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第32回:三菱デリカD:5(後編)

2019.05.08 カーデザイナー明照寺彰の直言
三菱デリカD:5
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「どうしても“ちぐはぐさ”が気になる」という明照寺彰と、「これぞ新しい“オラオラ系”だ!」と語る永福ランプの意見が衝突! 衝撃的なマイナーチェンジを受けた「三菱デリカD:5」のデザインが、連載史上最大の論争を巻き起こす。

マイナーチェンジ後の「デリカD:5」のフロントマスク。灯火類もグリルもバンパーも、直線基調のカクカクとしたデザインをしている。(写真=荒川正幸)
マイナーチェンジ後の「デリカD:5」のフロントマスク。灯火類もグリルもバンパーも、直線基調のカクカクとしたデザインをしている。(写真=荒川正幸)拡大
前後フェンダーパネルやドアパネルの面質、Aピラーとルーフラインをつなぐ一筆書きの曲線、ガラスエリア後端の角の処理、わずかに傾斜したリアエンドなどに注目。「デリカD:5」のサイドビューは、要所要所で丸みを帯びた柔らかいデザインとなっているのだ。(写真=荒川正幸)
前後フェンダーパネルやドアパネルの面質、Aピラーとルーフラインをつなぐ一筆書きの曲線、ガラスエリア後端の角の処理、わずかに傾斜したリアエンドなどに注目。「デリカD:5」のサイドビューは、要所要所で丸みを帯びた柔らかいデザインとなっているのだ。(写真=荒川正幸)拡大
2007年に登場した「デリカD:5」は、初代「アウトランダー」(2005年)や「ギャランフォルティス」(2007年)、2代目「eK」シリーズ(2006年)、「トッポ」(2008年)などと“同世代”にあたる。
2007年に登場した「デリカD:5」は、初代「アウトランダー」(2005年)や「ギャランフォルティス」(2007年)、2代目「eK」シリーズ(2006年)、「トッポ」(2008年)などと“同世代”にあたる。拡大

フロントマスクとボディーにみる違和感

明照寺彰(以下、明照寺):デリカD:5の新しい顔は、面質も線質もちょっと硬いんですよ。他のところと比べて。要は、定規で描いたような線質じゃないですか。

永福ランプ(以下、永福):顔はまさに定規で描いたような直線がほとんどですね。

明照寺:それに対して他の部分……つまり、ほぼ従来モデルのままのボディーなどは、断面なども含めて、もう少し柔らかくて丸みがあります。“カーライク”なんです。

ほった:“カーライク”というのは、乗用車的という意味ですね。

明照寺:こういうバランスの問題は、マイナーチェンジで顔まわりを変えるとき、常に頭痛の種になるんです。デリカの場合、デザイナーとして言わせてもらえば、顔と他の部分とで「ちぐはぐだな」と感じるわけです。

永福:うーん。

ほった:確かにそうですね。まぁ、冷静に考えたらデリカD:5が登場したのって2007年ですもんね。2007年デビューっていったら、初代「アウトランダー」や「ギャランフォルティス」「トッポ」、独自開発時代の「eK」シリーズなんかと同世代なわけですから。デザイン的にも今とは世代が違うわけで、そこに最新の「ダイナミックシールド」をはめ込むんだから、そりゃあムリが出ますよねぇ……。

三菱 デリカD:5 の中古車

オーナーになったらどんどん好きになる!?

明照寺:それと、細かいことですが、グリルのパターンなどがちょっと緻密すぎる気がします。

ほった:線がいっぱいありますね。

明照寺:先ほど“電気シェーバー”という話がありましたが(笑)、顔のデカさの割には緻密すぎて、神経質に見えるんです。SUVらしさを考慮したとすると、もう少しおおらかなパターンのほうが合っていたんじゃないでしょうか。さらに言えば、グリルの横側の断面も、もう少しごつくして、パターンをもう少し大きくすると、それだけでSUVらしさが強調されるはずです。とにかく、ディテールがすごく細かく見えるのが気になります。その辺もちぐはぐかなぁ。

永福:ちぐはぐといえばちぐはぐですね。それは否定できない。でも、私としては程度の問題で、「明らかにちぐはぐだ」とは感じないんです。ちょっと統一感が弱いかな、くらいで。実際、今朝も新型が止まってるのを見ましたけど、そんなにバランス的な違和感はなかったし、そんなにひどい顔だとも思わなかった。確かに、アレといえばちょっとアレですけど(笑)。でも、実際にオーナーになったらすぐに慣れて、むしろどんどん好きになるんじゃないでしょうか。

