ポルシェ・パナメーラ ターボ スポーツツーリスモ(4WD/8AT)
速すぎるワゴン 2018.06.30 試乗記 ワゴンボディーをまとう「ポルシェ・パナメーラ スポーツツーリスモ」のトップパフォーマンスモデルに試乗。4リッターV8ツインターボエンジンを搭載し、最高速304km/hを誇る、その走りとは? 標準ボディーとの比較も合わせてリポートする。陸の王者ではある
路面に張り付くようにピタリと安定して、空気の壁を切り裂きながらバシューッと疾走する「パナメーラ ターボ スポーツツーリスモ」で東北道を北上していると、万能無敵なハイウェイの王者になったような気がしてきた。かなりの自制心が必要だ。
4リッターV8ツインターボエンジンは、どんな速度域でも自由自在のパワーを提供してくれるが、トップ8速での100km/hはわずか1200rpmぐらいなので、追い越しの際にも2000rpmも回せば十分すぎるほど。しかも今や8気筒の半分を軽負荷時に休止させるシステムやコースティング機能も備わっており、走っているうちに車載燃費計の数字はするすると伸びていく。高速道路だけなら10km/リッター以上は堅いところだろう。
パワーだけでなく、効率も追求した新ユニットの面目躍如である。さらにようやくパナメーラにも最新のADAS(先進安全運転支援システム)が備わり、渋滞でも楽チンを決め込むことができる。ただし、約2450万円という車両価格にもかかわらず、トラフィックジャムアシスト付きアダプティプクルーズコントロールは50万4000円のオプションである。
他にも32.5万円のリアアクスルステアリング、85.4万円のPDCCスポーツ(ポルシェ トルクベクトリング プラスを含む)、そして162.3万円也のセラミックコンポジットブレーキという計500万円以上のオプション装備が満載され、総額では3000万円を超える金額に達している。V8ツインターボ搭載の4WDポルシェであるからには高価で当然だが、オプションリストを見ただけでウームと唸(うな)らざるをえなかった。ちなみにシリーズで最もベーシックな「パナメーラ」は1162万円である。
同時に以前に乗った標準ボディーの「パナメーラ ターボ」との違いについて考えずにはいられなかった。ハッチバックの標準ボディーと“一応”ワゴンのスポーツツーリスモと分ける必要があったのだろうか。使い勝手がさらに向上したのなら、このスポーツツーリスモをパナメーラのスタンダードモデルとして一本化して何ら問題がないように思う。というのも、ボディーの外寸など基本的なスペックは事実上ほぼ同じであるからだ。
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極論すればルーフを伸ばしただけ
ポルシェはやはり「911」と決め込んでいる古い頭の私からすると、最も理解しにくいポルシェが実はパナメーラである。全長5m余りの巨体をとんでもないスピードで走らせる技術には感心するが、決して広くはない室内のセダン(というか5ドアハッチ)がポルシェのエンブレムを付けていることにいまだに馴染(なじ)めないのだ。そこにいわばルーフラインを伸ばしただけでステーションワゴンを名乗るモデルが加わったのだからさらにオジサンは悩む。
あらためて言うと、2017年のジュネーブショーでデビューしたのがパナメーラのワゴンバージョンであるスポーツツーリスモだ。といっても、一般的なセダンをワゴン化する場合とは異なり、パナメーラ スポーツツーリスモのボディーの3サイズは標準型とほぼ変わっていない。ホイールベースも2950mmで同一だから、乱暴に言えばルーフを伸ばした先により小さなハッチゲートを取り付けただけ、シューティングブレークと呼べなくもないが、正直より“ウナギイヌ”のようなプロファイルが際立って見える。
車に興味がない人にはスタンダードのパナメーラかスポーツツーリスモか、見分けがつかないぐらいの微妙な違いである。ラゲッジスペースは20リッター増えて520リッター(後席を畳めば最大1390リッター)に拡大されたが、それよりも後席が3人掛けとなり、バックレストも40:20:40で分割可倒式になったことで、日常での使い勝手が向上したことのほうに意味があるかもしれない。
もっとも、巨大なセンタートンネルのせいでリアの中央席は大人に勧めるにはちょっとかわいそうだ。ちなみにこの試乗車は後席2名仕様だった。標準仕様との違いはこれだけ、それを別のモデルラインとして発売してしまうのだからさすがの商売上手である。
踏めば恐るべき速さ
モーターなしのトップモデルたるターボ スポーツツーリスモのエンジンは標準ボディーのターボと同じ、2基のターボチャージャーをVバンクの谷間に備えた4リッターV8ツインターボで、550ps(404kW)/5750-6000rpmと770Nm/1960-4500rpmを発生、トランスミッションは8段に増えたPDKである。
