ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ スパイダー(4WD/7AT)
回せ、回せと風が呼ぶ 2018.11.20 試乗記 空力特性を変化させ走行性能を高める空力デバイスや、軽量なフォージドカーボンを採用した「ウラカン」のハイパフォーマンスグレード「ペルフォルマンテ」。そのオープン版として追加された「スパイダー」はどんなパフォーマンスを見せるのか?回すことそのものが魅力
クルマはやはりエンジンだ。今どきすっかり貴重品になってしまった大排気量自然吸気エンジンが、背中のすぐ後ろで喉も裂けよとばかりに吼(ほ)えるごう音を聞きながらそう思った。普通のターボユニットなら打ち止めとなる6000rpmぐらいから、もう一段のロケットエンジンに点火するように、8500rpmのリミットめがけて突き抜けるように回るのがウラカンの真骨頂である。
DOHCも4バルブも話題に上ることがなくなった昨今、高回転まで回ることに何の意味があるのか、と不思議に思う若い世代も多いはずだ。無論ただ回ればいいというものではないが、自分の右足で空気と燃料の流れをコントロールし、回せば回した分だけダイレクトにパワーが湧き出る反応を知れば、「回ればエライ」という時代に育ったオジサン世代の気持ちも多少は理解してもらえるのではないだろうか。時代遅れと言われるかもしれないが、そこには確かにヒリヒリとした“実感”があるのだ。
ウラカン ペルフォルマンテ スパイダーは、「ウラカン ペルフォルマンテ」(クーペ)の電動オープントップ仕様である。墨流しというか、マーブルのような模様があらわになったフォージドカーボンファイバー素材を採用して一層の軽量化を図り、アクティブエアロダイナミクスを取り入れて高速安定性を引き上げたうえにパワーアップしたV10を搭載した、ウラカンの究極のハイパフォーマンスモデルがペルフォルマンテである。
クーペであるペルフォルマンテの登場は2017年のジュネーブモーターショー。オープン版となるスパイダーは、その1年後となる2018年の同モーターショーでデビューした最新最強のウラカンである。車両価格は3800万円余りだが、このクルマには約67万円のフロントリフター&磁性流体式可変ダンパーシステムなど多数のオプションが400万円以上も乗っかって何と4300万円近い。兄貴分の「アヴェンタドール」を脅かすほどの価格に達している。
普段は従順そのもの
当然ながら、成り立ちはスパイダーもペルフォルマンテのクーペと同様である。エンジンは最高出力640ps/8000rpm、最大トルク600Nm/6500rpmと、スタンダードに比べてさらにパワーアップ(従来比+30psと+40Nm)した5.2リッターV10だが、期待に反して(?)一般道でおとなしく走る分には静かで従順と言っていい。
始動する時だけはグワッと一度大きくほえるが、オートモードならばスルリと動き出して、せいぜい2500rpmぐらいで粛々とシフトアップしていくから、街中だけを試乗したらとても8500rpmまで猛然と回るエンジンには思えないかもしれない。
フラッグシップのアヴェンタドールが依然として変速時にわずかなタイムラグと明確なシフトショックを伴うのに対して、ペルフォルマンテの7段DCTは実に洗練されており、オートでもマニュアルでもシームレスで滑らか、かつ電光石火の変速が可能だ。
またGTレースにそのまま参加しそうな外観とは裏腹に、この種のスーパースポーツカーとしては視界がいいことも街中や狭い一般道で扱いやすい理由だ。バックアップカメラとフロントリフターも有効だが、一時停止からの合流の際など斜め後方視界だけは注意が必要だ。
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クーペと同等のパフォーマンス
ペルフォルマンテ スパイダーの乾燥重量はスタンダードのスパイダーからさらに35kgを削った1507kgと発表されており、これをもとにしたパワーウェイトレシオも2.35㎏/psを豪語しているが、これはあくまで昔のイタリア流。本来は走行可能な状態での車重をまず明らかにしなければならない。車検証上の車重は1690kgで、以前試乗したペルフォルマンテ クーペ(乾燥重量1382kg)の同じく1600kgから電動トップの分だけ重くなっていることが分かる。
それでもV10を積んだ4WDのオープンモデルとしては相当に軽く、おかげで0-100km/h加速は3.1秒(ペルフォルマンテ クーペは2.9秒)、最高速はクーペと同じく325km/hを主張する。
ペルフォルマンテの特徴であるアクティブエアロダイナミクスは、そのままスパイダーにも採用されている。前後の空力不可物が速度や状況に応じて変化し、最適な空力性能を生み出すというシステムに加え、エアチャンネルを内蔵したリアスポイラーの内部に流れるエアフロ―を左右独立して制御し、高速コーナリング時に“エアロベクタリング”を行うという。
