メルセデス・ベンツC200アバンギャルド(FR/9AT)
三日会わざれば刮目せよ 2018.11.23 試乗記 ライバルを突き放すべく、変更箇所が6500にも上るというマイナーチェンジを受けた「メルセデス・ベンツCクラス」。今回のテスト車は1.5リッターターボエンジンにマイルドハイブリッド機構を組み合わせた「C200アバンギャルド」。果たしてその出来栄えは!?見た目以上に中身が大変身
「W205」と呼ばれる現行モデルが登場して4年がたち、モデルライフ後半に向けてのフェイスリフトが実施されたCクラス。個人的には「もう4年?」と思うくらい、いまなお前期型が新鮮に見えるし、落ち着いた感じのフロントグリルも嫌いじゃない。
“新型”とはいってもあくまでマイナーチェンジだから、もちろん基本的なフォルムは変わっていないが、オプションの「AMGライン」が装着された試乗車は“ダイヤモンドグリル”のおかげで一気に若返った印象。時間がたつと、後期型のフロントマスクのほうがしっくりとくるから不思議である。
しかし、見た目の変更以上に関心を持っていたのが、中身の進化だ。中でも、このC200アバンギャルドのパワートレインには興味津々だった。すでにニュースや他の試乗記でも取り上げられているとおり、C200アバンギャルドには新開発の1.5リッター直列4気筒ターボの「M264」エンジンが搭載されているのだ。
M264は単体でも最高出力184ps、最大トルク280Nmを発生するなかなかの実力派なのだが、さらに「BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)」と48V電気システム、1kWhのリチウムイオンバッテリーによって、いわゆる“マイルドハイブリッドシステム”を構成したのが新しいところである。
素早いレスポンスが魅力
最近は、減速時にオルタネーター(発電機)によって回収した運動エネルギーを電気に変換してバッテリーを充電することで燃料消費を抑えるブレーキエネルギー回生機能が普及している。C200アバンギャルドでは、BSGと48V電気システムを組み合わせることで、ブレーキエネルギー回生量をより多く、さらに効率よく行う。そのために、オルタネーターとスターターの機能を兼ねた大型モーター(=スターター・ジェネレーター)を採用したというわけだ。
しかも、このスターター・ジェネレーターがエンジンをアシスト。フルハイブリッドシステムのように、モーターだけで走行することこそできないが、加速を力強くサポートしてくれるのも見どころのひとつである。
ということで、早速走らせると、その効果は期待どおり。ダイナミックセレクトでコンフォートやエコを選択した場合、C200アバンギャルドは2速で発進するのだが、走りだしから力強さが感じられ、1.5リッターという排気量を疑うほどだ。それもそのはず、スターター・ジェネレーターの最大トルクは160Nmととても強力で、特に低回転から少しアクセルペダルを踏み増すような状況では、瞬時にモーターがアシストするため、即座に加速に移るのは、まるで排気量の大きなエンジンを扱っているようだ。
エンジン回転計の下には電気の出入りする状況がリアルタイムで表示されるので、これを見ながら運転すると、マイルドハイブリッドシステムがとても頼もしく思えてくる。
“コースティング”は体験できず
BSGは、エンジンのアシスト以外にもさまざまなメリットがある。アイドリングストップからのエンジンの再始動もそのひとつ。輸入車の場合、日本車に比べて再始動時のタイムラグが大きかったり、ブルンというショックが目立ったりする傾向にあるが、C200アバンギャルドの場合は、ショックが軽く、タイムラグもわずか。アイドリングストップにストレスを感じずに済むのは大きな進化である。
また、C200アバンギャルドのマイルドハイブリッドシステムには、ダイナミックセレクトでエコを選ぶと、走行中のアクセルオフでエンジンが完全停止する“コースティング”が備わっている。この間、必要な電気は、リチウムイオンバッテリーに蓄積されたもので補われるので心配無用。ギアボックスからエンジンを切り離す従来のコースティング機能に比べると、エンジンを停止できるぶん燃料の消費が抑えられることになる。
ただ、リチウムイオンバッテリーの充電量が不足していたのが原因なのか、残念ながら今回の試乗ではこのコースティングが一度も体験できなかった。次に借りるときには、なんとしてでもコースティングを見てみたいものだ。
![]() |
![]() |
![]() |
ランフラットタイヤ非装着でマイルドな乗り味に
トルクにあふれ、扱いやすいパワートレインに加えて、C200アバンギャルドの乗り心地の良さもうれしい進化だ。前述のように、オプションのAMGラインが選択される試乗車には、標準の225/50R17サイズのタイヤに代えて、1インチアップの前225/45R18、後ろ245/40R18が装着される。同時にエアサスペンションの「AIR BODY CONTROLサスペンション」が搭載されるとあって、実にフラットで快適な乗り心地がもたらされるのだ。
ダイナミックセレクトでコンフォートを選んだ場合、高速では多少ピッチングが気になることもあったが、そんなときはスポーツを選択してやると、気持ちのいいドライブが楽しめる。さらに、フェイスリフトを機にランフラットタイヤの採用をやめた(一部グレードを除く)ことで、路面とのコンタクトがマイルドになったのも、乗り心地の良さに貢献している。
後期型では、各種運転支援システムを追加、または進化させたのも見逃せないポイントだ。例えば、車線や先行車を認識することでステアリング操作を助ける「アクティブステアリングアシスト」は自然なフィーリングに好感が持てるし、高速道路でウインカーを操作するだけで自動的に車線変更を行う「アクティブレーンチェンジングアシスト」もデビュー当時に比べて動きが素早くなった印象だ。30秒以内なら停止状態から自動で発進する「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」(アダプティブクルーズコントロール)の使い勝手もいい。
ただ、これらが含まれる「レーダーセーフティーパッケージ」がメルセデスAMGモデルを除いてオプションというのが寂しいが、そこ以外はさすがメルセデスと思える出来のC200アバンギャルドである。
(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC200アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1810×1425mm
ホイールベース:2840mm
車重:1600kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:184ps(135kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:280Nm(28.6kgm)/3000-4000rpm
モーター最高出力:14ps(10kW)
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)245/40R18 97Y XL(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:552万円/テスト車=683万6000円
オプション装備:スペシャルメタリックペイント<ダイヤモンドホワイト>(19万5000円)/レーダーセーフティーパッケージ(20万1000円)/AMGライン(37万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(55万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1089km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:393.0km
使用燃料:30.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.1km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。