フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン(FF/7AT)
ポジティブな真ん中 2019.04.23 試乗記 新型「フォルクスワーゲン・ポロ」のモデルラインナップに、1.5リッター直4直噴ターボエンジンを搭載した「TSI Rライン」が加わった。気筒休止機構やコースティング機構など最新のテクノロジーを手にデビューした、中間グレードの出来栄えやいかに!?最新ハイテクのEvoエンジン
6代目フォルクスワーゲン・ポロに乗るのはこれで3度目。最初に「TSIハイライン」、次に「GTI」という順番だ。ベーシックモデル、高性能スポーティーモデルと来て、今回は真ん中のグレード。すしやうなぎで言えば松竹梅の竹にあたる。日本人が好んでオーダーする2番目の位置だから、ポロでも一番の売れ筋になるのは間違いない。儒教の中庸、仏教の中道という価値観は、われわれの心に染み付いているのだ。
298万円という価格もだいたい真ん中で、エンジンは1リッター3気筒と2リッター4気筒に挟まれた1.5リッター4気筒。最高出力は150psで、これまた95psと200psの中間、1リッターあたり17.8kmという燃費も19.1kmと16.1kmの間に位置するという見事な並びだ。迷ったら、TSI Rラインを選んでおけば誰でもそこそこの満足を得られると考えればいいのだろう。
そういう言い方をするとただの無難な選択のように思われてしまいそうだが、Rラインには積極的に選びたくなる理由がある。エンジン名に“Evo”という称号が付けられているのはこのモデルだけなのだ。気筒休止機構のアクティブシリンダーマネジメント(ACT)とコモンレール直噴技術を採用した最新ハイテクエンジンである。
内外装にもRラインだけの装備が用意されている。前後のスポイラーやツインエキゾーストフィニッシャーに特別感があり、「R-Line」のバッジも付けられているからわかりやすい。試乗車のボディーカラーは有償オプションの「エナジェティックオレンジメタリック」で、ダッシュパッドとセンターコンソールも同色となる。ほかにも「Discover Proパッケージ」「テクノロジーパッケージ」「セーフティーパッケージ」がトッピングされていて、お値段はポロらしからぬものになってしまった。
上質感でアドバンテージ
最初に見た時は先代よりもはるかに立派で大人っぽくなったキャラクターに戸惑ったが、1年たってすっかり慣れた。エッジの効いたプレスラインはモダンでシャープな印象を与え、過剰な装飾を廃したスッキリとしたフォルムが都会的で落ち着いた空気をまとわせる。気さくでおおらかなイメージが失われた代わりに、スポーティーさと洗練を手に入れた。実用性を重視したまじめ路線は、以前から変わらない。
TSIハイラインは、発進で少しもたつく感じがあった。1.0 TSIエンジンは山道でフル加速するには明らかに力不足で、1速と2速がすぐに吹けきってしまう。街なかや高速巡航では不満がないものの、スポーティーに走るには物足りなかったような気がする。よく抑えられてはいたものの、3気筒エンジンの微振動が気になる場面もあった。
Rラインには、そういったストレスが一切ない。1.5 TSI Evoエンジンは低回転域でも十分なトルクがあり、発進には余裕がある。ローギアード化して無理に速さを演出する必要がないので、自然な加速が得られるのだ。4気筒だから振動対策にも有利だし、アイドリングストップからのエンジン始動で大きな揺れがないのもありがたい。上質感という点では、1リッター3気筒エンジンに比べて明らかなアドバンテージを持つ。
もちろん、力強さでは2.0 TSIエンジンのGTIにかなわない。GTIはスポーツモードを選ぶとアイドリングから勇ましげな重低音を発し、ひとたびアクセルを踏み込めば爆音を響かせながらロケットスタートを決める。ワインディングロードでは減速時に派手な中ブカシを入れてシフトダウンしてくれるから、パドルを使わずともスポーティーな走りを楽しめた。ただし、エコモードを選ぶとエンジンもトランスミッションも格段におとなしい設定になり、まったく違う性格のクルマになる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
快活な走りとエコ性能を両立
Rラインにも「ドライビングプロファイル機能」が搭載されている。シフトセレクターの脇にあるスイッチで、エコ、ノーマル、スポーツ、そして好みに合わせて設定できるカスタムの4つから選択。ダンピング特性を2段階に切り替えることができ、エンジン特性、トランスミッション、ステアリングの制御プログラムも変更される。
スポーツモードを選んでも、変化はあくまで良識の範囲内だ。GTIのように大音響と強烈な加速がもたらされるわけではない。キビキビと快活に走るのは確かで、クイックなステアリングレスポンスとあいまってコーナリングが楽しい。電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」が装備されており、本気モードで走れば内輪に適度なブレーキをかけて回頭性を向上させる。
軽快な走りを実現した上で、エコ性能を高めているのが1.5 TSI Evoエンジンの真骨頂である。エコモードでは、気筒休止システムが作動するとともにコースティング走行が可能になる。スポーツモードが極端なパワフル仕様になっていないこともあってか、エコモードでもガマンを強いられるような気分にはならない。日常使いには十分な動力性能がある。
