第31回:タイヤ探し地獄篇
2019.08.18 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
テンションプーリーの破損による立ち往生を乗り越え、再びフツーに走るようになったwebCGほったの「ダッジ・バイパー」。エアコンも直り、いよいよ本調子かと思われた矢先に浮上した次なる出費のタネとは? 東京・武蔵野在住の貧乏編集部員を、自業自得の苦悩が襲う。
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健康になっても惰眠をむさぼるわがバイパー
いつの間にやら元号が変わり、令和最初の(この言い回し、便利すぎる)お盆も過ぎた今日この頃、読者諸兄姉の皆さまはいかがお過ごしだろうか。当方は梅雨→夏にかけての天気のひょう変、気温の乱高下にすっかりグロッキー。熱帯化が進む日本列島は、ワタクシの勤労意欲をそぐのに余念がない。
それだけなら毎年のことだが、今年はそれだけじゃ済まなかった。7月には肺炎にかかって地獄を見、8月には炎天下のもとバイクロケを敢行し、灼熱(しゃくねつ)の東名高速で天に召されかけた。いやぁ、やるねぇBMWのスーパーバイクも。記者を熱中症にさせるのは、ウチのバイパーだけだと思っていたよ。
さてさて、今春ついに公衆の面前で立ち往生するという失態をさらしたわがバイパーだが、その後どうなったかというと、ナニゴトもなかったかのように平常運航に戻った。謎のインジケーターが光るようなこともなく(センサー類が壊れている可能性については目をつむる)、オルタネーターの発電量は安定し、エンジンオイルが乳化している様子もない。それどころか、夏場における頭痛の……というか熱中症の種だった、冷房の不調もついに解消。今、きやつは過去最高に絶好調と評していい状態にある。
さるバイパー乗りの御仁が厚意で磨いてくれたこともあり、ボディーのくすみもすっかりピカピカ。クルマから降りて眺めてるだけでもキモチイイ。ならばさぞ頻繁にドライブに出掛け、オドの数字が伸びてしょうがないことだろうと思われるやもしれぬが、実際にはそんなことはなかった。せっかく完調に近い状態にまで復帰したバイパーだが、ここしばらくは、駐車場でブレーキローターをサビるに任せる日々を送っていた。
リアタイヤがツルツルのすってんてんに
なぜ外出を避けていたかというと、理由は簡単で、日本列島が雨の季節に入ったからだ。以前も触れた通り、わが相方は雨にさらすとすぐ車内に水を溜(た)めたがるのだ。そしてもうひとつ、実はきやつ、リアタイヤがすってんてんだったのである。
いやホント、雨の日に溝なしタイヤのバイパーに乗るとスゴいゾ。交差点でとっちらかる? 想定の範囲内である。正解は、前に進まねんだよ。普段通りにアクセル踏むと。
そんなわけで、装着から2年にしてツルツルになり果てた「トーヨー・プロクセスR888R」。こう書くと、読者諸兄姉の中には「ほいじゃR888Rの寿命はアバウト2年なのか」とソロバンをはじく方もおられるやもしれぬが、さすがにそんなことはない。その証拠にフロントタイヤはまだまだ健勝、ミゾもご健在だ。
だったら何故にリアタイヤばかり摩耗したのか。まぁ「バイパーがそういうクルマだから」ということもあるのだろうが、ほかにも理由がある。というか心当たりがある。過日のAUTO-Xで、調子に乗ってドリフトの練習とかしてしまったのだ。ちなみに、散々クルマをぶん回したあげくに一度としてテールスライドを御すことはできず、三半規管がナイーブな記者はキモチが悪くなり、あげくの果てにパワステポンプがぴゅーぴゅーオイルを噴き、記者はドリフトに挫折した。もう知らん。二度とやらん。その後もジムカーナで散々リアタイヤを酷使し、幅345のR888Rは哀れ自家製スリック(に近い姿)となり果てたのだ。
■webCGほったの貧相な走りとタイヤの恨み節
動画提供:よっし~さま
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タイヤ探しの苦悩再び
しかし困った。これは困った。選択肢は2つある。ひとつはフツーに4本全部交換する方法。もうひとつは変化球で、リアの2本だけを交換する方法だ。で、まぁそれぞれに問題というか悩ましい部分がある。前者はまだミゾのあるフロントの2本がもったいないし、それに何より金がかかる。冗談じゃなく、295/30R19&345/30R19サイズのタイヤって高いのだ。
一方後者の場合、前のタイヤがR888Rというのが問題だ。そもそもからして“あくまで自己責任”な前後異銘柄のタイヤ装着。前後のグリップに極端に差があったら、クルマがどう動くか分かったもんじゃない。「何を大げさな」という方は、前:トーヨー・プロクセスR888R/後ろ:ニットー・インヴォでキメたバイパーの、コーナーでの挙動を想像していただきたい。記者の腕前&反射神経だと、なんかあったら多分死ぬ。
そんなわけで、理想はリアもSタイヤとすることなんだけど、お察しの通り345/30R19サイズのSタイヤなんて、結局海外仕様のR888R(か前型の「R888」)しかないんだよねぇ。で、海外でしか売られていない345/30R19サイズのR888Rを装着しようとすると、やっぱりショップに頼んでお取り寄せしてもらうことになるのだ。タイミングが悪いと待たされることになるし、そもそも、また同じ銘柄のタイヤって芸がないじゃん。面白くないじゃん。連載的に。
