マツダCX-5 25T Lパッケージ(4WD/6AT)
さりげなくデキる 2019.03.11 試乗記 「マツダCX-5」のラインナップに加わった、最もパワフルなガソリンターボ車「25T」に試乗。その走りは驚くほど軽快かつさわやかで、いまどき貴重な“内燃機関のよさ”を印象づけるものだった。ラインナップを続々強化
2012年に初代が投入されたマツダCX-5は、2016年に発表された第2世代でも好調な販売をキープし、いまや同社のグローバル販売台数の4分の1を占める。
マツダは近年、年次改良どころか、いいものができれば、その都度、商品に反映する方針を表明し、これを実行している。ここに紹介するCX-5 25T Lパッケージ(4WD)もまたしかり。2017年早々に国内販売が始まった2代目CX-5は、翌2018年2月にエンジンの実用トルクと燃費の向上が図られ、同時に「360°ビューモニター」がオプション設定された。と思ったら、同じ年の10月にはスカイアクティブ-G 2.5ガソリンエンジンにターボ版を追加、「G-ベクタリングコントロール(GVC)」にブレーキ制御を組み合わせた「G-ベクタリングコントロール プラス(GVCプラス)」なる新デバイスを全車標準で採用すると発表し、翌月から販売を開始している。
CX-5のラインナップを整理しておくと、スカイアクティブ-G(ガソリン)2.0と同2.5、D(ディーゼル)2.2があったところにGの2.5Tが加わった。駆動方式は、2.0はFFのみ、それ以外はFFと4WDの両方がある。ギアボックスは6段ATが基本だけれど、ディーゼルには6段MTも2018年秋に追加されたことはマツダのエンスージアズムの真骨頂だろう。いったい何台売れるのだろう。
2.5Tという表記はエンジンを、25Tと書くと“2.5Tを搭載したモデル”を表す。25Tが加わったことでガソリン陣営の厚みが増し、CX-5はディーゼルの旗艦とガソリンの旗艦、2トップをそろえたことになる。
テスト車は、25TのLパッケージという、2.5T搭載モデルの上から2番目のグレードで、この上に、ナッパレザーやオプションの10スピーカーのBoseサウンドシステム等を標準装備する特別仕様車「エクスクルーシブモード」が設けられている。とはいえ、この「特別仕様車」のベースはLパッケージで、装備はこちらで十分以上のものがある。実際、筆者は試乗車の特別塗装色「ソウルレッドクリスタルメタリック」(7万5600円)にオッと思い、ドアを開けて目に飛び込んできた雪景色のごとき、「レザー・ピュアホワイト」と呼ばれるシートカラーのインテリアにこれまたオッと思った。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
驚くほどさわやか
エンジン横置きFFベースのSUVだから、居住空間も荷室も、後輪駆動ベースの同クラス車に比して広い。ドアの形状や内側も乗降性や使い勝手、スペース効率というものを大いに意識してデザインされている。
注目の国内初登場、スカイアクティブ-G 2.5Tは、ボア89.0×ストローク100.0mm、排気量2488㏄の直列4気筒直噴エンジンにターボを装着して、最高出力230ps/4250rpm、最大トルク420Nm /2000rpm を得ている。自然吸気の2.5は188ps/6000rpmと250Nm/4000rpmで、回せば気持ちがいいユニットだけれど、ターボ版はグッと中低速トルクが分厚くなっている。ちなみにスカイアクティブ-D 2.2は190ps/4500rpmと450Nm/2000rpmで、つまり2.5Tはディーゼル並みのトルクを誇る。
というような数値を例によって予習することなく試乗した筆者は、ともかくその動きの軽くて、さわやかなことに軽く驚嘆した。軽く、というのは、最近のマツダ車は何に乗っても「ロードスター」を思わせる、という前提がすでに筆者の内側にあるということ、単に「驚嘆した」と書いたのでは読者諸兄の共感が得られまいという無意識の防衛本能が働いたこと、さらに直前に「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」の「クアドリフォリオ」、510psと600NmのモンスターSUVに乗っていた、ということが挙げられる。
ステルヴィオ クアドリフォリオの直後だというのに、ぽっかり穴が開いたようなクアドリフォリオロスが感じられない。それって、いまから考えるとすごいことでないか。河合奈保子のあとに堀ちえみに会った、という例えを思いついたけれど、それが何を意味するのか、筆者にもよくわかりませんが、ソフィア・ローレンのあとに河合奈保子に会った、あー、ともかくである、CX-5 25Tは軽やかに走りだしたのである。あまりにそれは自然なことのように思われたのだけれど、考えてみたら、こういう軽やかさを持つクロスオーバーSUVが国産車であっただろうか……。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
目玉の技術は黒子のごとく
2.5Tはエンジン自体の存在感は控えめで、ほとんど裏方に徹している。なめらかでトルキーなことはタダモノではないけれど、スポーツカーのような劇画調のエキサイトメントではなくて、スポーティーサルーン用のようなスムーズネスを身上としていて、ディーゼルと違って6000rpmまでストレスなくパワーを紡ぎだしながら回る。