エコモードでは、メーターの表示も変化する。7段DSGがどのポジションに入っているかは通常「D1」「D2」といった表し方なのだが、「E1」「E2」に変わる。ドライバーはエコモードを選んでいることを常に意識するのだ。加えて、エンジンとトランスミッションの状態もメーター内に示されるようになる。
コースティングはゲーム感覚
気筒休止システムが作動していることは簡単には実感できないが、メーターにはっきりと文字で表示される。ある程度のスピードで巡航状態に入ると、自動的に2気筒が休止し、燃料消費とポンピングロスを軽減する仕組みだ。低速走行でも同様に作動する。気筒数が半減するのに気づかないのは情けないが、それだけうまく制御されているということなのだろう。フォルクスワーゲン初の気筒休止システムを使う1.4リッターエンジンを搭載した先代ポロの「ブルーGT」に乗った時もわからなかったから、熟成された技術なのだ。
コースティングに入るのは、アクセルをオフにした時だ。駆動力はかからず、エンジンはアイドリング状態になる。うまくコースティングを使えるようになれば、燃費向上につながるはずである。気筒休止とコースティングをボタンなどで選ぶことはできないので、使いこなすには経験が必要だ。作動する条件を体で覚えてしまえば、自在にエコ運転をすることができる。スキルを磨くのはゲーム感覚もあって楽しい作業だ。
TSIハイラインは先代の1.2リッターから1リッターにダウンしていて、GTIは逆に1.8リッターから2リッターにアップ。排気量がちょうど2倍、最高出力は2倍以上になってしまったのだから、間を埋めるモデルが必要だったのは当然である。最初に述べたように、真ん中に位置するRラインはやはりベストバランスのモデルだった。なんとも予定調和のつまらない結論だが、仕方がない。
先代ポロのキャラクターなら、アンダーパワーのエンジンをぶん回して振動など気にしないで乗るのもアリだったと思う。しかし、MQBの骨格を手に入れた6代目ポロは、洗練を身につけた大人だ。エコと走りを両立させて節度のあるマナーをまとうべきなのだろう。真ん中のRラインは万人にオススメできる。平凡とか普通ということではなく、中庸の徳を備え中道の境地に達しているというポジティブな意味なのである。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4075×1750×1450mm
ホイールベース:2550mm
車重:1210kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/45R17 91W/(後)215/45R17 91W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:17.8 km/リッター(JC08モード)
価格:298万円/テスト車=344万4400円
オプション装備:ボディーカラー<エナジェティックオレンジメタリック>(3万2400円)/Discover Proパッケージ(22万6800円)/テクノロジーパッケージ(7万0200円)/セーフティーパッケージ(9万7200円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(3万7800円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2385km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:268.2km
使用燃料:19.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.0km/リッター(満タン法)/13.8km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】 2026.3.5 スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
NEW
その魅力はパリサロンを超えた? 大矢アキオの「レトロモビル2026」
2026.3.7画像・写真フランスで催されるヒストリックカーの祭典「レトロモビル」を大矢アキオが写真でリポート! 欧州の自動車史を飾る歴代の名車や、めったに見られない往年のコンセプトモデル、併催されたスーパーカーショーのきらびやかなラグジュアリーカーを一挙紹介する。 -
NEW
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】
2026.3.7試乗記ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。 -
実力検証! SUV向けプレミアムタイヤ「ブリヂストンALENZA LX200」を試す
2026.3.62026 Spring webCGタイヤセレクション<AD>目指したのは、人気車種となっているSUVとのベストマッチ。ブリヂストンが開発した新プレミアムタイヤ「ALENZA(アレンザ)LX200」は、どんな乗り味をもたらすのか? モータージャーナリスト石井昌道が試乗を通して確かめた。 -
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。
















































