DS 3クロスバック グランシック(FF/8AT)
孤高のエレガンス 2019.08.19 試乗記 フランス発のプレミアムブランドDSがリリースした、新しいコンパクトSUV「DS 3クロスバック」。かの地における芸術の歴史と文化をクルマという形で体現したとされるニューモデルは、似るもののない孤高の存在に仕上がっていた。代官山に似合うクルマ
試乗会が行われたのは代官山である。東京でも最高峰に位置するおしゃれタウンだ。ヒルサイドテラスやアドレスがあり、イタリアンやフレンチの名店が並ぶ。旧山手通りを行き交うのは、最先端ファッションに身を包んだ高感度ピープルだ。ショッピングやデートには最適だが、クルマの試乗には向かない街である。しかし、この場所を選んだのは正解だった。DS 3クロスバックは、この場所で最も輝くクルマだからだ。
DSブランドのフラッグシップである「DS 7クロスバック」から1年、さらにコンセプトを純化したモデルが登場した。コンパクトSUVという流行のジャンルに属するものの、世界を見渡しても似ているクルマは存在しない。キャッチコピーを見れば、DSオートモーティブの意図がよくわかる。いわく、「彫刻が、動き出す」「美を纏(まと)うテクノロジー」。とても自動車についての表現とは思えない。
さらに、「すべてのものは美しくなければ、存在する意味などない」「美学と工学が見事に融合する新しいSUVに大いなる祝福を」「美しい残像は、しばらく消えはしない」とまで。そのへんの無粋なクルマとは別物だと言わんばかりに、上から目線で孤高の存在であることを宣言している。
SUVを名乗っていながら、悪路走破性能に関しては何も説明がない。FFモデルのみで、本国にも4WDバージョンは用意されないのだ。他メーカーとはSUVという言葉の定義が異なる。確かに車高はそれなりに高いが、マッチョな力強さとは無縁。前面に出ているのはアート感とおしゃれ感であり、あくまでSUV風の雰囲気グルマなのだ。中途半端なアウトドア風味を付与しないところに、DSブランドの信念とプライドがある。
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