というわけで、今回は前者、すなわち「ちょっともったいないけど、4本まとめて交換する」を、しぶしぶ検討することとした。そしてあらためて痛感することとなった。2年前より、確実に状況は悪化している。
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Miniなら10回タイヤが替えられる
このサイズだと国内主要3メーカーは枕を並べて撃沈。唯一の救いの神がトーヨーで……というのは過去にお話しした通りだ。自分でもその記事を見返すと、なるほど。当時はニットーとピレリとミシュランならタイヤがあったようである。しかし、この2年で当該サイズの「ニットー・インヴォ」は生産終了。ミシュランも、クラシックタイヤの取材時にいただいた最新カタログを見たところ、「パイロットスーパースポーツ」はすでにNG。サイズがあるのは「パイロットスポーツ カップ2」だけの様子だった。
しかし、パイロットスポーツ カップ2か。パイロットスポーツ カップ2かぁ~(嘆息)。これってポルシェや「メルセデスAMG GT」のエラいやつとか、フェラーリとかロータスとかが履いてるタイヤだよね。ミもフタもない言い方だけど、高そうだよな。ただでさえミシュランって“貴族のお召し物”ってイメージが強いのに……。などと悩んでいたところで価格が判明するわけでなし。しょうがないので、家の近所の某用品店に、電話で探りを入れてみる。
「こんにちは。ミシュランのパイロットスポーツ カップ2ってあります? サイズは前が295/30R19、後ろが345/30R19なんですけど」
「コミコミで40万円ですね」
「OK、この話はなかったことにしてくれ」
これは困った。マジで困った。40万円って、それもうタイヤの値段じゃねえよ。Miniが履いてたピレリの「ドラコ」は、ホ○ダスで1本8000円だったぞ? 意気消沈する記者を尻目に、編集部はジョン・トラボルタもかくやの大フィーバー。「すわバイパー売却か」と勝手に盛り上がり、人ごとなのに勝手にGoo-netでブツを物色する始末である。
おりしも世間ではミドシップ化された新型「シボレー・コルベット」が業界を騒然とさせていた時分。これが出た日にゃ中古車市場のC6もC7も値下がりするだろうとポンポコたぬきの皮算用。「ね、ね、これどう? C6の『グランスポーツ』なんだけど、バイパー下取りに出したら、今でも出費0円でいけんじゃね?」などと勝手にソロバンをはじいては、大いに沸いたのだった。それにしても、中古車の物件チェックってなんであんなに楽しいんでしょ? ネトゲなどよりよっぽどハイになるし、時間が消えると思うんだけど。
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どうでもいいけど“C8”について語りたい
……余談ですが、記者は守旧派のコルベット好きだが、MRのC8については実は肯定的である。どうせ(?)成功するでしょうしね。
歴史や伝統を軽んじるつもりはないけど、実際に身銭を切る段になると、やっぱり人はシビアで本能的になるものよ。ハタで勝手に議論をぶってるうちはともかく。
C8がいかに過去を捨てていようと、実物がカッコよくってエモーショナルなら人は買う。そもそも、古いファンを裏切ってでも、スポーツカーには前に進まにゃならないときがあるのさ。FRのV10 OHVを守り続けたバイパーが、3世代25年にして“幕引き”となったことを思い出してほしい。
それにね、どうせ乗っちまったらC6、C7と同じで、アンチを一撃で黙らすくらいにイイ出来なのは分かってるのよ。ええ、乗らなくても分かるのよ。ワタクシくらいになると(←馬鹿)。だってさ、いったいドコのダレがC8を開発したと思ってんの? 御大タッジ・ジェクターだぜ? 四半世紀もコルベットを世話してきたあのオッサンが、その辺のツボを外すわけがないじゃないの。……ちょっと“走り好き”過ぎるケがあるのが心配だけど。
ええと、なんの話をしていたんだっけ? そうそう、コルベットの走りは世界一ィイイ!(荒木飛呂彦リスペクト) じゃなかった。バイパーのタイヤは高くてサイズが無いい(泣)という話だった。ウチの相方はアルミを替えているのだが、ノーマルサイズ(前:275/35R18、後ろ:335/30R18)でも十分に高いし無い。
とはいえ、今のままではアブないし、下手すりゃ整備不良の咎(とが)でお縄だ。思考と考察が一周し、「どっちにしろ替えなきゃならぬ」という原点に立ち返る。
40万円。40万円。確かに高いが、単発なら無理な出費ではないよね。
……近所のくるまやラーメンからの帰り道、記者の目に世にも恐ろしい光景(写真A)が飛び込んできたのは、そう自分に暗示をかけている最中のことだった。(つづく)
(webCGほった)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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