明照寺:僕は、永福さんがデリカD:5を肯定的に見ているのが意外でした(笑)。

永福:このデザインを肯定するとネット上では「本気ですか?」っていう反応が大半です。本当にクルマ好きからは総スカン食らってますね。

新しい「デリカD:5」のフロントグリル。シルバーの“横桟”の内側に、六角形の穴を開けたデザインが特徴。
新しい「デリカD:5」のフロントグリル。シルバーの“横桟”の内側に、六角形の穴を開けたデザインが特徴。拡大
フロントマスクの特徴となっているランプ類。実は“目”のように見える上の部分はポジションランプで、その下の縦長のランプが、いわゆるヘッドランプの役割を担っている。
フロントマスクの特徴となっているランプ類。実は“目”のように見える上の部分はポジションランプで、その下の縦長のランプが、いわゆるヘッドランプの役割を担っている。拡大
こちらはエアロパーツ装着車の「アーバンギア」。フロントまわりでは専用デザインのバンパーだけでなく、グリルのデザインも標準車と異なる。
こちらはエアロパーツ装着車の「アーバンギア」。フロントまわりでは専用デザインのバンパーだけでなく、グリルのデザインも標準車と異なる。拡大

なんだかんだで「アルファード」はすごい

ほった:ネット上の住人やクルマ好きはともかく、実際に買ってくれそうな層を考えたら、自分はこの変更は理解できる気がします。デリカD:5って、三菱車の中ではもうすっかり高級車じゃないですか。「SUV的な、ギアっぽいデザインでは高いお金を払ってもらえない」という判断もあって“アルファード系”に舵を切ったんじゃないでしょうか。

明照寺:そうだと思います。とにかく高級感を狙ったんでしょう。

永福:明照寺さんは、「トヨタ・アルファード」のデザインはどう評価されてるんですか?

明照寺:デザイナー的には、コンセプトに対して非常に“やり切ってる”と思いますね。箱型のクルマですけど、高級車の様な“動感”が感じられるところがいいです。また細部もすごく立体をつくり込んでますよね。ボディーサイドとか、フロントグリルとか。自分が欲しいかどうかは別ですけど(笑)。

永福:オラオラな顔のディテールにばっかり目がいっちゃいますけど、サイドなんか非常にキレイにうねってますよね。

明照寺:なにしろパッケージが箱なんで、どうしたって箱にしかならないんですけど、だからといって普通の箱をつくっても価格に見合う質感が出ないわけです。そんな中で、これだけの質感を出したっていう点で、個人的には「すごいな!」と感じました。“トヨタデザイン”のすごさって、確実にあるじゃないですか。アルファードはデザイナー的にやり切っている。でもデリカはそう感じないんです。

永福:三菱なりにやり切ったという感じはするんですけど(笑)。

明照寺:「マイナーチェンジとしてはがんばった」とは言えるかもしれませんが。

マイナーチェンジの前(左)と後(右)の、「デリカD:5」。“顔”のサイズアップや光り物の使用面積の拡大、より緻密なデザインの採用などにより、マイナーチェンジ後のモデルでは、高級感が追求されている。
マイナーチェンジの前(左)と後(右)の、「デリカD:5」。“顔”のサイズアップや光り物の使用面積の拡大、より緻密なデザインの採用などにより、マイナーチェンジ後のモデルでは、高級感が追求されている。拡大
トヨタの高級ミニバンである「アルファード」(右)と「ヴェルファイア」(左)。2018年の年間販売台数は、両モデル合わせて10万1936台(!)である。
トヨタの高級ミニバンである「アルファード」(右)と「ヴェルファイア」(左)。2018年の年間販売台数は、両モデル合わせて10万1936台(!)である。拡大
ボディーサイドに施された凹凸に注目。箱型のクルマに抑揚を与えるため、「アルファード/ヴェルファイア」のボディーにはさまざまな技巧が凝らされている。
ボディーサイドに施された凹凸に注目。箱型のクルマに抑揚を与えるため、「アルファード/ヴェルファイア」のボディーにはさまざまな技巧が凝らされている。拡大
三菱デリカD:5
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実は三菱の登録車でイチバン売れていた

永福:マイナーチェンジっていう制約の中で、アルファードとは違うカッコで売れるように頑張ったと思うんですよ。「あ、こんなの見たことないぞ、なんじゃこりゃ」っていう驚きがあるじゃないですか。ものすごい非難の声が集まりつつ売れているというのは、パターン的にはアルファードと同じですよね。

ほった:「昔ながらのデリカが欲しいな」って思っている層には、もう従来型が行き渡っていた感もありますしねぇ。

永福:マイチェン前の末期はどれぐらい売れてたんだろ?