スポーツクロノパッケージ付きでは0-100km/h加速3.6秒という超ド級のパフォーマンスを誇り、全開加速を試みると4WDならではの路面を削るような瞬発力を見せつけ、目の前がちょっと暗くなるほどの強烈な加速Gを簡単に発揮する。
もちろん街中の渋滞の中での扱いやすさにもまったく問題なし。ごく滑らかにスルスルと動き、ノーマルモードでは前述したようにせっせと燃費向上に努めてくれる。踏めばトップエンドまで轟然(ごうぜん)と回り、最高速は300km/hを超えるスーパーワゴンとはとても信じられないほどの従順さを身に着けている。
日本の山道では持て余し気味
ただし、ツイスティーな日本の山道でそのどう猛な力を解放しようとすると、ちょっと手を焼くことになるだろう。山道を全力の半分程度のペースで走っている限りは(それでも十分に速い)、素晴らしく安定してスイスイ速く、また高速道路では巌のように安定しているのだが、ワインディングロードをフルスロットルで走ろうとするとなぜかギクシャクして、ぎこちない挙動になってしまうのだ。
コーナーの立ち上がりでスロットルを開けても、さまざまな制御システムが気を利かせているおかげで、わずかだが反応しない時間があり、直進に近づいてもう安心と車が判断したところでドカンとターボパワーがさく裂するのである。もちろん豪快だが、いささか洗練度に欠けるというか、無理やりに曲がっている感じだ。
過剰なほどのパワーをトルクベクタリングや4WSなど、満載された電子制御システムが知らぬうちに抑えて、それがぎこちなさを生み出しているのだろう。ならば完全にシステムオフにすればいいじゃないか、と言う人もいるだろうが、パナメーラ ターボ スポーツツーリスモは一般公道ですべてを解き放つのを躊躇(ちゅうちょ)するほど怪力なのである。
安楽で安心感絶大の高速移動のためだけにパナメーラを選ぶというのもちょっと腑(ふ)に落ちない気がするが、家族のための車もポルシェでそろえたいという人には意味のある選択だろう。ただし、GTとしての性能を求めるならば他にもチョイスはたくさんあるし、パナメーラにももっと穏当なモデルがそろっている。ポルシェの「ターボ」は特別だということをどうぞお忘れなく。
(文=高平高輝/写真=池之平昌信/編集=大久保史子)
テスト車のデータ
ポルシェ・パナメーラ ターボ スポーツツーリスモ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5049×1937×1432mm
ホイールベース:2950mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:550ps(404kW)/5750-6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/1960-4500rpm
タイヤ:(前)275/40ZR20 106Y XL/(後)315/35ZR20 110Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:9.4-9.5リッター/100km(約10.5-10.6km/リッター、欧州複合モード)
価格:2453万3000円/テスト車=3020万7000円
オプション装備:ボディーカラー<バーガンディレッドメタリック>(0円)/インテリアカラー<サドルブラウン/ルクソールベージュ>(13万円)/スポーツエグゾーストシステム<ブラッシュ仕上げステンレススチールスポーツテールパイプ>(56万円)/リアアクスルステアリング<パワーステアリングプラスを含む>(32万5000円)/スポーツクロノパッケージ(38万2000円)/ポルシェ クレスト ホイールセンターキャップ(3万円)/ポルシェセラミックコンポジットブレーキ(162万3000円)/PTVプラスを含むポルシェダイナミックシャシーコントロールシステムスポーツ(85万4000円)/8wayリアコンフォートシート(37万4000円)/シートベンチレーション<前席>(19万3000円)/エクステリアミラー<塗装済み>(8万2000円)/LEDマトリクスヘッドライト<PDLSプラスを含む>(19万3000円)/ナイトアシスト(42万4000円)/トラフィックジャムアシスト付きアダプティブクルーズコントロール(50万4000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:5357km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:296.3km
使用燃料:41.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.2km/リッター(満タン法)/7.2km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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