左右のダウンフォースを別々にコントロールし、コーナリング性能を向上させようという試みは古くは「シャパラル」などが挑んだ手法だが、現代レースの世界では原則禁止されているし、実際の効果という点から見ると一般道で試すことができるスピードでは、正直確認することは難しい。
ただし、コーナーの途中にうねりがある場所を突破しても、跳ねたり接地感が失われたりすることがないのは確認できた。高速になればなるほどスタビリティーが増すようだが、これ以上はサーキットで試すしかないだろう。
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若干硬派だがスパルタンすぎない
その気になって踏まない限り、見た目と名前から想像するほどスパルタンな暴れ牛ではないことはクーペで体験済みだが、スパイダーの乗り心地は若干野性味が濃いように感じた。
ペルフォルマンテは、巨大なタイヤを履くにもかかわらず路面のアンジュレーションにナーバスに反応するそぶりを見せず、自信を持って飛ばせるスタビリティーが備わっているのだが、クーペよりは不整路面での突き上げが鋭く、明らかに硬派な乗り心地だった。
車重のせいかもしれないが、もうひとつこのスパイダーにはクーペと違っていかにも軽そうなバケットシートが装着されていたことが理由かもしれない。前後スライドしか調節できないバケットシートのクッションは薄く、大した距離を乗っていないのに途中で背中のあたりが痛くなってしまった。もちろん、本当のオーナーであればあらかじめ角度や高さをセットできるはずである。
その点を除けば高速道路を流すのは平穏そのものだ。ルーフを開けても、そもそも開口部が小さいうえにエアフロ―を考慮してあるので風の巻き込みは最小限である。これならサーキットを目いっぱい走って火照った身体を風で冷ましながら帰るのにちょうどいいのではないか。ペルフォルマンテ スパイダーは、かつては夢のようだったそんな使い方ができる、現代のランボルギーニなのである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカン ペルフォルマンテ スパイダー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4506×1924×1180mm
ホイールベース:2620mm
車重:1507kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:640ps(470kW)/8000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20(ピレリPゼロ コルサ)
燃費:14.0リッター/100km(約7.1km/リッター、欧州複合モード)
価格:3846万2615円/テスト車=4285万6811円
オプション装備:エクステリアカラー<ロッソマーズ>(24万5592円)/リムズナルヴィ20インチフォージドライトウェイトインブロンズ(75万0276円)/CCB withレッドペインテッドキャリパー(12万2688円)/リフティングシステム&マグネットレオロジカルサスペンション(66万9168円)/ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング<LDS>(23万2740円)/Bluetoothプレパレーション<ハンズフリープロファイル>(9万5580円)/クルーズコントロールシステム(9万5580円)/Sensonum<ランボルギーニプレミアムサウンドシステム>(38万1888円)/ランボルギーニスマートフォンインターフェイス<Apple CarPlay & Android Auto>(8万0352円)/ランボルギーニテレメトリー(20万4660円)/フロント&リアパーキングセンサー(20万5416円)/アンチセフトアラーム(7万5492円)/タイヤプレッシャーモニタリングシステム<TPMS>(11万5992円)/インテリアペルフォルマンテビコローレwithアルカンターラ(34万1064円)/ペルフォルマンテインテリアwithレザーエングラビング(34万1064円)/ダーククロームパッケージ(27万2808円)/カラードステッチングフォーユニコローレインテリア(6万8256円)/ブランディングパッケージ(9万5580円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2160km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:311.1km
使用燃料:50.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.1km/リッター(満タン法)

高平 高輝
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