ほった:えーと。2018年は月平均で1000台ちょっとですね。他社のミニバンと比べたら少ないですが、もう“10年選手”だったことを思うと、健闘していたと思います。

永福:厳密には12年でしょ。すごく長かったもんね。売れなくなって当たり前だけど、その割に月1000台は大したもんだね。

ほった:実は三菱の登録車の中では一番売れてたわけですから。

永福:それはすごいね! 他の三菱車がいかに不振かってことでもあるけど……。で、マイチェン後の初期受注は、2月末時点で5000台を超えてたっていうから、持ち前のしぶとい生命力に、爆発力が加わった感じかな?

本格的な悪路走破性能を備えたミニバンという、独自の地位を得ていた「デリカD:5」。改良前のモデルも、月平均で1000台ほどの販売台数を保っていた。軽自動車を除くと、実は三菱で最も売れていたクルマだったのだ。
本格的な悪路走破性能を備えたミニバンという、独自の地位を得ていた「デリカD:5」。改良前のモデルも、月平均で1000台ほどの販売台数を保っていた。軽自動車を除くと、実は三菱で最も売れていたクルマだったのだ。拡大
「デリカD:5」のマイナーチェンジモデルの発売は2019年2月15日。翌3月の販売台数は、前年同月比281.9%(!)の、5288台を記録した。
「デリカD:5」のマイナーチェンジモデルの発売は2019年2月15日。翌3月の販売台数は、前年同月比281.9%(!)の、5288台を記録した。拡大
デリカD:5アーバンギア
デリカD:5アーバンギア拡大

ダイナミックシールドに拍手を

明照寺:インテリアも、特にインパネあたりが変わりましたよね。

永福:すごく変わったんです。

明照寺:だいぶ現代的な印象に。

永福:大型のタッチパネルがちょっとだけテスラっぽくて、10年選手とは思えなかったですよ。シートやトリムの質感も高いし。私はミニバンの中では、総合的に見て一番好きですね。ミニバン買いませんけど。

明照寺:それはそうなんですけど、個人的にはもっと三菱らしく、もっとオフロードが似合うものにしてほしかった。三菱はそういうメーカーですから。

ほった:ただ、このデザインにGOを出したのは大英断じゃないでしょうか。メーカーからすれば、買わないマニアより買ってくれるユーザーを大事にしなきゃいけないわけですし。

永福:むしろ、これぐらいやんなきゃダメな時代だと思うんだ。

明照寺:うーん。迫力を出すのは全然OKなんですけど、もうちょっとやり方があったんじゃないかな……。例えば軽自動車の「eKクロス」は、新型車として開発されているだけにはるかにまとまっています。あれだったらいいんですよ。兄弟車の「日産デイズ」を完全に食ってますから。

永福:そう! eKクロスは顔だけじゃなく、トータルコーディネートされたブサイクなんですよ!(笑)

明照寺:ダイナミックシールド自体はとても個性的ですよね。他にはないパターンです。三菱はこれを見つけたのがすごい。今日日、顔のパターンなんて何やったってだいたい他とカブりますから。自分たちも非常に苦労しているところなんで、独自のものを見つけたというところには本当に敬意を表したいです。

(文=永福ランプ<清水草一>)

エクステリアと同じく、イメージが刷新されたインテリア。インストゥルメントパネルまわりやシートのデザイン変更が大きい。
エクステリアと同じく、イメージが刷新されたインテリア。インストゥルメントパネルまわりやシートのデザイン変更が大きい。拡大
大幅に向上した各部の質感も、新しい「デリカD:5」の特徴。写真は新たに採用されたサバ杢の木目調パネル(上)と、「アーバンギア」に採用されるバール杢の木目調パネル(下)。
大幅に向上した各部の質感も、新しい「デリカD:5」の特徴。写真は新たに採用されたサバ杢の木目調パネル(上)と、「アーバンギア」に採用されるバール杢の木目調パネル(下)。拡大
三菱最新の軽ハイトワゴン「eKクロス」。コワモテのフロントマスクが特徴で、兄弟車の「eKワゴン」はもちろん「日産デイズ/デイズ ハイウェイスター」をもかすませる存在感を発揮している。
三菱最新の軽ハイトワゴン「eKクロス」。コワモテのフロントマスクが特徴で、兄弟車の「eKワゴン」はもちろん「日産デイズ/デイズ ハイウェイスター」をもかすませる存在感を発揮している。拡大
 
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明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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