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ボルボV90クロスカントリー オーシャンレースエディション(4WD/8AT)

限定車好きにはたまらない 2018.06.02 試乗記 鈴木 真人 世界一周ヨットレース「ボルボ・オーシャンレース」をモチーフにした限定車「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」に試乗。日本には15台のみが導入される“レア”なモデルは、悠然とした身のこなしを見せるプレミアムな一台に仕上がっていた。

ヨットレース開催の年にだけ登場

ボルボの「オーシャンレースエディション」に乗るのは久しぶりだなあと思いながら試乗車に対面して驚いた。白いではないか。これまでに乗ったオーシャンレースエディションは、みんな青いボディーカラーだったはずである。「オーシャンブルーパール」「オーシャンブルーメタリック」という限定色を使い、大海原をイメージさせていたのだ。どういう心境の変化なのか、今回の特別仕様車は「クリスタルホワイトパール」ということになったらしい。

前回試乗したのは2012年の秋。クルマは「XC70オーシャンレースエディション」だった。「XC70 T6 AWD」をベースにした特別限定車で、3リッター直6ターボエンジンを搭載していた。今では直4オンリーとなったボルボだが、ほんの少し前までずいぶん勇ましいパワーユニットを扱っていたのだ。

その前に乗ったのは2005年。能登半島の千里浜なぎさハイウェイで、「V70オーシャンレースリミテッド」「XC70オーシャンレースリミテッド」「XC90オーシャンレースリミテッド」の3台に乗った。V70では「102万円相当の装備を付けて41万円高」というのが売り文句となっていて、お買い得モデルという意味合いが強かったようだ。

残念ながら試乗はできなかったのだが、2002年には「V70XCオーシャンリミテッド」、2008年には「XC70オーシャンレースエディション」、2015年には「V40オーシャンレースエディション」が発売されている。とびとびになっているのは、世界を一周するヨット競技のボルボ・オーシャンレースの開催を記念した特別仕様車だから。1973年に始まったレースで2001-2002年シーズンからボルボがオーガナイズすることになった。それ以来、レースが行われる年に限定車を作るのが習わしとなっている。

今回の「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」は、特装車両などの開発を専門とするボルボのスペシャルビークルチームの手になるモデル。グローバルで3000台のみの限定販売となる。
今回の「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」は、特装車両などの開発を専門とするボルボのスペシャルビークルチームの手になるモデル。グローバルで3000台のみの限定販売となる。拡大
インテリアでは、フレアオレンジのアクセントや専用カーボンファイバーパネルなどが、ヨットレースの世界観を演出している。
インテリアでは、フレアオレンジのアクセントや専用カーボンファイバーパネルなどが、ヨットレースの世界観を演出している。拡大
「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」の開発にあたっては2014年に発表された「コンセプトXCクーペ」をイメージ。内外装のカラーも同コンセプトカーで用いられたカオリングレー&フレアオレンジを随所に採用している。
「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」の開発にあたっては2014年に発表された「コンセプトXCクーペ」をイメージ。内外装のカラーも同コンセプトカーで用いられたカオリングレー&フレアオレンジを随所に採用している。拡大
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お買い得より希少性

日本ではオーシャンレースと聞いてもピンとこない人が多いだろうが、ヨーロッパでは高い人気を誇るらしい。世界3大レースの1つなんだそうだ。9カ月かけて世界の海をめぐる長丁場の戦いである。今年のはじめに香港に寄港したときの競技の様子がwebCGでリポートされていたので、興味のある方は読んでみてください。

今回のオーシャンレースエディションは、わずか15台の限定販売。以前も販売台数は限られていたが、数はひと桁多かった。世界でも3000台というから、割り当てが少ないのも仕方がない。台数だけでなく、販売する店舗がボルボ スタジオ青山のみというのもハードルを上げている。希少性が高く、前のようにお買い得モデルという位置づけではないようだ。

ベースとなるのは「T6 AWDサマム」。2リッター直4エンジンをターボチャージャーとスーパーチャージャーで過給し、最高出力320ps/5700rpm、最大トルク400Nm/2200-5400rpmを得ている。内外にオーシャンレースの名が刻印されたバッジやプレートが付けられるほか、カラーリングで特別な一台であることをアピールする。