車重1680kgで、FFベースだから車検証に見る前荷重は1000kg、後ろ荷重は680kgと明瞭にフロントヘビーのクルマだ。それが山道でも気持ちよくノーズを向け、気持ちよくコーナーを駆け抜ける。これが、新たに全車標準装備となったGVCプラスのおかげである、かどうか筆者に確信はない。GVCはターンイン時にドライバーのステアリング操作に応じて、エンジンの駆動トルクをドライバーにはわからない程度の範囲で絞り、前荷重にするという世界初の制御技術である。たとえわずかでも前荷重にするとフロントのタイヤのグリップ力が上がって曲がりやすくなる。
GVCプラスはこれに加えてターンアウト時、ステアリングを戻すと同時にフロント外輪に若干ブレーキをかけて車体をまっすぐにする手助けを自動的に行う。
ターンインの際、コーナーに対してフロントの内輪にブレーキをかけて曲がりやすくするシステムを持つクルマは珍しくない。でも、コーナーがどれだけ曲がっているのかを予測するのはむずかしい。対して脱出の際、車体を直進方向に戻すのにブレーキを使うのは、ドライバーがステアリングを戻したことで判断すればいいのだからより簡単で、より安全である、とマツダは考えた。
ということなのだけれど、前方の道が曲がっていたら、たいていのドライバーは減速するだろう。とすると、GVCの働く余地なんてどのくらいあるのだろう? と猜疑(さいぎ)心の強い筆者は思う。思うけれど、事実としてCX-5はよく曲がる。そして、コーナー脱出時にピピッとボディーが瞬時に動いている、と感じることがあって、おそらくこれがブレーキ制御によるものだろうと思うけれど、なんせ一瞬のことであって、あからさまに不自然な動きともいえない。つまり、GVCプラスは巧妙に働いている、と推測される。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
いまとなっては貴重な存在
CX-5 25Tの4WDは、全高1690mmという高さから生まれるであろう不安をいささかも感じさせることなく、主にターンパイクだけれど、スイスイと登ってスイスイと曲がってみせた。ロールは大きく、足は柔らかめの設定で、225/55R19という大きなサイズのタイヤを履いているけれど、いわゆるバネ下がドタドタ動くこともない。
2019年のこの時点でおいて、フツーによいのである。ハイブリッド、電動化へと流れるいまの時代にあって、内燃機関のよさで成り立っているCX-5 25Tの貴重さときたら、いったいいかばかりであるか。2代目の発表と同時に2.5Tが国内にも登場していたら、もっともっと注目を浴びていたに違いない。徳大寺有恒さんの表現を勝手に拝借すると、「さりげなくさりげあるものを」であると筆者は思う。
CX-5 25T Lパッケージ(4WD)の車両本体価格は355万3200円。ディーゼルの同仕様より、5000円ほどお求めやすい。これに特別塗装色(7万5600円)に、CD&DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(3万2400円)、Boseサウンドシステム(8万1000円)等のオプションが付いていて378万5400円。一番高いエクスクルーシブモードとLパッケージは30万円(+税)しか違わないから、Lパッケージにオプションを付けていくより、エクスクルーシブモードの方がお値打ちかもしれない。お気をつけください。
なお、FFと4WDの識別点は、「AWD」のバッジ以外にリアフォグランプ(運転席側)とヘッドランプウオッシャーの有無がある。前から見て、ヘッドランプの下にウォッシャー用の小さな出っ張りがあったら4WDである。トリビア問題で出る可能性があるかも……。
(文=今尾直樹/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
マツダCX-5 25T Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:230ps(169kW)/4250rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:12.2km/リッター(WLTCモード)、9.1km/リッター(市街地モード:WLTC-L)、12.4km/リッター(郊外モード:WLTC-M)、14.1km/リッター(高速道路モード:WLTC-H)
価格:355万3200円/テスト車=378万5400円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドクリスタルメタリック>(7万5600円)/CD&DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/Boseサウンドシステム<AUDIOPILOT2+Centerpoint2>+10スピーカー(8万1000円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:3206km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:295.3km
使用燃料:33.7リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:8.8km/リッター(満タン法)/8.4km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。

























































