かけたことがきっかけで、新たに設定することにしたのだという。色味は「当時の色と98%同じです」とも。
ボディーサイドの「GT3 RS」のストライプだって、あらためて説明するまでもなく伝説の1973年式「911カレラRS」のそれがモチーフだ。ポルシェの歴史には、こうやって引き出してきて使える、そしてファンが狂喜すること間違いなしの伝統を想起させるアイデアのストックが本当にたくさんある。
GT3 RSというモデルも、そろそろ伝統を語ってもいい頃合いとなりつつあるのかもしれない。初代モデルはタイプ996後期型の時代である2003年にデビュー。つまり今年は15周年の節目に当たる。それ以降、ポルシェ カレラカップ用レーシングカーのベース車となるレース直系の911として、そして自然吸気911のトップパフォーマンスモデルとして歴代モデルにラインナップされてきたことは、ファンならば誰でも知っての通りだ。
そんなGT3 RSモデルの最新型は、スポーツカーのパフォーマンスの指標となるニュルブルクリンク北コースで6分56秒4という、先代から実に24秒も速いラップタイムを記録する、すさまじいパフォーマンスを引っ提げてデビューした。この速さがどれだけのものかは、あの「918スパイダー」の記録が6分57秒7だと聞けば、すぐに理解できるだろう。
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最高許容回転数は9000rpm
これほどのタイムアップを可能にしたハードウエアは、まずシャシーに関してはほぼ昨年登場した「GT2 RS」に準じたものとなっている。前20インチ/後ろ21インチのよりワイドなタイヤを収めるべく、幅広いフェンダーを持つターボボディーを使い、軽量化のために炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のフロントフードやフェンダー、マグネシウム製ルーフ、携帯電話などにも使われている化学強化ガラスなどを採用しているのは従来通り。
そこに、前方に突き出したリップスポイラー、ブレーキ冷却とドラッグ低減に貢献するボンネット上のNACAダクト、やはりCFRP製の固定式リアスポイラーなどの専用空力パーツを装備することで、最大ダウンフォース量は先代より実に40%も向上しているという。
シャシーも、ほぼGT2 RSと共通。スプリングレートもそろえられ、つまり先代GT3 RSに対してフロントは倍以上、リアも3割増まで高められている。また、ほとんどのゴムブッシュはユニボールジョイントに置き換えられた。
先代では「GT3」の3.8リッターに対して4.0リッターと排気量で差別化されていた水平対向6気筒自然吸気エンジンだが、新型では排気量は4.0リッターでGT3と変わらない。先代とも一見、共通かと思わせるが、実はこのエンジンはGT3から使われている「911 GT3 R」や「911 RSR」といった純レーシングマシン用とも基本設計を共有する新型ユニットである。
最高許容回転数は先代より200rpm上がって9000rpmという超高回転型のこのエンジンは、GT3に対してプラス20psの最高出力520psを発生する。この20psは、ターボボディーの採用でリアにエアダクトが備わり、吸気の取り回しにも余裕ができたことから獲得できたものだという。トランスミッションは7段PDKのみだ。
回すほどに活気づく
これだけでも相当なパフォーマンス向上が予感されるが、ポルシェは新型911 GT3 RSに、GT2 RSに続いてオプションとしてヴァイザッハ パッケージも設定している。これはルーフや前後のアンチロールバー、シフトパドルなどをCFRP製とし、ロールケージはチタン製に。
ほかにもカーペットを薄くするなどして、さらに30kgを削り取るものだ。また、公道走行可能ながらドライグリップに特化したトラック用タイヤも、新たにディーラーでの購入が可能になるという。6分56秒4を実現するのは、この組み合わせである。
ニュルブルクリンクサーキットのグランプリコースで行われた試乗で、まず気分を高揚させたのは、そのパワーユニットだ。はじけるような、しかしあくまでリニアなレスポンスと、回すほどに活気づく特性、そして豪放なサウンドは、もっともっととドライバーをけしかけてくる。しかも、今どきのターボカーたちのほとんどが、そろそろ勢いを失ってくる7000rpmあたりから先で、2段目のロケットに点火されたかのように勢いが増してくるのだからたまらない。
そこから9000rpmまでのトップエンドの伸びの良さとパワー感は、確かにGT3以上かもしれない。やはり一層迫力を増しているサウンドの演出でそう感じている部分もありそうだが、とにかくアクセルペダルを踏み込むたびに喜びに打ち震えて、頭が真っ白になるのは事実。何度も何度も、むさぼるように味わいたくなる麻薬的な快感だ。
カップカーと同じ高揚感
対して、ハンドリングは決して甘くない。ワイドなトレッド、ワイドなタイヤ、そしてユニボールを使ったサスペンションは、GT3では不満に思わなかったフルバケットシートのホールド性が物足りなく感じられるほどの高いコーナリングスピードを実現する一方で、挙動をシビアにしている。
スライドとグリップの境界線は狭く、行き過ぎるとポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム(PSM)をオンにしていてもリアが大きく、しかもそれなりの速さで滑り出す。一気にスピンモードに入るようなことはなく、止まりはするのだが、そうなったらタイムは期待できない。おいしい領域で走るには、快感に打ち震えてばかりいないで集中しなければならないのである。
けれど、それはこのクルマにとっては欠点ではない。筆者はかつて、タイプ997時代の911 GT3カップで、ワンメイクレースのポルシェ911 GT3カップチャレンジに参戦していたのだが、今回実感したのは、この新型911 GT3 RSで感じる緊張感と、その先にある高揚感は、カップカーで感じたものとまったく変わらないということだった。このクルマのユーザーは、まさにそういうものを求めているはずであり、またそれこそがGT3 RSというモデルが築き上げてきた伝統なのだ。
(文=島下泰久/写真=ポルシェ/編集=鈴木真人)
テスト車のデータ
ポルシェ911 GT3 RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4557×1880×1297mm
ホイールベース:2453mm
車重:1430kg(DIN)
駆動方式:RR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:520ps(383kW)/8250rpm
最大トルク:470Nm(47.9kgm)/6000rpm
タイヤ:(前)265/35ZR20/(後)325/30ZR21
燃費:12.8リッター/100km(約7.81km/リッター、欧州複合サイクル)
価格:--万円/テスト車=-- 円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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