ボディー前後端の下部にオレンジのボディーパーツが加えられ、内装を見てもシートのパイピングやシートベルトが鮮やかなオレンジだ。スバルのSTIバージョンや三菱のアクティブギアでも同様の配色があった。それほど好評だったという記憶はないのだが、こういうのが流行しているのだろうか。

フロントのバンパー下部には専用カオリングレーカラー・ボディーパーツを装備。
フロントのバンパー下部には専用カオリングレーカラー・ボディーパーツを装備。拡大
専用ナッパレザー/”オープングリッド”テキスタイル・コンビネーションのシート。パイピングやシートベルトはフレアオレンジでコーディネートされる。
専用ナッパレザー/”オープングリッド”テキスタイル・コンビネーションのシート。パイピングやシートベルトはフレアオレンジでコーディネートされる。拡大
リアバンパーの下部もグレーとオレンジのパーツで飾られる。
リアバンパーの下部もグレーとオレンジのパーツで飾られる。拡大

大雨でも機能する電子の目

フロアマットやラゲッジフロアパネルなど、専用パーツがてんこ盛りだ。快適装備では、「Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム」が付いていた。「チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ」も装備されるが、試乗車ではあまり役に立たなかったのがもったいない。「専用ルーフボックス」が装着されていて、上部がさえぎられてしまっていたからである。専用装備であるにもかかわらず、このルーフボックスがオプション扱いとなっている理由がよくわかった。

試乗日はあいにくの雨。それでも箱根を目指したが、天候はどんどん悪化していく。自慢のツインチャージャーをフル稼働させることはできないが、4WDの安定した走りは不安感を生じさせない。土砂降りの中をクルージングするXC90オーシャンレースエディションは、あたかも海原を行くように悠然とした身のこなしを見せる。

先進安全機能の「インテリセーフ」が装備されているのは当然のこと。衝突回避や衝撃軽減のオートブレーキシステムは歩行者や自転車も検知し、夜間でも使えるという。悪天候で視界が悪くなってくると、電子機器のサポートが頼りになる。全車速追従機能付きアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)と車線維持支援機能のパイロットアシストを作動させた。

インテリセーフにすべてを任せようとは思わないが、人間の目よりも優れた部分のある認知機能は役に立つ。フロントウィンドウの上部に設置されたカメラとミリ波レーダーは、水しぶきでかすむ前車と車線をしっかり認識していた。2012年のXC70オーシャンレースエディションにも、その頃はまだ普及が十分ではなかったACCが装備されていた。ボルボは早くから運転サポート機能を取り入れていたので、技術の熟成が進んでいるのだろう。このクルマに限らず、前車追従の正確さとレスポンスのよさには一日の長があると感じる。

「チルトアップ機構付き電動パノラマガラスルーフ」も「オーシャンレースエディション」の特別装備。
「チルトアップ機構付き電動パノラマガラスルーフ」も「オーシャンレースエディション」の特別装備。拡大
試乗車に装備されていた「専用ルーフボックス」はオプション(32万4000円)で用意される。
試乗車に装備されていた「専用ルーフボックス」はオプション(32万4000円)で用意される。拡大
水や汚れにも強いタイプの専用フロアマット/ラゲッジマットも標準装備。アクティブなライフスタイルにも対応する。
水や汚れにも強いタイプの専用フロアマット/ラゲッジマットも標準装備。アクティブなライフスタイルにも対応する。拡大
全長×全幅×全高=4940×1905×1545mmという堂々たる体躯(たいく)を誇る「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」。高速道路をゆったりと巡航するのが似合うクルマだ。
全長×全幅×全高=4940×1905×1545mmという堂々たる体躯(たいく)を誇る「V90クロスカントリー オーシャンレースエディション」。高速道路をゆったりと巡航するのが似合うクルマだ。拡大

