フォルクスワーゲン・パサートヴァリアントTSIコンフォートライン(FF/7AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートヴァリアントTSIコンフォートライン(FF/7AT) 2011.06.26 試乗記 ……397万4500円総合評価……★★★★
1.4リッターターボエンジンを搭載して生まれ変わった「フォルクスワーゲン・パサート」。その走りと使い勝手をワゴンモデルで試した。
本気の実用ワゴン
丸みを帯びて豪華なフロントマスクから、直線的で実直な顔つきになった新型「パサート」。初代や2代目「ゴルフ」で「ドイツ車のよさ」をたたき込まれた世代には、うれしいフェイスリフト……否! フルモデルチェンジである。シャシーほか骨格類は基本的に先代のそれを継続使用。しかしコンセプトは一変。3.6リッターまでそろえた6代目と異なり、7代目は1.4リッター直4ターボから販売をスタートする。世界的に求められる省燃費への対応はもとより、ことにエネルギー消費抑制に躍起になっている中国政府と、しかしドンガラの大きなクルマを好むかの地のユーザーをにらんだ販売政策といえよう。
ニューパサートの、スペックから推測される動力性能は旧1.8リッターターボに及ばないが、低回転域から十分なトルクを供給する過給器付きエンジンと、ギアごとに駆動力を直接クラッチで伝える多段DSGのメリットを生かし、ドライバーに痛痒(つうよう)を感じさせない。4気筒パサート最大の敵は、ドライブフィールへの不安ではなく、「1.4リッターなのに350万円!」と驚く、日本の消費者の常識かもしれない。
拡大 |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
初代パサートが登場したのは、1973年。リアエンジン・リアドライブを採る「ビートル」からの脱却に四苦八苦していたフォルクスワーゲンが、NSU由来の「K70」に続き、アウディのコンポーネンツを活用して開発したフロントエンジン・フロントドライブの意欲作であった。ビートルからバトンを渡されたゴルフは、一般的なエンジン横置の前輪駆動だったが、上級車種たるパサートは2代目もエンジン縦置きを継続。ゴルフベースとなった3、4代目、そして6代目は、エンジンを横置きした。7代目にあたる新型は、機関面は旧型を踏襲しつつ、ボディスタイルを一新したモデル。セダンとワゴン(ヴァリアント)がある。
7代目にあたる新型は、2010年のパリサロンでデビューを果たし、翌2011年5月30日から、日本での販売が始まった。機関面は旧型を踏襲しつつ、ボディスタイルを一新したモデル。セダンとワゴン(ヴァリアント)があり、いずれも動力系は、「1.4リッター直4ターボ+7AT(DSG)」の一種類。
(グレード概要)
セダン、ワゴンともに、ベーシックな「コンフォートライン」と、革内装、リアビューカメラ、上級オーディオ、大径ホイールなど、装備をおごった「ハイライン」の2グレードが設定される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
大フォルクスワーゲンのフラッグシップにふさわしく、やや豪華路線に振った先代モデルの余韻が残る室内。2段式になったダッシュボード、フラットなセンターコンソールなど造形は旧型のままだが、ハザードボタンがディスプレイの下に移され、かわりに四角い時計が設けられた。各種操作ボタンが埋め込まれたハンドルもバージョンアップ!? 試乗車のコンフォートラインは質素なアルミパネル。いかにも実務的で、いかにもパサートらしい。上級版ハイラインは横長のウッド調パネルが用いられ、印象が変わる。
(前席)……★★★
これまた「パサートらしい」ともいえるアッサリしたファブリックシート。ざっくりした触感。硬めの座り心地。小柄な人には、ちょっとばかり平板に過ぎるか。背もたれの角度や腰まわりの膨らみ度合いは電動で調整できるが、前後は手動。助手席側は“全”手動。助手席の側面に備わるダイヤル式のリクライニングが、ちょっと懐かしい。個人的には質実剛健で好ましいが、「約350万円のクルマでこの装備か……」と驚く人がいることも理解できる。
(後席)……★★★★
室内空間の広さは、伝統的なパサートの美点。サイズが大きくなった6代目の寸法をほぼそのまま引き継いだ新型のリアシートも、居住性に不満はない。大きくしっかりしたヘッドレストも安心感が高い。センターのアームレストを出して隔壁を倒し、荷室と貫通することも可能だ。スキーなどの長いモノを積むときに便利。
(荷室)……★★★★
ガランと大きなラゲッジルーム。左右に小さな小物入れが備わる。後席の背もたれは、6:4の分割可倒式で、積み込む荷物の容量に合わせて調整可能だ。トランク側からレバーを引けば、そのまま倒せる。また、リアシートの座面を前に落としてから背もたれを倒すダブルフォールディング式を採るので、さらなる容量拡大もできる。が、シートはガッチリしたジャーマンな(!?)つくりで、重いので、アレンジはなかなか大変。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
直噴ターボと7段DSGを組み合わせた7代目パサートは、同じエンジン&トランスミッションを積むゴルフより、車重が200kg近く重いにもかかわらず、ゴルフの16.4km/リッターに対し18.4km/リッターとカタログ燃費が上まわる。その種明かしは、アイドリングストップ機能を搭載した「ブルーモーションテクノロジー」。止まるたびに、律儀にエンジンを切ってくれる。そのほか、ブレーキを踏むとオルタネーターを介してバッテリーをチャージする機能も併せ持つ。パサートの燃費がゴルフのそれを上まわるのは、おそらく「ブルーモーションテクノロジー」がゴルフに導入されるまでの逆転現象であろう。走行距離まだ2600kmのテスト車では、アイドリングのストップ&再始動は、スムーズで確実。赤信号で止まるたびに得した気分になるから不思議だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
高いクオリティを実感させながら、「運転している感」を失わないのがフォルクスワーゲン車のいいところ。最新のフラッグシップも例外ではなく、4気筒らしいビートを軽く響かせながら加速するのが、楽しく頼もしい。乗り心地は、やはりフォルクスワーゲン車に共通するもの。足はやや硬めで、市街地では「もてなしが足りない」と思うが、高速道路ではスムーズで快適。広い室内、大きな荷室を生かし、西へ東へ、実用ワゴンとして本気で使うヒト向け。それでこそ、燃費のよさも生きてくる。
(写真=菊池貴之)
【テストデータ】
報告者:青木禎之
テスト日:2011年6月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2011年型
テスト車の走行距離:2100km
オプション装備:AVナビ「RNS510」=35万7000円/バイキセノンヘッドランプ=15万7500円
タイヤ:(前)215/55R16(後)同じ
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:297.2km
使用燃料:22.86リッター
参考燃費:13.0km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。





























