第48回:進化し続けるワイパー
間断のない革新と改善の歴史
2019.05.02
自動車ヒストリー
悪天候の下でのドライブにおいて、必須の装備といえるワイパー。ウィンドウから雨や雪を除去するこの装備は、どのようにして誕生し、今日に至っているのか? 間断のない進化の歴史を、数々のエピソードとともに振り返る。
間欠ワイパーをめぐる特許訴訟
2008年に公開された映画『幸せのきずな』は、市井の発明家が巨大な自動車メーカーと裁判で戦う話だった。主人公は間欠ワイパーを発明したロバート・カーンズ。実話に基づいた作品である。
雨の日に「フォード・ギャラクシー」を運転していた彼は、ワイパーの動きに不満を覚えた。霧雨の中でも動かさなければ雨粒で前が見えなくなってしまうが、常時動いていると滑りが悪くなってブレードがきしむのだ。大学で工学教授をしていたカーンズは、ワイパーの動きを一時的に止める装置の研究を始める。抵抗やコンデンサーを組み合わせてスイッチのオン/オフを制御するシステムを考案し、1964年に特許を出願した。
当時は、自動車メーカーもワイパーの改良が必要なことを認識して間欠ワイパーを開発していたが、成功に至ってはいなかった。カーンズの発明に興味を示したのはフォードである。彼は事業化に向けて準備を進めたが、安全性の確認に必要だと言われて試作品を渡すと、しばらくしてフォードから交渉の打ち切りを告げられた。
1969年になると、フォードは「マスタング」に間欠ワイパーを装着し、新たな快適装備としてアピールした。カーンズは抗議したが受け入れられず、精神に変調をきたして妻と離婚することにもなる。1978年にフォードに対して訴訟を起こしたが、相手の繰り出す巧みな法廷戦術により、審議はなかなか始まらなかった。1990年になってようやく裁判が行われると、陪審員はフォードがカーンズの特許を侵害していると判断。フォードは1億ドル以上の和解金を支払うことになった。
ワイパーという技術は、誕生した時から特許をめぐる物語に彩られていた。その歴史は、20世紀になってすぐ、アメリカのアラバマ州バーミンガムで牧場と不動産業を営んでいた女性が、ニューヨークを訪れたことで幕を開ける。
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