パワフルなT6ユニット

車重は1910kgと軽くはないが、T6ユニットは巨体を力強く加速させる。T6というのは、かつては3リッター直6ターボに与えられていた名称なのだ。パワーはむしろ現在のT6が上回っていて、十分すぎる動力性能をもたらしている。前にT8 Twin Engineユニットを積んだ「V90」に乗ったが、それほど差があるようには思えない。T8はT6に87ps、240Nmを生み出す電気モーターをプラスしたハイブリッドシステムだが、モーターアシストは限定的だったので大きな違いを感じられなかったのだろう。

全長4940mm、全幅1905mmというサイズは、街なかではちょっと持て余す。コインパーキングに駐車するときは神経を使った。高速道路を堂々と巡航するのが似合うクルマだ。乗り心地もゆったりしていて、後部座席は快適な空間となる。白とオレンジのコントラストに目がチカチカすることがなければ、おもてなし気分を味わえるだろう。

V90クロスカントリー オーシャンレースエディションのデザインは、2014年のデトロイトショーで発表された「コンセプトXCクーペ」のイメージが元になっているという。オレンジのアクセントも、このコンセプトカー譲りなのだそうだ。ブルーのボディーカラーを離れて新たなオーシャンレースエディションに移行したのは、直接的にレースを想起させるよりももう少し普遍性を持ったプレミアム性を主張したいからなのかもしれない。

2017-2018大会は6月にオランダのデン・ハーグでフィナーレを迎える予定となっている。次のボルボ・オーシャンレースは、2020年から2021年にかけて開催される予定だ。おそらく、また新たなオーシャンレースエディションが登場することになるだろう。ボルボは2019年以降は純粋に内燃機関のみで走るクルマは作らないと宣言しているから、次の特別仕様車はハイブリッドかプラグインハイブリッド、あるいは電気自動車になるはずだ。今回が最後のガソリンエンジン仕様オーシャンレースエディションということになるわけで、販売される15台の希少性ははなはだ高いのである。

(文=鈴木真人/写真=田村 弥/編集=近藤 俊)

2リッター直4エンジンをスーパーチャージャーとターボチャージャーで過給する「T6」ユニット。最高出力320psと最大トルク400Nmを発生させる。
2リッター直4エンジンをスーパーチャージャーとターボチャージャーで過給する「T6」ユニット。最高出力320psと最大トルク400Nmを発生させる。拡大
リアシートも白/グレー/オレンジでコーディネート。乗り心地もゆったりとしていて、移動中は快適な空間となる。
リアシートも白/グレー/オレンジでコーディネート。乗り心地もゆったりとしていて、移動中は快適な空間となる。拡大
荷室容量は560~1526リッター。60:40分割可倒式のリアシートを倒せば、ご覧のように広大な空間が現れる。
荷室容量は560~1526リッター。60:40分割可倒式のリアシートを倒せば、ご覧のように広大な空間が現れる。拡大
足まわりでは、電子制御式リア・エアサスペンションがシャシーコントロールシステムとともに装備されている。
足まわりでは、電子制御式リア・エアサスペンションがシャシーコントロールシステムとともに装備されている。拡大

テスト車のデータ

ボルボV90クロスカントリー オーシャンレースエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4940×1905×1545mm
ホイールベース:2940mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:320ps(235kW)/5700rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2200-5400rpm
タイヤ:(前)245/45R20 103W/(後)245/45R20 103W(ピレリPゼロ)
燃費:10.7km/リッター(JC08モード)
価格:969万円/テスト車=1001万4000円
オプション装備:専用ルーフボックス<クリスタルホワイトパール>(32万4000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2405km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:288.1km
使用燃料:35.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.1km/リッター(満タン法)/8.0 km/リッター(車載燃費計計測値)

ボルボV90クロスカントリー オーシャンレースエディション
ボルボV90クロスカントリー オーシャンレースエディション拡大
20インチの専用5スポークアルミホイール。試乗車には245/40R20サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが装着されていた。
20インチの専用5スポークアルミホイール。試乗車には245/40R20サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが装着されていた。拡大
荷物の出し入れの際にバンパーを傷から守る専用バンパー・ダートプロテクションマットも用意される。
荷物の出し入れの際にバンパーを傷から守る専用バンパー・ダートプロテクションマットも用意される。拡大
 
ボルボV90クロスカントリー オーシャンレースエディション(4WD/8AT)【試乗記】の画像拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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